ビジネス

スターバックスVIAのマーケティング

スターバックスで4月から販売を開始した「スティックコーヒー」
のVIA。ここのところスタバに行くことがものすごく多い
(ほぼ毎日?)んだけど、自分が見ている限りはVIAが売れている
のを見たことがない。
米国では昨年発売されてから、業績の傾いたスタバの救世主みたいに
言われていて、満を持しての日本投入だったけど、さてどうなるん
だろうか? 今日発表の決算でも、既存店売上高が前年比5%もダウン
している、スタバ・ジャパンの救世主になれるのか??

1.VIAとは
スティックに入っている粉末をお湯で溶かして飲むコーヒー。
ただ、製法はインスタントと違い、商品化まで20年をかけたとのこと
で「スティックコーヒー」という新しいジャンルの商品だ、と言って
いる。ちなみにVIAとはイタリア語でRoad。もう亡くなってしまった
開発者のDon Valencia氏のVと最後のiaをとった。
米国では昨年発売、この春から日本とUKで発売。
米国では、スタバのドリップコーヒーと飲み比べキャンペーンをやり、
大半は違いがわからなかった・・・というのが評判になった。
そういえば日本でも最初の数日間だけ無料飲み比べやっていたけど。

2.インスタントコーヒー市場
スタバはVIAの日本発売の時にもトップが来日したり、ずいぶん
日本への期待が大きいんだなーと思っていたら、日本は世界最大の
インスタントコーヒー市場があるそうだ。2009年の日本市場の規模
は2.3十億ドルで、米国の3倍の規模になる。
日本のコーヒー全体の63%がインスタントコーヒーで占めているん
だけど、我が家はインスタントを全く飲まないのでちょっとピンと
こない。日本のインスタント市場の70%はネスレがシェアを押さえて
おり、ほぼ独占市場。これはそうだろうなあ。逆にネスレしか思い
浮かばないくらい。
日本の少し前に発売されたUKもインスタント比率は高く、コーヒー
全体の81%にも及ぶ。米国が40%であるのと比べると、これは会社
としても期待をかけるだろう。

3.マーケティングの疑問
ところで不思議な点だらけなのがマーケティング面だ。

(製品のコンセプト)
根本的にこれがよくわからない。
つまり「安いスターバックスコーヒー」なのか?
それとも1杯分100円の高いインスタントコーヒーなのか??
普段スタバで飲む人に家でインスタントを飲んでほしいのか、
普段インスタントしか飲む習慣のない人にスタバのインスタントを
飲んでほしいのか?

(価格)
コンセプトがはっきりしないと価格も妥当な感じがしない。
「安いスタバ」であれば、味がドリップコーヒーと本当に変わらないと
いうのに100円は安すぎるのでうそくさい気がするし、「高いインスタ
ント」であれば12杯分1000円はよほどネッスルのインスタントと味が
違わないと継続的に出さないだろう。
まして、今はマックでもけっこうおいしいドリップが低価格で売られて
いるのでなおさら100円というのが微妙すぎる。価格というのは高くて
も安くてもメッセージを持つということか。

(販売チャネル)
一方でVIAはスタバの店頭でしか買えない。サントリーから出ている
スタバマークのついた紙容器コーヒーはコンビニでも売っているのに。
もし日本の巨大なインスタント市場を狙っての参入だったら、インス
タントコーヒーが売られている場所にVIAがないと、かわりに買うと
いうことにはならないんじゃないかな。

4.スタバの考え
疑問に対するヒントは、発売時に記者発表の席で説明した、スタバ
ジャパンの説明にある。
担当者いわく、ターゲットと想定しているのは年配ではなく、若い層。
職場の近くにはスタバがあるのでそこで飲めるが、だいたいは自宅は
郊外にあり、近所にスタバがない。時間に余裕のある年配層は時間を
かけておいしいコーヒーを入れるが、彼ら若い層には時間がない。
なので、おいしいインスタントは若い層の「ホームユースコーヒー」
になる、というような説明だ。
うーん、そんな人は本当にいるかなあ・・・?
まず会社の近くでスタバに行く若い層は、スタバに何をしに行くのか?
コーヒーの味を味わいに行くのか?
答えはスタバの店舗で客を観察すれば答えは分かると思うんだけど、
ゆっくりしたり、気分を変えたり、勉強をしたりといった「場」を
求めてるんじゃないだろうか。スタバの最初のコンセプトが、自宅でも
職場でもない第3の場所「The third place」だったはずだし。
あ、今日発表の決算短信にも依然として書いてある。
スタバをそういう使い方で使う人が、家でインスタントは飲まない
だろう。彼らが家で手軽に飲めるおいしいコーヒー・・・といえば、
思いつくのはネスプレッソ。
最近ネスプレッソや同じようなカプセル型のエスプレッソメーカーの
売り場がすごく混んでいる。彼らこそ、自宅で手軽においしいコーヒー
を求めていた人だろう。
という自分も、実は最近買ってしまいました。手軽は手軽だけど味は
そこそこ・・・と思っていたら、驚いたことに味もおいしかったので。
スタバで下手な人が入れるラテよりも、ネスプレッソで作るラテの方が
おいしいくらいです。これが。

