ファイナンス

キリンとサントリーが破談に その2

今日の報道でさらにキリンとサントリーの交渉の過程の話がいくつか報じられている。
昨日のブログではどちらかというとサントリー側の問題について書いたけど、今日の報道ではキリンの対応の問題点が気になったので、続編ということで。

1.統合比率の問題
ずいぶんと報道されたのでもう寿不動産もすっかり有名になってしまった。
サントリーが非上場で株価が存在しない以上、交渉の事前準備の段階で当然企業価値の算定と統合比率のすり合わせはやっているだろう、と思ったらやはり報道されている。
昨年1月の下交渉の段階では、両社の話し合いでは統合比率は0.78から0.88であり、寿不動産が3分の1超を取ることでコンセンサスがとられていたとのこと。これは重要なポイントだと思う。

サントリーの創業家としては新会社(サリンとかキントリーとかいろいろネタにされてたけど)の3分の1は最低取りたいだろうが、これを実現するには統合比率はどこまで妥協できるのか、計算してみた。
キリンの発行済み株式数は984,508,387。同じくサントリーは687,136,196。もし統合比率が1対1、つまりキリン1株にキントリー1株、サントリー1株にキントリー1株を与えるとして、サントリー分の89.3%は創業家なので、創業家の比率は687,136,196/(687,136,196+984,508,387)×0.893=41.11%となる。3分の1以上だ。
同様に計算して統合比率を下げていくと、1:0.9だと創業家比率が38.58%、1:0.8で35.83%、1:0.7で32.82%、1:0.6で29.52%、1:0.5で25.87%となる。 3分の1超となる33.4%を確保するには、統合比率は1:0.72となる。
1月の下交渉で0.78から0.88ということは0.72を超えているので、寿不動産が3分の1以上持つことを事前合意していたということは、統合比率は0.72以上でなければならない。
これに対して、11月にキリン側が最初に提示した統合比率は1:0.5。つまり最初の提示で約束に反していたということだ。
一方のサントリーは1:0.9を主張したとのこと。両社の規模と収益性を考えて、さらには非上場であるのでディスカウントされるとすると0.9はあり得ないが、まあ交渉の最初のボールとしては当然だろう。
しかしキリンの0.5については、新聞では「交渉上のテクニック」というコメントがあったが、あまりにお粗末だ。サントリーは1に近いだろうし、落とし所は0.72だからそこが中間になるように0.5とふっかける、これが「交渉のテクニック」というのだろうか?
まずはこの日本企業独特の論理的でない「ふっかけて中間に落とす」やり方が今回の決裂の第1原因だろう。

2.サイレントマジョリティ
もう1点、下交渉時に合意していたこととして、サントリーの大株主は経営に口出しをしないということが書かれている。つまりキリンとしては、サントリーの創業家には昔の持ち合い株主のように「物言わない株主」つまりサイレントマジョリティとしての役割を期待していたとのことだ。1月にサントリー側が大株主の権利を確認したところ意見が分かれたとのことなので、サントリーとしては「そうはいっても何かおかしければ物は言う」権利は確保したかったのだろう。
これは株主としては当然のことだ。完全に口出しをしない大株主を持とうと考える方がおかしいと思う。
下交渉上時に仮にキリンの考えるような合意があったにせよ、時系列からいうと統合比率の合意を最初に破ったのはキリンであり、サントリーが態度を硬化させたとしてもそれも当然のことだ。

ということで、交渉の経緯という点ではキリンが大きく戦術を誤ったということができるだろう。もしくは詳細に企業価値を計算してみるとどうやっても0.72の根拠が作れなかったとすると、下交渉時の企業価値評価が完全に間違っていたということかもしれない。

いずれにしても、タイミングの悪いことに昨年よりは今の方が両社とも業績は悪くない。両社とも海外にMA先を求めるというようなコメントをしているが、現在の状況は逆で、巨大化した海外大手がアジア市場にターゲットを定める時が来ると、キリンでもサントリーでも簡単に買収するだけの力を持っている。どこを買おうか考える前に、どこかに買われないように対策を打つ方が先かもしれないなあ。

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キリンとサントリーが破談に

昨年7月28日にもブログで取り上げたキリンとサントリーの経営統合の話。
昨年末から1月にかけても交渉がうまくいっていないことが度々伝えられてきたが、とうとう今日付けで交渉終了となった。

キリンの言うところの理由は、新会社の独立性、透明性を担保できないという点。サントリーの言うところの理由はズバリ統合比率に納得がいかないという点だ。

7月のブログで書いたのは、サントリーにとっては上場になるので、内部統制の点でそれに耐えることができるのか?という点。あとは対等合併を目指すと言っているがファイナンス上はキリンによるサントリー買収であり、一方で大株主はサントリーの創業者になるという状況で、統合比率はどう算定するのか、という点だった。みごとにこれらが解決されることなく破断になったということだ。
今日のニュースでは「最後の詰めの部分で破談になった」という表現をしていた報道があったが、最後の詰めどころか、最初の一歩でもうずれていたということだろう。

