映画・テレビ

新ニッポン人

昨夜、TV東京で久米宏の「新ニッポン人」という名で現代の20代の若者に関する特集があった。今の20代は消費性向がそれ以上の日本人と大きく異なるらしい。

まず車。20代の車保有率はこの数年で20数%から10%代前半まで大幅に減少している。別にお金がなくて持てないのではなく、持つ必要性を感じないからだそうだ。

そしてお酒。とにかくビールを飲まない。苦いからだそうだ。1杯目にサワーを頼むとあとはおしゃべりに専念して、酒は飲まない。2杯目に牛乳+生クリームのせを頼んでいる男性も映っていた。20代の3人に1人は酒を飲まないらしい。

次に海外旅行。行きたいとも思わない。自分が若い頃は(いや、今も)海外に行きたくて仕方がなかったけどなあ・・・。かといって国内旅行をするわけでもない。

マージャン、パチンコなんてとんでもない。そんな彼らは、休日はひたすら家にこもってインターネットとゲームで過ぎていく。行動範囲が非常に狭く「1マイル圏内」から出ないそうだ。

これらの「消費しない」傾向は、お金がないからかというと、そうでもない。番組中では極端な例として200億円以上のデイトレーダー(BNFと呼ばれる若者で、ジェイコム誤発注事件のときに40億投入して20億もうけた人だ。確か千葉の実家に住んでいるはずだが、都内の高層マンションに引っ越していた・・・どうでもいいけど)が出ていたが、お金はあってもあまり使うことに興味はなく、昼はぺヤング、夜は立ち食いそば、みたいな感じだった。

消費をしない一方、「貯蓄」はどうか。これがしっかりと貯金をするそうだ。しかも老後に備えて・・・。そんなことでは多少のお金はたまっても、カネを自分の力で稼ぐスキルも身につかないだろう、なんて思ったけど、それは旧ニッポンジンの理屈なんだろう。

そして消費しない彼らも、社会貢献には関心があるようで、海外旅行には関心はないがボランティアツアーにはどんとお金を使うらしい。うーん、難しい奴らだなあ。

番組としての結論は、彼らは生まれた頃がバブル崩壊、そして高校生の頃が就職氷河期と、常に社会の厳しい側面を見て成長してきた。なので自分の、さらにはニッポンの将来に大きな不安を抱いているので、それに備えようとしているのではないか、という分析だった。一貫してそれに対して「理解できない」「かわいそう」「生命力が弱いので心配だ」みたいな批判的なトーンだったと思う。

1.彼らは頼りないのか?

ひょっとすると非常にまともでしっかりしているだけかもしれない。ゲストの年配者が「俺の若い頃は借金してでも金を使えといわれた」と言っていたが、若者と比較するとそっちのほうがよほど子供っぽい。今の20代の方が、よほど真剣に自分のことを考えているのかもしれない。

2.本当に皆考えているのか?

一方、本当にそうなのかなー、という疑問も残る。単に人と関わったり、自分で考えたり、そうしたこと全てが「面倒」なだけかもしれない。その延長戦上が低消費であり、貯蓄だとすると、旧ニッポン人の心配はそのとおりだろう。

3.ところでこの番組は何を言いたかったのか?

最後までこの疑問は解けなかった。いったい何をいいたいんだろう?単なる問題提起か?

車が売れない、お酒が売れない、というテーマを民放で取り上げるのは恐らくタブーなんだろう。TVでやらなければ気がつかないかもしれないのだから。そんな中、せっかく取り上げたのに、分析の切れ味がさっぱりなかった。ゲストは3人。まず小池百合子は自分の政治の話ばかりだった。ETCがどうとか、関係ない話をするし。次に岡野工業社長。年配の代表だが、ひたすら「今の若者はダメ。というかかわいそう」と言うだけで、彼らの性向を理解しようともしていなかった。最後に「新ニッポン人代表」のゆうこりん。それはないだろう。新ニッポン人の不思議さを強調しようとしたのか?

こんな感じなので、せっかく「民報のタブー」に挑戦しようとした興味深い番組が、ただ不思議な若者を映し出しただけで終わったのが大変残念だ。ぜひ続編で、「景気が悪い時代に育ったから」というだけではなく、彼らの心理を解き明かしてほしいと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (3)