5.ではVIAはどうするのがいい?
このままではあまり売れないで店頭にただ並んでいる状態になるんじゃ
ないだろうか?
当初心配されたような、店頭で飲むドリップとのカニバリはなさそう
だけど、逆に相乗効果もない。立ち上がりでぱっとしないイメージがつく
と挽回するのは難しいだろうから、早急に立て直した方がいいだろう。
実際飲んでみての第一印象は、入れたてのときはまさにこれぞ
「インスタント」という香りがする。これを米国のように「ドリップと
かわらない」とスタバ愛好者に言っても、「いやー、やっぱりインスタ
ントでしょ」となるだろう。
一方、少し時間がたつと、最初のインスタント臭は消えて、確かにドリ
ップとかわらない気がしてくる。温度のせいか、香りが飛ぶせいか
わからない。
なのでインスタントのかわりとしては、1杯分100円払ってでもこっち
の方がいい。となると、やはり「高いけどおいしいインスタント」と
して売るべきだろう。
そのためにはチャネルは店頭ではなく、インスタントコーヒーを売って
いる
場所だろう。店頭では店員が手書きで書いた「私のVIAストーリー」
みたいなのが貼られているけど、その内容はバラバラでピンとこない。
もっとCMで明確なメッセージを決め打ちした方がいいんじゃないかな。
旅行に、出張に、キャンプに、もしくは毎日の自宅でのゆったりした
時間に、みたいに。(インスタントにスタバのブランドが効かないと
したら、別ブランド展開をした方がむしろ良かったのかも)
それにしてもどうしてこんなにアーケティングに違和感があるのかな、
と考えてみたが、ひょっとすると今の展開は米国の本社の意見が色濃く
反映されているんじゃないだろうか。
米国で成功したものをそのまま市場の大きな日本でやっているんだと
したら、米国と日本ではスタバの使われ方も、自宅でのコーヒーの飲ま
れ方も、インスタントコーヒーの浸透度も違うので日本のマーケ部隊に
もっと頑張ってほしいなあ。

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王将の新人研修は自己啓発セミナーか?

相変わらず売上前年比アップを続けている餃子の王将。
マスコミの好意的な報道もパブリシティとして大いに貢献しているように思う。

先日の日テレでは120人の新入社員を対象にした新人研修が取り上げられていた。
会場につくと携帯電話などは没収され、外界とは遮断される。
まずは大声で挨拶させたり、
社訓を時間内に言えるかどうかのテストなど。
要するに今の自分は何もできない、ということのすりこみみたいな感じかな。
研修中はひたすら大声で怒鳴られる。納得できず切れそうになると
「これはお前のためなんだ」と
やさしく声をかける。缶詰め状態の研修会場でひたすらこれが繰り返される。

研修担当者が何度も繰り返していたのは、「お前は自分のためにやってるんだよな、
そうだよな」というセリフだった。恐怖の下での単純作業で、判断力が鈍っている状態で
こう言われると、そんな気がしてくるんだろうか。

研修の最後には大声で泣きながら今後の抱負を絶叫する。参加者全員で拍手喝采だ。
そして研修担当者は「70点、合格」と言って抱きしめる。
缶詰め→現状レベルの否定→基礎訓練→最後にほめる→達成感 と書くと普通の熱い研修だけど、
外界と遮断→劣等感・自己否定→恐怖感→単純作業→判断力の低下→新たな価値基準のすりこみ→無条件肯定
というふうにしか見えなかった。
洗脳とは違って夜もたっぷり睡眠をとらせている。(23時消灯!)一番近いイメージは
「自己啓発セミナー」だろうか。
VTR後、驚いたのは徳光さんの称賛コメント。いくらなんでも今回のVTRはちょっと引くだろうと思ったけどなあ。
コメンテーターのワタミの社長はさすがに「自分の会社ではこのような
研修はやりませんが・・・」とチクリと否定した。
ネガティブなコメントは禁止だったと思うので、精一杯の否定だったことだろう。

1.すべては自分でやりたくてやっているのか?
一番大きく感じる問題点はこれだろう。王将は店長にメニューの裁量権など大きく権限が任されていると強調しているが、
それはこのような研修ですりこまれた感情であり、本当の意味での判断力はゼロなのではないか。

2.すりこみの効果はいつまで持続するのか?
いったんすりこまれた服従精神はどれくらい持続するものだろうか?
ちなみに彼らはこれからチーフ、店長(平均6-7年後)を目指して、現場で熱い店長から怒鳴られ続けるんだろう。
王将の店長の研修はちょうど1年くらい前に同じ日テレの徳光さんの番組で取り上げられていたが、
基本的に同じ感じ。
研修担当から罵倒→店長としてまだ甘いと自己否定→単純訓練のくり返し→最後は合格→抱きしめられる
このサイクルだ。店長から先はFCとして独立の道か、エリアマネージャーなどの本部スタッフの道になる。
FCとして独立する際も比較的期間の長い研修がある。王将のサイトを見ると、他にもチーフ研修、指導力研修、
調理研修、接客研修、海外研修、フォローアップ研修など、「研修」が目白押しだ。
こうしてすりこみ効果を持続するのだろう。
そこから覚めた人間は退職するのだろうが、退職率のデータは見つからなかった。

3.これはどこまで仕掛けなのか?
こうなると、この会社ではどこまでの人が確信犯である「仕掛け人」なのか?
役員以上か、社長1人か??
そしてマスコミが取り上げるのは純粋に興味からか、何か他の力があるのか。
今回の取り上げ方や、同じ番組で繰り返し取り上げているのをみても、何かあるんだろう。
でも今回の報道はとても効果的とは思えないけどなあ。