しかし今日の両社の記者会見はみごとに2つの会社の差が表れている。
キリンはすっかりグローバル基準のパブリックカンパニーという感じ。さすがにEVAを導入して緻密な利益管理をする会社だ。質疑応答も十分に練られている感じだし、本当に教科書的なIRだ。
一方のサントリー。「守秘義務があるのであまり答えられない」と前置きしつつこちらは言いたい放題だ。
「統合比率は50:50の対等合併が基本だが、50:50ではなく具体的な数字をあげて交渉した。その数字に自信があったので固執した。」と言っている。昨年末の報道で、キリン側のファイナンシャルアドバイザーが算定した合併比率はキリン1:サントリー0.5、一方のサントリー側が1:0.9と報道されていたが、それに近い話のようだ。
固執した数字がいくらなのかはわからないが、佐治社長は「サントリーの大株主の寿不動産の持ち株は最低3分の1超となって当然で、それがなければ最初から交渉していない」とまで言っている。
こんなことは最初からわかっていたことで、キリンは3分の1超は寿不動産が持つことは基本的に承諾した上での話ではなかったんだろうか?
また佐治社長は、キリン社長が経営の透明性を担保できないとコメントしたことに対し、「経営は透明に決まっている。サイレントマジョリティか、いざとなれば意見を言うかの差だけだ」「オーナー会社の良さとパブリックカンパニーの良さを半分ずつ取るつもりだった」と述べている。
これは到底パブリックカンパニーになろうとしている経営者のコメントとは思えない。やはり外部の株主からのプレッシャーというのを全く理解できないんだろうし、上場することは100%パブリックになるということで、全てをさらけ出さなければならないことは理解できないんだろう。
ということで、今回のMAのポイントはやはり上場企業による非上場企業の買収が、企業価値算定と統合比率の算出の面、そして非上場企業の株主の持ち株比率のコントロールの面からいかに難しいかが、当初の予想通り明らかになった、というところだろう。

こんなに初歩的なところで頓挫したということは、当初この統合の話が報道されたときは日経新聞も十分に取材した記事を載せていたので、ある程度基本線の合意をうけて進んでいるものと思ったけど、実際はそんなに両社に戦略上の余裕はなく、トップ同士の意気投合レベルで発表したのかなあ、という気もしてくる。
あと、キリンは本当に自社の事業展開に危機感を持っていたんだろうけど、サントリーは自社に対する誇りというかプライドが、危機感よりも強かったんだろうなあ、と思う。

今後、キリンは相手を変えてやはり大きなMAを仕掛けてくるだろう。ひょっとするとアサヒかもしれないけど。もしくは海外の上場企業。もう非上場で内部統制の整っていない企業はごめんだろう。
一方でサントリーは、社長もコメントしているとおり、海外で提携先を探すことになるだろう。ただし、サントリーが買収する形で今の経営形態を維持できる先を探すだろうから、世界規模で統合が進む食品セクターでは中途半端なMAに終わってしまうかもしれない。
オーナー企業と上場企業の良さをミックスすることなんてもう考えない方がいいだろう。

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キリン・サントリーの合併

少し前になるが、キリンとサントリーの統合の話が進んでいることが発表された。
以前、国内ビールメーカーは米国や中国にこぞって自社製品を輸出していたが、ビールというのはどうも地元の味が一番なじみがあるらしく、なかなか海外進出は難しい。
ある時点から、海外のメーカーは市場拡大に見切りをつけ、各国の地元メーカーを統合していく流れがあった。
かつて世界最大のビールメーカーだったアンハイザー・ブッシュも4位にまで落ち、ベルギーのインターブリューとブラジルのインベブが合併しでてできた、第2位のインベブに買収され、第1位のアンハイザー・ブッシュ・インベブができた、という具合で、ひと昔前の製薬業界のようだ。
なのでランキング10位以下のキリンとサントリーが合併しても不思議はないんだけど、なんといっても規模がでかい。アドバイザーはどこが取るんだろう・・・と思っていたら、どうやらキリンがモルガンスタンレー&三菱UFJ、サントリーがゴールドマン&野村に内定したようだ。

さてこのMAで一番の注目はサントリーの企業価値をどう算出するかだろう。
何といっても非上場。しかも別に業績が悪くてキリンに買われるという立場でもない。
キリンはしきりに日経でも「対等合併」を強調していたが、理論的には合併比率は計算された企業価値で決まるものなので、ファイナンス的に「対等合併」はありえない。
やはり規模から考えるとキリン:サントリー=6:4くらいにするんだろうか。一応キリンによるサントリーの買収、という形だろう。

