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信越化学の社長交代:一気に12歳若返る!!

信越化学の金川社長の交代が発表された。新聞、雑誌でも名経営者としてあまりにも
有名で、信越化学の株価にはこの社長がいるからこその株価だという意味で
「金川プレミアム」が上乗せされているとも言われているほどだ。
それほどの経営者なので、後継問題も常に指摘されてきたけど、結局は副社長の承認
という順当な引き継ぎとなった。
これで一気に社長も12歳若返って会社も新たなスタートだ・・と思ったら、新社長は72歳。
84歳から72歳への引き継ぎだ。
以前と比べると日本の社長も、大企業でも若い人がなるようになったと思うけど、特に
ヨーロッパのグローバル企業なんかだと40代の社長が珍しくないので、70代の新社長
は驚きだろう。
別に年齢は関係ないとはいえ、40代と70代だと体力、スピードでどうしても差があると思う。
さらに驚いたのは、金川社長の会長就任。まだまだ経営にかかわっていくというのだ。
日本は社長を辞めると会長に、次は相談役、その次に顧問、さらには最高顧問に・・・と
社長を退任してもずっと経営に関わるケースが多い。これでは新社長も思い切った手を
打てないだろうなあ。

そう思っていたら同じ日に、ブーズ&カンパニーからCEOの交代に関する調査の
レポートが発表されていた。これを見ても日本がちょっと欧米、アジア各国と違って特殊な仕組みであることがわかる。
調査は2009年1月時点の株式時価総額で世界上位2500社に対して行われている。

まずは社長になる際、社内から昇任する形で社長になった割合から。
日本:96%  北米80%  欧州73%  アジア(日本除く)72%
日本はほとんど全てが社内からの登用だ。これは会社員の出世競争の
最後が社長、ということ。社長が「専門職」という認識があれば
外部から「プロ社長」の登用が海外のように増えるんだろう。

次に社長に就任した時の年齢について。
日本:66歳  北米、欧州、アジア:グラフしかないけど50歳位
これはだいぶ差がある。ちなみに世界の平均は53歳なので、日本はちょっと突出して
いる。
そうなると社長在任年数は逆の結果になるわけで、
日本:5.6年  北米:8年くらい  世界平均6.3年
高齢で社長になるので在任年数は当然短くなる。何となくイメージは日本は長期的な
視野での経営、北米は短期的視野での経営みたいな感じがあるけど、北米の社長の
方がじっくりと社長業に取り組めるようだ。

次に、社長就任時に、前社長が会長として留まる割合をみてみる。
日本:75%  北米:46%  欧州:22%
これも日本がちょっと異常値だ。60歳を超えてようやく社長にたどりついて、すぐに
辞めなければならないので、その穴埋めに会長に就任する、という感じだろうか。
それにしてもその後の相談役以降も含めると長すぎる。
逆にそのおかげで急には新しいことには取り組めないので長期的な視野での経営が
できているということか??

もう1つ面白いデータがあって、前社長が会長に留任している
ケースとそうでないケースで業績に差があるか、というデータだ。
ここで業績の指標としては各地域の株式インデックスと比較した「市場調整後株主
リターン」を使っている。まあその妥当性は別として、結果はこうだ。
会長留任CEO:1.8%  そうでないCEO:3.1%
やはり自分を引き上げてくれた人が会長にいると、彼がやった施策を否定して改革する
なんてことは難しいんだろうなあ。

この結果をみても、日本の社長の一番の経営課題は、いかに後継者を育てて、
引き継いだ後はきっぱりと退場できるかということだと思う。
日本の会長のみなさん、あまり頑張らないように!!

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シーシェパード

シーシェパードの船長が逮捕された。調査捕鯨船に無断で侵入した罪とのことで、逮捕されニュースにする時点で彼らの宣伝活動をアシストする形になってしまうんだろうけど・・・

シーシェパードは、「世界の海洋における野生生物の棲息環境破壊と虐殺の終焉」をかかげるアメリカに本部を置く非営利組織だ。何年か前、アウトドアウエアのパタゴニアが支援していることで話題になったっけ。
行動はむちゃくちゃだが、欧米・オセアニアでは彼らの行動には同意的だそうだ。つまり捕鯨を止めさせるためには、彼らのやり方は仕方ないとみられているようだ。
何となく日本だけがターゲットになっていて、日本伝統の食文化を否定されているような気がしていたが、海外では鯨は本当に食べないんだろうか?