4.会社とのかかわり方
王将の採用は、どこか負い目を持った人間を積極的に採用しているように思う。
この日の新人でも、就職活動で50-60社落ちて唯一の内定が王将という新人がいた。
会社は「助けてくれた」ので「恩を返さなければならない」と彼は言う。
自分は会社とは常に対等でいるつもりだし、明日辞めろと言われても困らないだけの
「覚悟」を持って仕事をしようと日々思っているんだけど、王将の社員は自分のために働いている
ようで、100%会社依存な感じがする。
ずっと王将で働いていく覚悟なんだろうから本人はそれでいいんだろうけど、
この日のTVを見た社員の家族はどう思ったんだろう。
お父さん、頑張ってるな!!って思ってもらえただろうか。


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JAL

JALがとうとう破綻した。
「とうとう」というのは、もうずいぶん前から事実上の債務超過だと言われ続けて、週刊誌にも告発記事なんかが書かれていたので、今さらなーという感じ。
日本ではマイルドな言葉を使って報道されているせいか、あまりショックはなくて今までの憧れというか妬みというか、そんな気持ちの裏返しの批評が多い感じがする。
海外のメディアでは、日本が経済的に大きな危機であることの象徴のような感じでけっこう大きく取り上げられていたけど、ハイチの大地震でかき消された感じだ。

もういろいろ批判の記事があるのでちょっと出遅れ感があるけど、まとめておきます。

疑問1: なぜ今になって破綻したのか?

まずそもそもの疑問はこれだ。よくリーマンショック以降ビジネス需要がとか、原油高で旅行客がとか言うけどANAはつぶれない。なぜJALだけなのか。
燃料効率が悪い大型機が多いとか、人件費が高いといったPLの問題はよく取り上げられていて面白くないので、バランスシートを見比べてみた。
まず1つ目は、単純に短期の借金だ。
2009年3月期の決算時、短期借入金+1年以内返済の長期借入金+1年以内償還の社債を合計すると、ANAが1577億円であるのに対し、JALは4715億円もある。営業利益で509億円の赤字なのに、多少政府が債務保証をしても回せないだろう。
2つ目には週刊誌でも報道されていたように、航空機購入にまつわるリベート計上のからくりがある。
例えば飛行機を1台購入するとする。そして値引きがあったときに、普通だったら値引き後の価格を購入額として計上する。費用は耐久期間で償却する。
しかし日本の航空会社は過去、購入金額の定価を購入額として資産計上し、値引き分を「機材関連報奨額」として営業外利益に一括計上する、という「グレー」な処理をしていた。まあ昔は商社や流通でもよく見られた手法とのことだけど、航空会社のリベートは金額のケタが違う。例えばJALは2003年3月期に420億円を計上しているが、この年の純利益は116億円なので、これがなかったら赤字だ。その後も2004年に292億円、2005年に483億円とどんどんこの「営業外利益」を計上している。目先の赤字は逃れてもバランスシートの資産はふくれあがってしまっている。これが足かせになったんだろう。
3つ目には、デリバティブの損失。JALとANAの株主資本はそれぞれ3840億円と4032億円でそれほど違いはない。しかし純資産合計となると1968億円と3258億円というように大きな差がでる。この差がJALの「繰延ヘッジ損益」にある2018億円のマイナスだ。これは2009年3月3日の日経新聞で日本企業が、原油価格が高騰し、その後下がってきたときに再上昇を予想してヘッジを組んだところ、予想に反してさらに原油価格が下落し、大きな損失を出したと報道されている。その中で2008年12月現在でJALは約2400億円の損失を出したとされている。しかし一方でANAは約1000億円だとされている。この差は何か?やはりデリバティブの失敗、ということができるだろう。
ということで、JALの破たんは公表資料からみても時間の問題だったわけで、政権交代が予想されていたことから自民党が先送りにした、というのが理由ではないだろうか。

疑問2: なぜJALを国が助けるのか?
1つ目の疑問はJALがなくなって乗客の誰が困るのかということだ。ナショナル・フラッグ・キャリアだからつぶせない、とよく言うけど、いったい誰が困るのだろうか?JALしか就航していない路線がたくさんある、というが、本当に乗客がいる路線は売却できるだろう。ANAは引き継がない、なんて言っているけどじゃあスカイマークでもいいじゃないか。外資系だっていいし。そう考えるとJALという会社がなくなって困る人は乗客ではないんだろうな。
2つ目には上にも書いたとおり、今回の破たんは経済状況ではなく経営のまずさが原因であり、責任は取ってもらうべきではないか、という点だ。やはりJALの問題点は「絶対つぶれない」と自分で思っている点にあると思う。現に今日も報道されていたけど、こんな騒動のさなかでも、1月15日はJALフランスの従業員を対象に新年会としてセーヌ川クルージングが会社の経費で行われていたとか、台湾では毎月恒例のゴルフコンペ(懇親会はJALが費用負担)の案内が今月も1月28日に開催する旨の案内が送られたとか、この状況でも全く緊迫感はない。社員総出で手書きのメッセージを配ってもそんなパフォーマンスにはだまされないだろうなあ。
3つ目には、競争の観点からもやりすぎではないか、という点。海外では、政府が助けた企業には事業上の制限がかけられることが多いと思うけど、JALにはあまりそういう話は聞こえない。ANAは、借金が棒引きにされて無借金になり、国から超低金利の資金を借りている企業とガチンコ勝負することになる。これではあまりにも不公平だ。

疑問3: そもそもJALを救うことは可能なのか?