一方で新会社の株主構成がどうなるかはとても面白い。サントリーの大株主は「寿不動産」。鳥居・佐治の創業家一族の会社で、持ち株比率は89.33%になる。
ということは6:4で合併したとしても、新会社の株式の30%以上は寿不動産が持つことになるのかもしれない。33.4%あれば、M&Aや定款を変えるような事項を決める、取締役会の特別決議を単独で否決できる。
つまり上場企業「キリンサントリー」は、3分の1強の大株主が、「やってみなはれ」の株主ということになる。このノリに、プライドの高いキリンのエリート集団がどう反応するんだろうか。うまくかみ合えば経営的には例をみない、ユニークな会社になるかもしれない。

ただし、サントリーは上場の準備をしてきたわけではなさそうなので、情報開示は上場企業並みとはいえ、コンプライアンスなどまだまだおおらかなところがあるだろうから、そこをどうするかの問題もあるかな。

しかしサッポロの経営陣が、ファンドの買収から自分の椅子を守るのに時間を費やしていた間に、比較的好調なキリンとサントリーが合併するとは、やはり経営者の見識の差なんだろうなあ。


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日本経済は他のどの先進国よりも急速に縮小している

今日の麻生首相の演説の中に、「日本は他国と比較して金融危機による傷みは小さいので、バブルを乗り切った実績のある日本が、現在の経済危機を乗り切れないわけがない」という趣旨の発言をしていた。まあ今日が2008年10月だったらその通りかもしれない。がその後11月、12月、1月に日本に何が起きているのか、首相は知らないのかもしれない。

以前にも書いたことがあるが、日本のことを一番鋭く、正確に分析しているメディアは、英国のEconomist誌だと思う。1月24日号の記事「Early in, Early out」の見出しが、今日のブログのタイトルだ。つまり「金融危機の嵐に直撃されなかった日本経済が、今ほかの先進国よりも急速に縮小している」という内容だ。内容はこんな感じ。

11月の輸出は前月比27%ダウン、12月にはさらに悪化して35%ダウン。イメージは対米輸出の悪化だけど、対米は36.9%。一方で対中国も35.5%であるので、対米に限った話ではない。12月には景気の先行指標とされる工作機械受注率が前年比で何と72%ダウンしている。
2002年から長く続いた「成長」を支えた輸出が、自動車と消費者向けハイテク製品に偏っていたこともあり、この2領域の大きなダウンが輸出を直撃している。

そして予想外なのが、日本国民の心理的打撃の強さ。つまり消費者の需要が急速に冷え込んでいる。自動車の国内販売は前年比20%ダウンし、百貨店売上も10%ダウンしている。
もう1つ逆に予想外なのが、日本企業の柔軟性。今までの不況時には決して手をつけなかった余剰人員、生産能力の調整に非常に迅速に手をつけている。その意味での「柔軟性」だ。
戦後の日本が輸出に頼って成長してきた、その成長モデルはこれで崩壊したといえるが、今の日本経済にとって最大の問題は政治の機能不全だろう。
2兆円という相対的に小さな景気刺激策(交付金のこと)の是非について、与野党間、あげくのはてには与党内で議論をしているが、JPモルガンのアナリストいわく今の需要減に対抗する刺激策には4倍の規模の対策が必要だとしている。しかもこの2兆円の大部分は、使われることもなく消費者のポケットに入って終わりである。

政府が大胆な経済対策をうてない背景の1つには、バブル以降に積み重なった債務がある。でも金利は低いので利払いは少ないし、国債のほとんどは日本人が持っているのだから、債務のリスクは小さい。リスクは小さいのだから思い切った景気刺激策を打てるはずなのだが、今の日本の政治はそれを決定できない。

つまり日本以外の国が、必死になって日本のバブル後の経験を避けている時に、日本が粗末な政治のせいで重い足取りで他国の後ろをのろのろついていっているということだ。

とまあ、こんな内容だ。こんな日本を本気で何とかしようという人が政治に乗り込んでいくしか、日本を救う手はないように思う。以前のEconomist誌は、その役割を果たしうるのは「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」(せんたく)だ、と述べていたが、そういえば今頃北川さんはどこで何をしているのだろうか・・・。マスコミに取り上げられないと存在も忘れられてしまうので、ぜひ派手に活動してほしい。

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株価は底なのか?アンパンマンは?ドリカムは?