調べてみると、捕鯨推進国は日本以外にもけっこうあって、そのうち食糧にしているのはロシア、ノルウェー、アイスランド、フェロー諸島、カナダなどだ。アメリカの一部ネイティブインディアも鯨を食べるそうだ。(それなのに国としては反対しているイメージがあるが)
一方強く反対するのがオーストラリア、ニュージーランド、フランス、スペイン、インド、南米だ。 一方でただ一口に反対と言っても、シーシェパードのように海洋生態系保護+動物愛護といったものから、種の保護のために少数民族の伝統捕鯨は良いが大資本による捕鯨は反対とか、いろいろな論点があるらしい。
何となく日本たたきのようにこの問題をとらえていたが、ちょっと違うみたいだなあ。
日本人の反論としてよくあるものに、じゃあアメリカ人は牛を食べるが、それと何が違うんだ?鯨を助けても牛の数が減るだけだ、というものがある。これに対しては、単に鯨は知能が高いからかわいそうだということではなく、殺すのに時間がかかるので人道的に問題があるという議論があるようだ。

他に欧米では受け入れられなさそうな独特の食文化は何があるかなーと考えてみた。
例えば昆虫。これは今でもアジアでは広く食べられているし、日本でも長野などに行くとハチやカイコ、バッタが食べられている。中国では蛾も食べるし、南アフリカではカメムシを食べるそうだ。
あとは犬。韓国だけかと思ったら、中国でも食べられている。日本でも江戸時代までは食べられていたようだ。
もっと日本でも食べられているものでいうと馬。これはアメリカでは絶対に食べない。イギリス、フランスもそう。なぜか中国でも昔から食べられないそうだ。
こうしてみると、食文化でいうとどこか1つの国だけの独特の習慣というのはあまりないのかもしれない。やはり陸地を通じて地域から地域に広まっていくものだからだろうか。

ちなみに自分は結構その地ならではのものは食べるようにしてきた方かもしれない。
「ゲテモノ」に対する好奇心だけだけど。
韓国では、今はまた犬料理を出す店が増えて、ソウル市内でも500軒以上になったようだが、自分が食べたのは10年前くらい。ソウルオリンピックの時に市中心部から締め出されていて、ソウルの郊外にタクシーで食べに行った。たくさんのにんにくと煮込んであり、何とも高級スタミナ食といった印象だった。
日本でも年間5トン(2008年)輸入されていて、韓国料理店で食べられるけど、何となくタブー扱いだ。何年か前に犬の頭が大量に見つかり、殺害事件かと騒ぎになったが、料理用に仕入れた材料を韓国料理屋の従業員が捨てたものだとわかり、はからずも日本の李飲食店でも出していることが明るみに出たことがあった。

あとはケニアで、これは外国人向けの有名店なんだけど、象とかヌーとかが出てくるシュラスコを食べたこともある。焼いてあるから本当にその肉なのかどうかわかんなかったけど・・・唯一おいしかったのはヌー。水牛だからまあ牛肉か。
こういう観光客向けのものはあまり良くない気がするけど、文化として昔から存在する食文化は、無理して残すことはないが食べる人が今でもいるなら尊重すべきだと思う。

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コンビニ弁当の値下げ販売

先日、セブンイレブン・ジャパンが、フランチャイズ加盟店の「弁当、総菜の見切り販売・値下げ販売を不当に制限した」ということで、公正取引委員会から排除措置命令を出されたというニュースがあった。
セブンイレブンとしては、コンビニ=定価販売というポリシーを貫くため、フランチャイズ店に対して次回契約更新をしないことを示唆するなどして不当に圧力をかけた、ということだ。

コンビニ弁当はフランチャイズ加盟店の買い切りであり、その原価は全て加盟店が負担するしくみになっている。もちろん本部への返品はきかないので廃棄することになる。
それだったら値引きしてでも売ればいいし、どうせ捨てるなら安くしても売った方が、セブンイレブン全体としての売上も上がることになるから、お互いにとって得なんじゃないか?
普通に考えるとそうだ。
しかし、ずいぶん前のブログに書いたけど、セブンイレブンの売上は、加盟店の売上の合計ではない。セブンイレブンの売上は加盟店からのロイヤリティ収入。これがこの矛盾した状況を説明するカギになる。

(例)販売価格500円、原価300円の弁当があり、加盟店は本部に利益の50%をロイヤリティとして支払うケース。ここで加盟店は10個仕入れて、7個売れた。3個は廃棄した。

まず加盟店が本部に払うロイヤリティは・・・
(500×7-300×7)×50%=1400円×50%=700円
次に加盟店の利益は・・・
(500×7-300×10)=500円
ここからロイヤリティを取られるので、500円-700円=▲200円
つまり廃棄分の原価は全て加盟店が負担するので、赤字になってしまうのだ。

では廃棄する3個をもし半額の250円で売ったらどうなるか?
まず加盟店が本部に払うロイヤリティは・・・
(500×7+250×3-300×10)×50%=1250円×50%=625円
次に加盟店の利益は・・・
(500×7+250×3-300×10)=1250円
ここからロイヤリティを取られるので、1250円-625円=625円