もっというとこれだ。
1つ目には稲盛会長にJALを救えるのか、という点。京セラを大きく成長させた、という経営手腕が買われたというが、それはJALには通用しないだろう。彼のマネジメントの手法は一種のカルト的な手法であり、最初から自分の色に染めた組織では通用するだろうが、別の色にしかも強烈に染まっている組織を3年で変えるのは難しいだろう。現に過去にJALの再建にカネボウのトップも送り込まれたが、玉砕しているし。さらにはウィルコムでも失敗しているし。(そのウィルコムも国が救うというのはいくら民主党でも許されるのか??)
そうなると手法としてはカルロス・ゴーンと同様、今のうちにできるだけ損失は多めに出しておいて、最初の1年にファイナンス面でV字回復を見せて、「アメーバ経営で社員の意識が変わったおかげだ」ということにして2年くらいで生え抜きにトップを譲る、というのが予想されるストーリーだろうか。
さらに2つ目には民主党にJALを救えるのか、という点。言い方を変えるとJALにドラスティックな改革をさせられるのか、ということだ。
何といっても民主党の支持母体は労働組合。そう、JALは社内に8つもの労働組合を持ち、絶大な権力を持っている会社だ。
その労組の出しているこの新聞を読めば、こりゃー難しいなと思うだろう。
http://www.ne.jp/asahi/nikkou/rouso/yoku/wing_184.pdf

さて、どうなる?




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カブドットコム証券の企業文化

自分も使っているカブドットコム証券。斎藤社長はよく雑誌にも出てくる「成功した起業家」だ。
この会社で以前、社員がインサイダー問題を起こしている。しかも顧客が不正をしていないかを監視する業務にかかわっている社員だ。(といっても企業の開示情報を確認し、PTS市場で不正がないかをチェックするだけだけど)
この件に関しては「調査委員会」が5月に報告書をまとめて一件落着したと思っていたら、先日「特別調査委員会」がさらにレポートを作成し、報告している。この内容がすごいのだ。
5月の報告書は役員のレビューを受けたもので真実とはほど遠く、今回は社員にアンケートやインタビューを実施し、インサイダー取引をしてしまうような要因が会社側にもあった、という内容だ。この中で、斎藤社長のマネジメントの問題点をいくつか指摘している。

1.過度な情報共有
よく、社内の風通しを良くするために、オープンスペースが良い、という経営者がいる。元トリンプの吉越浩一郎氏もそうだ。カブドットコム証券もそうで、社長がワンフロアにずいぶんこだわったとのことだ。しかし証券会社はインサイダー情報が投資銀行部門にどんどん入ってくるので、社内でも機密を守らなければならない。チャイニーズ・ウォールもその例。
カブドットコムの場合は、社長がワンフロアにこだわったばかりに、コールセンターのやりとりを他部署の社員が聞くことができるという状況だった。
その結果、本来知る必要のない社員にも情報が提供された。よく組織の問題点をあげさせると「情報共有がされていない」と上げるケースが多いが、行き過ぎもまた問題ということだ。

2.メール依存文化
カブドットコムでは仕事のやりとりはすべてメールで行われる。一般社員で多い時には1日500通のメールを受信する。しかもそのほとんどは、宛先に社長が入っているそうだ。社長は所属長を超えて、しばしば直接担当者に指示を出すことも多いとのこと。
社長に直接メールでやり取りができる社風というとなんだかうらやましい気がするが、リアルの組織が全く無視されて、メールで社長と全社員がつながっているというのは組織上はやはり問題だろう。

3.社員への過剰な精神的コントロール
社長の気質としていらだつと手がつけられないそうで、「病院行くまでやれ」「死んでもらう」「いやならさっさとやめろ」と罵倒するのはよくあることだそうだ。しかもアフターファイブの社員同士の動きも把握したがるそうで、社員同士飲みに行っていることを知っていることをちらつかせるそうだ。何か失敗すると簡単に社内処分されることもあり、今回のアンケートに答えること自体に恐怖を覚えるというコメントもあった。

レポートでは、斎藤社長が美大出身だったことから、デザインや形式に偏重し、実質を軽視したことが指摘されていたり、社長の暴走を止める幹部がいなかったことが書かれている。

しかし会社の実態をここまで公式に明らかにしたものは今まで見たことがない。
雑誌の記事などではなく、当の会社が自ら発表している内容だ。
しかも過去の話ではなく、この組織は今なお存在しているのだ。
今頃社内はどうなっているんだろうか!?
誰々がネガティブなコメントをしたらしいとか、社長にチクる社員もいたりするんだろうなあ。