為替も株価も激しく上下している。素人目には「長い目で見ればもう戻るだろうから、そろそろ買いだろう」という気がするし、実際周囲でもそういう声は多い。
しかし今の状況はそんな状況ではないような気もする。ゴールドマンサックスとシティの合併の話もまだ続いているし、これからもう一段ある急降下の前の乱高下のようにも思える。
自分もよく知っている小幡績先生(慶應ビジネススクール准教授)の最新刊「すべての経済はバブルに通じる」を最近じっくり読んでいるのだが、やはり今は株主が入れ替わって崩壊寸前なんだろうか・・・?
ちなみにこの本、サブプライムに端を発する今回の不況のプロセスが実によくわかりやすくかいてある。前半3分の1を読むだけでも今回の金融危機は理解できると思う。おススメです。
この本について、後から起こったことに理屈をつけているだけだ、という批評がアマゾンにあったが、先生のブログを読んでいるとそうでないことがわかる。なんてったってこの本はリーマン破綻の直前に出されたものだし、彼はその前に持っていた株を全部売り払ってポジションをゼロにしていたんだから・・・。

ちなみに小幡先生のメインの専門は行動ファイナンス。投資家の心理を分析して株価の動きを説明する、といったところだろうか。
自分も興味があって少し勉強したのだが、大和総研のアナリストでおもしろい相関をいつも提供する人がいる。
つまり株価が今後どうなるかは予測できないが、他の何かと相関するのであれば、そちらを調べて予想しよう、ということだ。これまであがったものの一部を並べると・・・

(サザエさんの視聴率が下がると株価は上がる)
これは一番有名だろう。サザエさんの視聴率が下がると株価が上がる、というものだ。
これはある期間に関して、きちんとデータを解析して相関を調べている。
もちろん単に相関しているだけで、何の因果関係がないかもしれない。一応彼らの説明では、サザエさんを見るということは日曜の夜に家にいるということで、景気が悪いことをあらわしている。逆に外出や外食でその時間にいないということは消費につながって経済も調子がよく、株価も上がる、という推定だ。

(アンパンマンの人気が上がると株価も上がる)
これはバンダイの「子供の好きなキャラクター調査」の結果で、男子の間でのアンパンマンの人気と株価が相関しているというものだ。この説明は、アンパンマンはやさしいキャラなので、これが人気があるのは心理的なゆとりがある証拠だ、というもの。でも子供は株をかわないからなあ。

(ドリカムの人気が上がると株価も上がる)
これはテレビタレントイメージ調査でのドリカムの人気と株価との間に相関があるというものだ。これはアンパンマンと同様の理由かな。
他に同様の相関があるのは
(犬の人気が上がると株価も上がる)
というのもある。

(ウインドサーフィンの人気が上がると株価も上がる)
これは心理的にも、費用的にもウィンドサーフィンはゆとりがないとできない、ということだろう。これには続きもあって、
(サーフィンの人気が上がると株価は下がる)というのもある。

(睡眠時間が減ると株価は上がる)
睡眠時間が減るのは趣味に仕事に忙しい状況であり、いずれにしても株価にはプラスの状況(ゆとりがある、もしくは仕事が多い)だということだ。

(新幹線の乗客が増えると株価は上がる)
ビジネス客が多いということは景気もいいはずなので、これは相関があって当然かもしれない。
景気と関係ありそうな相関は他にもあげられていて、
(サラリーマンの小遣い使用金額が増えると株価は上がる)
(現金の落し物が増えると株価は上がる)
というのもある。

(東京ディズニーランドの客が増えると株価は上がる)
これも同様かな。これも続きがあって、
(昭和記念公園の客が増えると株価は下がる)というのもある。
昭和記念公園の入場料は400円だそうだ。景気が悪いので安く済ませようということか。

これらは半分冗談、半分真面目(半分以上か?)な調査だけど、行動ファイナンス的にはとても興味深い。
大きくまとめると心理的に余裕があるとき、または行動的な気分のとき、投資行動を取りやすい、つまり株を買う、ということだろうか。

ただ、これらをもとに株価の動向を占うには、上にあげた相関関係がある事象について予想できなくては意味がない。アンパンマン人気は今後どうなるか?ドリカム人気はどうなるか?
うーん、これらを予想するなら、真正面から株価動向を予測しようとする方が近道かもしれないなあ。

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スターバックス・ジャパン

今の職場には、徒歩3分圏内にスタバが2軒、タリーズ・プロント・エクセルシオール・カフェドクリエなどが各1軒あり、コーヒーには困らない。
以前は平日はタリーズ、休日はスタバと言う感じだったが、最近は平日もスタバに行くようになった。これが結構朝8時前からほぼ席が埋まっていて、本を読む人や勉強をする人でにぎわっている。とはいえ、休日なんかに行くと、以前のような行列になるようなにぎわいはないような気がする。そこでスターバックスの経営状態を調べてみた。

さすがに上場されているだけあって、IRサイトは充実していて、毎月月次の売上高、既存店売上・客数・客単価がタイムリーに更新されているのには驚いた。
そこに今年の4-6月決算が載っていた。
売上:233億円(前年比+7%)、営業利益12億円(-39%)、純利益6億円(-39%)
うーん、売上こそ伸びているが利益は厳しいようだ。
売上高を詳しく見ると、既存店の売上高は前年比-3.2%と落ち込んでいる。売上の増分は新規出店によるものなのだろう。既存店売上の落ちは、客数のダウンによるものだ。これが-4%。ただし客単価は+1.2%と増加している。確かに見ているとドリンクの他にドーナツやサンドイッチなどを頼んでいる人が前よりも増えていると思う。ここは戦略どおりだったのだろうが、想定以上に客数が減少したということだろう。

ところで売上が233億円あるのに、営業利益は12億円。営業利益率は5%しかない。粗利益率は70%あるので、販売管理費がものすごく巨額ということだ。ちなみにこの四半期の販管費は151億円。実に売上高の65%を占める。費目として大きいのは人件費、不動産賃貸料、そして「支払ロイヤリティ」、謎の「その他」だ。

うーん、支払いロイヤリティは本社へのロイヤリティなのだろう。他にも、スタバで有名なのは、紙のカップやナプキンなどは全て本社から買わなければならず、これが結構高いという話を聞くので、かなり本社に吸い上げられているのだろう。

そこでそういった話が載っていそうな有価証券報告書を探したのだが、これがなぜか載っていない。最近企業のIRサイトには必ずあるけど、スタバは数ページの簡潔な決算短信(決算短信も最近数十ページに及ぶ会社も増えているのに・・・)が載っているだけだ。

何か親切そうなサイトに見えて不親切だなーと思いつつ、金融庁のサイトから検索してダウンロードした。そこには本社との契約が細かく書いてあった。

1.ロイヤリティ
ロイヤリティは売上の5.5%。ブランド価値を考えると高いのか、適正価格なのか、判断は難しい。でも特許の実施契約なんかを考えると、結構高いんだなーという印象だ。

2.カップなどの消耗品
これは供給契約によって全て本社(もしくは本社の指定業者)から購入することになっている。この取引実績は2008年3月期で67億円。

3.新規出店ターゲット
さらに契約では、毎年3月時点の「最低店舗数」が設定されていて、これに満たないとペナルティが課せられる。ちなみに今年3月のターゲットが716店舗。実績は776店舗。来年3月のターゲットが776なので、ちょうど1年前倒しで達成している。スターバックスが急速に店舗数を増やしている背景にはこの契約上にしばりがあったのだ。

これだけ本社のコントロール下にある、ということは、スターバックス本体にしてみるとジャパンの利益は税金を米国で払うか、日本で払うかの選択肢であって、コーヒー豆(これも本社から全て購入義務あり)や、カップなど消耗品の価格設定でいくらでも収益コントロールが可能である。
となると問題は日本の株主だ。本社が利益をコントロールした後の分け前を配当として受け取る形になる。ただし、毎月の客単価、客数、売上高の情報はタイムリーに開示されているものの、収益構造は非常にわかりにくい。以外にも中身の見えにくい株式銘柄なんじゃないだろうか?

それではなぜわざわざ日本で上場させているのか?
ひとつには新規出店費用の資金調達のためだろう。立地のいいところばかりだし、賃貸料は結構な金額になっている。
もうひとつにはストックオプションのためだろう。毎年従業員4000人くらいにストックオプションを付与している。これができるのも上場しているからである。

話は変わるが、有価証券報告書には県別の売上高と店舗数のデータがあった。これに県別人口の数字をぶつけると、人口1人あたりのスターバックス利用額、人口百万人あたりのスタバ軒数なんかが出せたりする。
試しに計算してみると・・・
1.人口1人あたりの利用額(全国平均:年間707円)
(1)東京都 2297円 (2)沖縄県 1144円 (3)京都府 951円 (4)神奈川県 894円 (5)栃木県 804円
2.人口百万人あたりの軒数(全国平均6軒)
(1)東京都 18.8軒 (2)沖縄県 8.1軒 (3)神奈川県 7.5軒 (4)大阪府 6.7軒
(5)愛知県 6.6軒

もちろんスタバを使うのは地元民だけではなく観光客などもいるので一概にどうということはできないが、沖縄県が軒数も金額も多いのはなぜだろう??米軍のせい??
だとすると利用額5位の栃木県は何なんだ!?!?

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野村がリーマンの一部を買収

前回書いたリーマン破産以後、次はモルガンか、ゴールドマンか?と見られていた連鎖反応は、ひとまずFRBと連邦政府、それから各国財務省のすばやい対応でひとまずの決着がついた感じだ。
「すばやい」と書いたけど、今回の一連の問題は前からわかっていたことで、本当にぎりぎりまで手を打たなかったが、問題が噴出したら「すばやく」対応した、と言う意味だ。
リーマン、モルガンスタンレーは日本の資本も受け入れたが、最大の注目だったゴールドマンは、やはり日本の資本など入れさせずに乗り切った。やはりそこは米国としても譲れなかったのかな?