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日本の新聞のビジネスモデル

米国の経済状況悪化とともに、たくさんの新聞が廃刊に追い込まれているそうだ。デンバー、シカゴ、シアトルと各地の主要紙が廃刊となり、あまりに多いので新聞の報道が追いつかない、という冗談が書かれているくらいだ。
歌川令三氏の「新聞のなくなる日」によると、米国の新聞社の収入の85%は広告収入が占めているとのこと。ニューヨークタイムズは95%にものぼる。新聞が売れなくても広告さえ取れていれば儲かる、ということはないだろうけど(新聞が売れなくては広告媒体としての価値はないし・・・)、新聞の売れ行きよりは広告量に依存していることは確かだ。
しかし、2005年をピークに新聞の広告収入は3分の1減少したようで、バークレイズキャピタルは今後1年間でさらに20%減少するとの予測を出している。それでは新聞の収支は合わないだろう。
彼らは新聞を売っているというよりは広告のスペースを売っている。なら別に新聞でなくてもウェブでもいいわけだ。問題はウェブのニュースにお金を払うかどうか、だなあ。となるとやはりニュースの質がポイントになるのかな。

さて日本の新聞。日経を見ていても今年は明らかに広告収入は落ちているような印象を受ける。日経グループの広告が多いし。幸福の科学の広告も目立つし・・・。
それでもダメージは米国ほどではないかもしれない。
というのは、日本の新聞の収入に広告収入が占める割合は36%にすぎないからだ。
メインは「新聞紙」の売上。もう少し正確に言うと、「読者への販売量ではなく、新聞販売店への販売量」が収入のメインだ。
最近某週刊誌がしつこく特集を組んでいるが、長年タブーとされていた「押し紙」がこれ。
全国の日刊紙の約20%が「押し紙」、つまり読者に届くことなく新聞販売店が買い取って毎日廃棄する新聞だ。別に自分達で食い合う分には関係ないけど、その押し紙を含めた「発行部数」が媒体力を表す指標になるので、そこは問題だろう。
新聞販売店の経営は当然苦しいので、自分達で昼間に新規獲得セールスに行くのと同時に、「拡張団」から新規契約を「買い取る」ということになる。しつこくセールスに来るちょっと怖そうな人たちがそれだ。
こう考えてみると日本の新聞のビジネスモデルは非常に危なっかしい事業だ。けど新聞にはもちろんそんなことは書かないし、日本の新聞社は放送事業もかかわっているので、当然テレビでも報じない。たまに押し紙の問題を週刊誌が取り上げる程度だ。

日本人の若い層は確実に新聞は読まなくなっているし、「新聞紙」を売る事業はどんどん厳しくなるだろう。「ニュース」を売る、もしくは「ニュースを載せる媒体」を売るモデルにいかに移行していくかが生き残りのカギだろう。

新聞といえば、日経の朝刊に業績予想やM&Aの詳しい記事が出て、東証のウェブサイトにその会社のプレスリリースとして「一部で報道されましたが、当社として発表した事実はありません」と掲載されて、その日の15時以降に正式発表するパターン。近年は以前にもまして増えているように思う。試しに朝9時頃、東証の適時開示情報閲覧サービスのページを見てみるといいです。早速その日の日経の記事がらみのリリースが載っているはず。これって明らかに会社が日経新聞に取材させていると思うんだけど、ルール上OKなんだろうか?いやーOKじゃないでしょう。そのうちどこかが取り上げるかな!?

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終業時刻に退社するのはいけないのか?

連合総研がまとめた「生活時間の国際比較-日・米・仏・韓のカップル調査」というレポートを読んだ。まあなんとなく日本が一番会社にいる時間が長くて・・・ぐらいしか想像がつかなかったけど、予想通りの部分と、うーんと唸ってしまう部分とがあった。
まずは残業時間。男性で比較すると1日あたりで日本92分、韓国47分、米国35分、フランス32分。まあそうでしょうそうでしょう。
ちなみに出社時間の平均は日本8:33、韓国8:35、米国8:21、フランス8:28となる。まあこれは似たようなもので、異なるのは退社時刻。日本19:08、韓国19:07、米国17:18、フランス17:33。米・仏は17時まで、という感じなんだろうか。
子供にかかわる時間(遊び、教育など)は、男性は日本が最短で1日44分。最長は米国の121分。これが働く女性だと最長はやはり米国で211分なんだけど、2位は日本で198分になる。最短はフランスの74分。明らかに日・韓は子供の相手=女性が1人でやる。米・仏=夫婦で一緒にやる、という違いかな。これに対しては、配偶者の子どもとのかかわりに満足している割合として、日本の妻→夫が最低ということにも出ているように、特に日本は子供の女性に任せっきりということだ。おまけに日本の男性は家事を全くしない人が非常に多く、働く女性への負担は大きい。保育園の充実を考える前に、まずは男性の協力という意識改革を啓蒙する方が、費用もかからないしてっとり早いんじゃないだろうか。