そして野村がアジア・パシフィックの一部買収に続いて、欧州・中東の株式と投資銀行部門を買収することが決まった。その買収金額は・・・なんと2ドル。
最終的に競り勝った要因は受け入れを約束した従業員の数で、2500人を確約した野村がバークレイズを抑えて勝ち取った。

1.人件費はいくらかかるのか?
日本のニュースではあまり詳しく書かれていないが、フィナンシャルタイムズによると、野村は、リーマンの優秀な社員に対して、来年の秋まで在籍してくれれば昨年と同額のボーナスをキャッシュで支払い、さらに2009年のボーナスも2008年並みを原資として確保する、と提案しているとのこと。今は転職先もないだろうし、これは条件として申し分ないのではないか。1年間待って、とりあえず最悪の状況が収まるまでは、実績を出さなくてもボーナスはもらえるんだし、「NOMURA」という日本のローカル企業でもいいか、という感じだろうか。

2.ところで優秀な人材は残っているのか?
問題はこちらだろう。銀行を買収するなら担保とか債権とか実質的なものがあるけど、証券会社は優れたスキームを生み出す人在が資産のほとんどだと思う。もうこのタイミングだと優秀な人は引き抜かれているだろうし、別に稼がなくても暮らせるだけの財産は持っているんだろうから1年くらいバカンスを取る人も多いんじゃないかな。
そもそもリーマンは、ゴールドマン、モルスタ、メリルと比べると、やはりその次というイメージがあるので、人材も平均的には落ちるだろうし。実際、野村の社員は「リーマン日本法人の社員は1人もいらない」と言っているというコメントも報道されている。

野村は2ドルで何を買ったのだろうか。名前?ブランド?まあそれは破産したから2ドルだろう。
ひょっとすると雇用の確保と手厚いボーナスという条件で、空っぽの大きな箱を買ってしまったのではないだろうか?

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リーマンの破綻と wall street crisis

リーマンが破綻した。何か突然のようだが、業績は悪化していたし株価も下がっており、韓国の銀行が買収を断念したところでこの流れは予想されていた。とはいえ本当にそうなるとびっくりだ。
リーマンというと、どうも今ひとつ良いイメージがない。個人プレーで、目立とうという乱暴な手法が目立つイメージ。消費者金融にけんかを売ったアナリストレポートとか、ライブドアのグレーな資金調達などなど。ゴールドマンが頭脳を駆使してチームプレーでえげつないことをする、モルガンは少し上品な組織プレー、といったイメージだけど、対照的かな。

1.これまで何が起きたのか?
サブプライムローンに関しては前にブログで書いたと思ったらもう昨年の11月のことだった。そのときは2007年の損失合計が7兆円になりそう、との予測だと書いてある。
FRBも、サブプライム問題の損失合計は10兆円、と確か予測していたはずで、すでに40兆円に到達した今となっては、予測が楽観的すぎた、といわざるをえない。
まず証券5位のベア・スターンズが危機になったときはFRBが救済の手を差し伸べた。
そして4位のリーマンは救済しないことにして、つぶしてしまった。でもほぼ同時に3位のメリルリンチは、当局のバックアップもあってリーマン買収を見送ったバンカメに救済させた。

2.今何が起きているのか?
(1)証券会社の顧客=保険会社への飛び火: 
今日のニュースはAIGだ。証券会社の商品を大きく組み込んでいる保険会社は、サブプライムの問題を最後にモロに受けてしまう。しかも、リーマンとは違って一般市民も保険を購入しているので、混乱は避けられない。
しかしAIGはもともとクリントンと非常に関係の深い企業で、海外のメディアはFRBは必ず救済されるだろう、と見ていたがその通りとなった。
(2)証券会社からの資金の引き上げ:
まず銀行。債権を買っていたのが飛んでしまう。日本の銀行ももちろん損失をこうむるが、損失はそれほど大きくないと言っている。しかし破綻がこれほど急だったので、直前までかなり取引をしていただろうから、これからどんどん損失は増えていくだろう。
次に銀行意外の資本家の資金。リスクのある資本市場からはひとまず引き揚げる流れだ。それを証明するのが原油価格の急落。価格が上がっていたのは別に生産量が減少したわけでもなく、投機的なものだった、ということだろう。
(3)米国のプレゼンス低下
ドルに投下されていたマネーは他の通貨へと移動している。円高はそのためだろう。一方で韓国のウォンは上がらずに逆に暴落している。これは不思議だ。

3.今起きていることを見ていて思うこと:
(1)まずは公的支援をするかしないかをどこで線引きするかの問題だ。リーマンはつぶしてAIGは救済するのは適切なのか?個別企業の問題なのか、金融市場全体の問題(システミックリスク)なのかをどう見極めるのか?ワシントンポストは「政府の公的救済が正当化されるのは、金融システム全体への利益が潜在的コストを上回るときだけだ」と言っているが、これは世論も考慮に入れる必要があってタイミングが難しい。
もちろんどの企業も救済するのでは、救済を当てにして無茶をする企業が出てくるだろうからよく考えなければならない。特に銀行や証券会社は好調なときの報酬も高いので「何で彼らの失敗に税金を投入する必要があるのか?」という議論になる。
しかし彼らが路頭に迷って終わりではなく、国全体のシステムが破綻しようとしているのであれば、何をおいてもそれを避けるために税金を投入するタイミングは逃してはいけないと思う。日本のように、政府が全力をあげてダイエーを救済するのとはわけが違う。
(しかしダイエーの破綻は何か国民生活に深刻な影響が予想されたのかなあ??)
(2)米国の当局の対応はやはり早い。関係者を集めて会議を開いたら、きちんと結論を出して即日実行に移す。対照的に日本では、首相が日銀総裁や関係者を集めて出した声明が、「状況をよく見極めて適切な手を・・・」という思考停止状態の結論だ。日米ともに誠治の最高責任者は機能してない状態であることには変わりはないので、いかに米国の金融当局がプロフェッショナルであるかの表れだろう。
プロ度の差はメディアにも明確に表れている。海外の新聞は非常に細かく分析して自社の見解を打ち出している。それに対して日経新聞は・・・・今日の朝刊では「AIGに対するFRBの打ち手は難しい」というようなことが書いてあったが、その直後には最大9兆円の融資を決めた・・・。今後の展開も悲観的な学者から楽観的な学者まで網羅的に並べるだけで、自社なりの見解、意見は見られなかった。
仕方ないので日経を読んだ後、Financial Timesをスタンドで買って読んでいるが、600円だからなあ・・・

4.これから何が起きるのか?
(1)これはリーマンの問題ではなくて、証券会社共通の問題だ。ということは当然ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーがどうなるのか、ということに焦点は移るだろう。特にゴールドマンは要注目だ。これに対する当局の対応は今後の展開の転換点になるだろう。
(2)サブプライム関連の損失は40兆円に上っているが、FRB予測の10兆円は問題外として、IMF予測は100兆円だ。それに向かってどんどん損失額は膨らんでいくだろう。なぜなら米国の住宅の価格はまだ下げ止まっていないので、サブプライムローンの損失額はまだ確定していない。住宅価格が下がれば損失額は増えていく。
(3)米国が世論をまとめるためにすることといえば・・・歴史的には戦争だろうか。イラク問題でさらに手を打つことも考えられる。
(4)この状況をチャンスと捉える人、企業、国はいるはずだ。そう、パラリンピックが今日で終わった中国が手を上げるのか、上げられないのか?

いずれにしても今回の問題はリーマンが破綻した、というだけの問題ではなく、いろいろな企業が同様の状況で、それに対する公的支援のあり方についてぎりぎりの選択を迫られている、という状況だろう。日本への影響も銀行、輸出企業など多岐に渡るだろうから、適切あ対応をしなければならないが、政治家は口をそろえて日本への影響は軽いと言っている。そうなれば良いんだけど、どうだろう。

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野村のインサイダー取引

今週、大きくニュースでも取り上げられているが、またインサイダー取引の問題だ。今年に入ってもう3件目の事件になる。1件目が1月のNHK。あ、そういえばこの件は「内部調査」の結果数名が処罰されただけで、何となくうやむやだなあ。あとは3月の新日本監査法人での公認会計士のインサイダー。ちょっとさかのぼると、2002年11月と2003年7月のいずれもニチメン子会社のTOB絡みで、大和証券SMBCと野村が摘発された。あとは2006年2月の日経新聞広告局。まずは今年に入ってもう3件目であることと、M&Aの担当者という「1番インサイダー情報を持っていて、仕組み上その情報を使って私的な株式取引をしていないか監視されるべき人」による犯罪ということで、今までとは意味合いが異なる。

1.個人の問題か、組織の問題か?

野村の社長の会見では「あくまで個人の問題」と言いたいようだった。しかし監視、防止の体制は当然取られるべきであり、機能していなかったということはやはり組織の問題だろう。今回の報道で気になるのは「中国人社員」という点が強調されていることだ。一部の報道は、まるで野村が被害者であるようなニュアンスの扱いをしていたが、例えばメリルリンチでフランス人社員がインサイダーをやったらそのような反応になるだろうか。国籍なんて全く関係ないだろう。「野村の北海道出身の社員が」といったら「あー北海道の人は・・・」となるだろうか??

2.人間は基本的に不正を働くものである

不正行為に対処する場合の考え方として、人間は基本的に正直者だという性善説にたつのか、逆に不正を働く機会をうかがう者だという性悪説にたつか、と言う問題がある。

この点に関しては、MITの教授、ダン・アリエリーが、数千人の人をサンプルにして、不正をしたかどうか他人にはわからない状態で人間はどう行動するか、という実験をし、結果をまとめている。

実験から得られた結論は、(1)ほとんどの人間は、そそのかされると多少のリスクがあろうとも「わずかの」不正を働くことをいとわない。 (2)逆にばれるリスクがゼロになったとしても「大きく」不正を働くことはない。 (3)実験の前に倫理規定に署名させるなど自らの誠実さを意識させると不正は完全に消える。 (4)不正をする対象を現金ではなくモノにすると、不正の度合いは大きくなる。(つまり不正への心理的許容度が大きくなる)

この点から考えてみても、不正をなくすにはいかに倫理意識を徹底させるかがポイントであり、5年間で2度もインサイダー問題を起こした野村に組織的な問題がなかったかどうかは十分に調査する必要があると思う。

3.そもそもそんなに発見は難しいのか?