さて、一方でうーんなるほど、と思ったのは最初に書いた残業時間に関係がある。
このレポートには、出社時刻と始業時刻、終業時刻と退社時刻が分けて書いてある。
まずは出社してから始業までの時間を計算すると、米国が10分、フランスが9分に対し、日本は19分、韓国は23分かかっている。
終業してから退社も同様で、米国が11分、フランスが7分に対し、日本は24分、韓国は28分かかっている。
皆、自分の仕事が終わったらダラダラしないで帰ろうぜー!!と思うんだけど。でもあるサイトで「ビジネスマナーガイド」というのを見ると、こう書いてある。
「退社の際に、絶対にやってはいけないことは、終業時刻以前に帰り支度をはじめることです。終業時刻というのは、仕事を終える時刻のことです。ですから、終業時刻まではきっちり働き、終業時刻が過ぎたら帰り仕度をはじめるというのが本来の姿です。しかしなかには、就業時刻と同時に会社を出てしまう社員もいます。こんな姿が印象良く映るわけがありません。それに、終業時刻ピッタリに仕事が終わるなんてことは、少し不自然ではありませんか?「本当は大分早く終わっていたのに、無駄に時間を潰していたのでは?」こんな意地悪な見方をする人もいないとは限りません。ですから、もしも終業時刻丁度に仕事を終えてし まったとしても、5分以上は自分のデスクにて過ごしましょう。たとえば、明日におこなう仕事の準備をしたり、データを整理したりするのもいいでしょう。」
うーん、明らかに仕事が終わっているのに何となくぐずぐずしている方が、よほどとろい感じがして印象が悪いと思うし、昼間集中して仕事の早い人が帰りもサクッと帰ると、よりいっそうできる感じがすると思うけど。

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餃子の王将

最近、テレビ東京のカンブリア宮殿で餃子の王将が取り上げられていた。この不況の中、直営店全店で黒字を達成しているらしい。

12月末までの四半期決算をみると、売上高が407億円で前年比+9%、営業利益が47億円で+15%、純利益が26億円で+20%だ。
例えば同じ定食チェーンの大戸屋は、売上高が132億円で前年比+2%だが、営業利益は2億円で-51%、純利益は3千万円で-87%だ。これをみても好業績が際立っている。

1.収益性が高いのはなぜか?
上に書いたとおり、大戸屋と比べると収益性が高い。
番組中では国産豚肉、国産キャベツを使い、毎朝工場から店舗に皮と具が届けられ、店舗で包んで焼く、というように味にこだわっていることが強調されていたが、そうはいっても使う材料の品目数は少ないし、そんなに高い食材でもない。P/Lを見ると原価率は31%。大戸屋の38%と比較しても安価だ。
そして販管費の対売上高比率も大戸屋の61%に対し、王将は57%。ローコストのオペレーションが徹底されているのだろう。そういえばそんなに場所代が高そうな駅には王将はないかな。渋谷は別だけど。
そしてもう1つ、価格ではないだろうか。そう、意外に高いという意味で。
周囲の人に王将の話をふってみると「安い」という人が多かったんだけど、王将の客平均単価はこの1月の実績が860円。意外にも金を使っている。餃子定食だって700円以上するし。大戸屋は明記していないが、情報をあわせると700円台。
昨年は餃子も値上げしているし、マクドナルドで話題になった価格の地域格差だって王将では依然から存在する。餃子1人前(6個)は東日本は231円で西日本は210円だ。

2.なぜ前年比プラスを続けられるのか?
王将は既存店売上高は1年以上プラスを続けている。直営店にいたっては65か月以上だ。王将はチェーン店でありながらマニュアルというものがなく、メニューや価格などは店長にかなりの裁量権がある。彼らを指導するエリアマネージャーもいて、彼らがまた店長にはっぱをかけている。
だが、1つ大きいポイントはインセンティブの存在だろう。各店舗では前年同月の売り上げをベースにして売上目標が設定され、それを超えた分の30%が各店舗に渡され、店舗の従業員全員で分け合うというインセンティブがある。これが前年比をずっと越えようとするパワーの正体だろう。

3.王将のライバルはどの業態か?
やはりこの目で見てみなくては、ということで今夜食べに行ってみた。
渋谷店に行ってみたのだが、20時ころ、10人以上の行列ができていた。やはり好調のようだ。客は男女もばらばら。年齢もばらばら。たくさん食べそうな学生、若いサラリーマンもいれば、若い男女のグループ、女性どうし、飲み中心のおじさんグループ、若いファミリーと、いった具合で、実にバラエティに富んでいた。
先ほど「同じ定食チェーン」と書いたが、全然違う。ライバルは大戸屋であり、吉野家であり、和民であり、街の中華食堂であり・・・
肝心の味はというと、あれこんなもんか、という感じ。ごはんはべちゃっとしているし、餃子も皮はうすくて具の味が濃いーし。並んでいる人が「たまに食べたくなるんだよな」と言っていたが、若いころ食べた味だから、ということか。
王将というと、そんなにCMを見たことはないが定期的にテレビでいろいろな形で取り上げられる。カンブリア宮殿もそうだけど、ユニークな経営についてもちょくちょく出て、王将のウェブサイトではそれがまとめられている。宣伝というよりはパブリシティを上手に使って、「懐かしい味、おいしい味」というイメージをインプットすることに成功しているのかもしれない。
自分自身は若いころ王将に行ったという思い出もないので食べてもピンとこなかったし、餃子とごはんとスープとキムチで740円は別に安くもないし。餃子は12個でボリュームたっぷりではあったけど、自分には多すぎだったな。
まあそれはさておき、経営としては非常にユニークは外食店だと思う。

ところでどうして自分は若いころ王将に行くことがなかったのか?
答えは簡単。地元に王将がなかったから。(笑)
王将は今でも北海道、青森には1軒もないのだ。
というのも先に書いたとおり、王将の餃子は皮と具を工場で作り、夜に配送して全店舗に朝につくようにしている。現在工場があるのは京都、千葉、福岡。なので千葉から青森、北海道までは生の具材を配送することができないので、進出できないとのこと。
私の地元、北海道に店を出したら絶対流行りそうなのになあ・・・