それにしても、今回のインサイダー取引は「巧妙だった」ので見つけにくかったとされている。証券取引等監視委員会が、たまたま野村が主幹事を勤める企業に共通して、重要情報の発表前に同一名義の中国人の買いが重なっていたことから、内部に情報提供者がいると考えて友人である野村社員にたどり着いたということだ。しかも自分名義の口座でもなく、野村の口座でもないので発見が遅れた、と。

そんなに高レベルのやり方だろうか?素人レベルではないか!?もしこれが日本人だと気づきもしないということだろうか?

4.これは一罰百戒か?

今回もTVでコメンテーターが「インサイダー問題はグレーな部分が多いので難しい問題だ」と言っていた。前にも書いたが何がグレーなのだろうか。

確かに株式の取引は、他人が知らない情報で値動きの先手を打って儲けるわけなので、不透明な部分はある。しかし「インサイダー取引」の定義は明確であり、明確に処罰すべきだと思う。重要事項の発表前に株価が動いていることは、素人がチャートを見てもわかることで、これを「グレー」として放置する限り、日本の株式市場は世界から信用されないままだろう。

もしこの一件が「見せしめ」的な摘発であるとしたら、そのような考え方は誤りで、どんな小さなものでも摘発していかないと歯止めにはならないだろう。日本では確実に有罪なものでなければ起訴しにくいので、立件の難しいインサイダー問題は当局もあまり深入りできない、という事情もあるのかもしれない。しかし政府も「貯蓄から投資へ」と一般市民に訴えている以上、公正な場を用意する責任もあると思うがどうだろう。

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新銀行東京

最近話題の新銀行東京。私がビジネス・スクールにいる頃にちょうど開業準備室のスタッフを募集していて、「新しい銀行を一緒に作ろう」みたいな大々的に感じでスタッフを集めていた記憶がある。

この銀行に対して、都が400億円の追加投入をするかどうかで都議会が揺れている。石原知事いわく、「死にそうになっている人間なんだから、人工呼吸か心臓マッサージをしないと、死んでしまっては元も子もない」そうだ。

この銀行はそもそも、石原都知事が2003年の知事選で貸し渋りに悩む中小企業の支援策として掲げたもので、2年後に開業している。

まず、この銀行の問題の出発点はこのタイミングにある。公約から2年が経って開業する頃には、銀行の不良債権処理も終了し、銀行は既に中小企業に金を貸していた。つまりそもそも機を逸して作らなくても良いものだったのではないだろうか。

それでも貸し出しの実績を作らなければ事業が成立しないので、無担保・無保証の自動審査システムによって、「スピーディに」融資をした。つまり「財務情報」だけで融資したのだが、結果として2004年以降に融資した中小企業の30%に及ぶ4000社が債務超過の状態だったのだ。いかに中小企業の財務情報があてにならないか、ということだろう。

最近のニュースではこの「貸した金」の側面ばかりが取り上げられているが、本当に問題はそれだけだろうか。銀行のビジネスといえば、お金を集めてそれを貸す。そう、集める側に問題がないのか調べてみた。

新銀行東京は、4300億円の預金を集めているが、多くは「特別金利キャンペーン」で集めたものらしい。例えば5年定期で1.7%もの金利がつく、とうたって預金を集めたものだ。これが2006年9月まで大々的に行われたのだが、これが満期になるのは2011年9月。そのときに高金利の預金を返すことができるのかが、新銀行東京のタイムリミットである。石原知事はなぜそうした話を具体的にせず、とにかく今をしのごうとしているのか?石原知事の任期が2011年4月までなのがその答えなんじゃないだろうか。

つまり、今とりあえず資金を投入して銀行を存続させる。当然再建は難しい。(今示されている黒字化に向けてのP/Lシミュレーションでは、黒字になる3年後は貸倒引当金がゼロという、ありえない前提になっているし・・・)

そして石原知事が退任した後、とうとう定期預金を返せずにギブアップする。というシナリオが一番ありそうなストーリーだ。

今400億円を投入しないともっと損失が大きくなる、と石原知事は説明しているが、再建可能性が限りなくゼロに近い以上、これ以上コストをかけないことがトータルで一番損失を小さくする唯一の方法だろう。資金を投入するとしたら預金者保護のためだけにするべきだ。

都は、ずさんな融資をした前経営陣に責任がある、としているが、そもそもこの組織は設立自体に問題があるわけで、「作った人の責任」が一番大きいんじゃないかな。

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