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mixi

ここのところ、mixiのコミュニティがめっきり静かになったような気がするのは気のせい?
そのmixiが招待制をやめて登録制に、かつ対象年齢を引き下げることを発表した。

この招待制は、加入者の質を維持するためにmixiが競合の参入に際してもかたくなに守ったルールだ。機関投資家の間でも登録制にして加入者を増やすべきか、招待制こそmixiの強みを生んでいるもので維持すべきか、議論がされてきた。

この1年間、mixiは従来の勢いのまま閲覧数(ページビューを増やしてきたが、昨年夏にPCからの閲覧数と携帯からの閲覧数が逆転し、その傾向に拍車がかかっている。もう既に携帯はPCの約2倍の閲覧数だ。
以前のmixiのコミュニティはかなりマニアックなものもあり、例えば統計のコミュニティは専門家が質問に答えてくれたりして、とても役に立つ感じだったが、最近そういったコミュニティがあまりにぎわっていないように思うのは、この携帯とPCの逆転も1つの要因だろう。
携帯でのアクセスだとやりとりも限られるし、「友人」作り目的が増えてきたのかな?

ネット業界の知人いわく、ここのところは出会い系などに悪用されるケースも多いとのことで、こうなってしまっては招待制にする意味ももはやないんだろう。
mixiは質にかたくなにこだわって、投資家から「もっと早い成長のために積極的な投資を」と指摘されても耳を貸さなかった印象があるが、もうここまでくると質にこだわる意味もなくなってきたので、携帯への移行で下がっている広告単価を上げていくことに集中することにしたのかな。
ただし、2年前はアクティブ率(3日以内にアクセスする人の割合)は70%くらいあったのが、最近では50%に近くなっており、ユーザーが増えても広告対象としては魅力は薄れていくように思う。とりあえず質より量を追うという戦略だが、もう後戻りはできないという意味で大きな転換点だと思う。

何といっても、mixiはネット系ベンチャーのイメージに合わず、国債を20億も買っている会社だ。堅実といえば堅実だけど、成長を期待しての株価だと思うので、その期待で集めた資本を塩漬けにするというのはいくらなんでも経営者として策がなさすぎる。
このニュースの発表後株価はしっかり戻しており、一応の評価はされたといえるが、これから1年間は正念場だろう。

ところで今回の更新はだいぶ間があいてしまいました。少なくとも週に1度の更新を心がけてきましたが、数日遅れてしまいました。
実は先月からある資格の勉強を始めて、朝会社に行く前の1時間はそちらに取られるようになったせいもあります。そんなに時間のかかる資格じゃないんだけど、自分の勉強(復習?)のために取ろうと思ったので一応ちゃんと勉強してます。とはいえちゃんと更新もします・・・

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H&Mといえばスエーデン。スエーデンといえばIKEA、の話

先日、銀座にH&M日本第1号店がオープンした。手頃な価格だけどちょっとおしゃれ、って報道のままだけどそんな感じなんだろうか。たまたま開店2日目に銀座の博品館の横を通ったら、ものすごい行列ができていて、まさかとは思ったがH&M行列だった。いくらTVでパブをたくさんやっていたとはいえ、並ぶか!?!?あふれた客はZARAに並んでいるらしい。ZARAに並ぶか!?!?

ということでH&Mはスエーデンのブランドだが、スエーデンといえば同じようなコンセプトのIKEAがある。ここも開店当時は行列だったが、先日買い物に行ったらまあ落ち着いていた。このIKEA、けっこう面白い会社なのでまとめておきたい。ネタ元は2006年5月11日のEconomistに掲載された「Flat-pack accounting」と言う記事。見出しには「IKEAの家具の組み立ては面倒だが、この会社の会計を連結することに比べるとはるかに簡単だ」というようなことが書いてある。

1.どこの会社か?
まず最初におことわり。IKEAはスエーデンの企業ではありません。えー!?という感じだが、何と会計上はオランダの会社です。
世界235店舗のうち、そのほとんどの運営をしているのは「インカ・ホールディング」という会社で、オランダで登記されている非公開企業だ。
非公開ということはその親会社はどこか。これが企業ではなくてオランダ籍の非営利法人である、「スティヒティング・インカ財団」だ。この財団がインカ・ホールディングを100%所有している。この財団はIKEAの創業者、カンプラート氏の資本提供で設立された財団で、目的は「建築とインテリアデザイン分野におけるイノベーション」ということだ。どうみてもIKEAの研究開発そのものだが、非営利でこれに取り組むかわりに税金が大幅に免除される。
他にも「スティヒティング・IKEA財団」という財団も持っているようだ。
これら財団の市場価値は少なく見積もっても4兆円で、ビルゲイツの財団をも上回る規模だ。
その一方、オランダの非営利財団には情報公開の義務はない。ゲイツ財団は寄付の詳細まで公表しているが、インカ財団はインカホールディング(IKEAの運営会社)から受け取った「配当」をどう使ったか(誰に渡ったか)を一切公表していない。彼らは「慈善目的で使った」と言っているだけだ。
おまけに「将来の資金需要に備えて、IKEAグループを保護するための内部留保に向けた投資を行った」とも言っている。どこが財団なんだろう、単なるホールディングカンパニーじゃないのか??
オランダ籍財団のメリットは税金以外にもあって、この財団は5人からなる理事会で合意がなければ何も外部からの干渉を受けないで済む。もちろん中心はIKEA創業者のカンプラートだ。このしくみのおかげでIKEAは買収の脅威にさらされることはない。

2.もう1つのカネの流れ
もう1つのポイント。IKEAの商標とコンセプトはインター・IKEA・システムズというオランダ籍非公開企業が持っている。この親会社はルクセンブルグ籍のインター・IKEA・ホールディングスという会社。その親会社はオランダ領アンチル諸島のインター・IKEA・ホールディングス等会社で、その親会社はアンチル諸島のキュラソーにある信託企業だ。この信託企業に対し、誰が受益所有者となっているのかは不明だが、カンプラード一族であることは確かだろう。
そしてインター・IKEA・システムズは、IKEA全店舗から売上げの3%を集めている。
このインター・IKEA・システムズ関連の企業は880億円の利益を上げながら、税金は30億円の税金しか払っていない。税率3%なので消費税より安い。このしくみはEconomisitをもってしても解明できなかったようだ。

3.では何が問題か?
(1)この節税システムは法的に問題ないのか
別にこういった財団を使った形態はIKEAだけではなく、オランダではハイネケン、フィリプスなども同様らしい。それにしても法の抜け道を世界規模でつなぎ合わせたのはすごいが、いくらなんでもこの税率はおかしいだろう。でも誰にも指摘できないようだ。
別にこのシステムで高収益をあげているわけじゃくて、高収益企業が税金をうまく払っていないだけなのだが、北欧企業というとクリーンなイメージがあるだけにやはり解明する必要があると思う。

(2)資金調達に問題はないのか
外圧にさらすことなく企業を守っていて、資金調達に問題はないのだろうか。財務諸表なんてもちろん存在しないので(何と売上げだけしかわからない)、何ともいえないがまあいらないのだろう。創業者のカンプラートは今年のフォーブズ世界長者番付でも例年通りトップ10入り(7位)なので、たっぷり資金はあるんだろうけど。

(3)とはいえ成長にブレーキがかかったら問題だろう
これだけのしくみを作ってまわすのは、非常に維持コストがかかっていると思う。それ以上にメリットがあるからいいけど、企業の成長がとまったらこの高コスト体質が問題になってくるだろう。

ということで、IKEAというとサプライチェーン・マネジメントとかマーケティングの題材として取り上げられることが多いが、一番面白いのは会計だ。何せまだ誰も解明していないのだから・・・

カンプラートは既に30年前にはIKEA自体の経営から身を引いているが、これだけの集金システムを作り上げて悠々自適の生活をオランダで・・・

いえ、スイス在住だそうです。これにも意味がありそうな・・・

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社長が2人?

今週一番驚いたニュース。新聞の見出しを読んで一瞬理解できなかった。

中古車売買のガリバーの新社長に息子で専務の兄(37)と弟(35)が就任。

あー、子供に社長を譲って、自分は会長に退くんだ・・・って社長が2人??

そう、会社の「トップ」は会社法上は「代表取締役」であり、「社長」というのはあくまで社内での呼称にすぎないので、別に2人いようが問題はないのだ。「代表取締役大将」でも「キャプテン」でもいいわけだ。

この兄弟は、H7年に同時に取締役に、H11年に同時に常務になったのだが、H13年に兄だけが専務になり、弟は5年遅れてH18年に専務昇進、そして今回は再び同時に社長だ。一時は兄が後継候補だったのが弟が巻き返して追いついた、ということだろうか。

であれば、社長はそのままで、2人の専務を副社長に、というのでは何がいけなかったのだろうか。ガリバーは「社長2人体制で会社を牽引することが、さらなる株主価値の向上につながる」と言っているが支離滅裂だ。肉体的パワーで引っ張るわけじゃないんだから、1人より2人の方が力が出る、というものでもないだろう。

社長の役割はいろいろあるが、社長にしかできない仕事は、「意思決定すること」だ。何をやるかを決めること。もっと難しいのは何をやらないかを決めること。もちろん正解は誰にもわからないし、判断のベースとなる情報、データも完全に揃うわけでもない。そんな中でも最後は1つに決めなければならない。2人のトップがいるとこの「意思決定」プロセスがとても複雑になる。

シナリオ1: 会長が引き続き意思決定する。

恐らくこれが実際だろう。意思決定はあくまで会長がやる。となると社長なんて名ばかりということになる。名ばかりならむしろ良いのだが、社長という肩書きを与えられると彼らもそれらしい振る舞いをするだろうし、社員はその対応に追われるんだろうなあ。

シナリオ2: 本当に社長が2人力を合わせて意思決定する。

一方会長の言うことが本当だったら何が起こるか。それは社内政治だ。それぞれの社長に十分根回しをして、どっちが勝ったとか誰がどっち派だとか、そういうことが始まるのは組織論上当然の結果だ。

創業社長の最大の仕事は「後継者を決めること」だ。ガリバーの社長は、その最大の仕事をできなかったといえる。ファミリー企業であれば問題はないが、ガリバーは上場企業である。投資家に十分な説明をすることが求められるだろうが、「2人の新社長は創業時からのメンバーであり・・・」としか説明していない。社歴が長いと経営能力が高いと考えているのだろうか??      

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