そう、廃棄する弁当を原価割れで売った場合、加盟店の利益は当然増えるんだけど、逆に本部のロイヤリティ収入は減ってしまう、というのがトリックだ。
つまり本部としては廃棄してもらった方が利益が高くなる、というおかしな状況だった、というわけ。
そうなると本部としては、定価販売のイメージがどうのということではなく、利益に直結する話なのでなんとかしようとするだろうなあ。

そして今日、セブンイレブンが、廃棄する弁当の原価の15%を負担する、という対応策を打ち出した。この15%というのが微妙なところで、例えば上の例をとると、本部が手にするロイヤリティは700円-(300×3×15%)=565円に減少する。 一方加盟店は200円の赤字に「廃棄補助」が加わるので、-200+(300×3×15%)=▲65 まだ赤字だ。
つまりロイヤリティの計算は今までの仕組みのまま、補助金という形で少しだけ補填するという折衷案だ。
計算からもわかるとおり、これでは何の解決策にもならない。

このニュースを見て思い出すのは、そう新聞の「押し紙」。新聞社にとって売上は読者への販売数ではなく、販売店への出荷数というしくみ。ロイヤリティの仕組みは違うが、そのビジネスモデルに矛盾があるという点では共通しているように思う。
コンビニは加盟店の横のつながりが強くなり、ついに反逆した、という状況。新聞販売店はそのような動きになるんだろうか。今のところは補助が手厚いのでそんな話は聞かないのかな。

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マスコミに対するトヨタの報復

このニュースも最初に報じられてからさっぱり後が続かないなあ。
トヨタの奥田相談役が、12日に開かれた「公正労働行政のあり方に関する懇談会」で述べたコメントなんだけど、ニュースとしてはかなりのインパクトがあると思うんだけど・・・
TVによる年金問題の報道に対する彼の批判。
「あれだけ厚生労働省がたたかれるのはちょっと異常な話。正直言って私はマスコミに対して報復でもやろうかと。スポンサー引くとか。」

これはすごい発言だ。
1.広告宣伝費の力
何といってもスポンサーであることのパワーを自らの口で語ってしまっている。これはトヨタのトップとして失態だろう。

2.なぜ年金問題?
それはそうと、なぜその怒りの矛先が年金問題なのか。何かトヨタに問題でもあるのか?それとも単に奥田相談役の政治欲というか、政治を動かしているのは財界トップの自分だという自負の表れか、何なんだろう。
話はずれるが、ここのところの政府批判や不景気報道に対して、消費者の財布のヒモがしまるので広告主の業績にも影響があるということで、そうした報道を控えるようにと指示が出たTV局もあるという話だ。それに対する怒りならまだわかる。

3.ところで相談役が企業の広告宣伝費の決定権限を持っているのか?
1でトップと書いたが、奥田氏はもう相談役だ。相談されたらアドバイスする、という役職名じゃないのかな(笑)?トヨタの今年の広告宣伝費は、昨年の1083億円から3割程度削減されることがもう発表されている。この奥田氏の失言問題があまりマスコミで取り上げられないということは、まだまだトヨタにとって奥田氏はかつてのまま、「天皇」なんだろう。

トヨタというと以前にも何度か書いたが(なぜかこの話題を書くたびに文章が消えてしまったりするが・・・愛知県からのアクセスも増えるし・・・笑)、マスコミはあまりネガティブな記事を書けない企業だ。これは報道が広告料でなりたっているビジネスである以上、当然のことであるし、限界であると思う。
しかしそのパワーを本人がメディアの前でちらつかせてはいけないし、「トヨタはすばらしい」と思っている一般の人々にも疑問を抱かせることになるのではないだろうか。

若者の車離れが急速に進んでいる、という話もあまり報道されてこなかったが、今日のニュースの中にそれが出ていた。2009年の国内販売計画は150万台を割り、28年ぶりの低水準になるというニュースがそれで、原因として景気の悪化と若者の車離れがあげられていた。今までトヨタというと「世界最大の生産台数まであとわずか」という形で好調さが強調されてきたが、このニュースでは「今年の10月までの販売台数は5%ダウンの127万台で、このままいくと4年連続で前年割れにおわる」となっている。なんだ、国内は不振だったんだ、と改めて気がついた。

今日書きたかったことの2点目は「メディア・リテラシー」。数多い情報の中から正しい情報、有用な情報を自分で取捨選択できる能力のことだ。日本人は圧倒的にこれが弱いと思う。自分も含めてだけど。海外では学校の授業として取り上げられている国もあるのに。
2006年に読売新聞が行った調査では、新聞を大いに信頼できる+大体信頼できるとこたえた人の割合が、50歳代でなんと92%。一番低い20歳代で83%もいるそうだ。
TVよりも新聞を読もう、というくらいだから、日本人のメディアリテラシー教育はかなり難しいだろうなあ。

最後にもう1つ今日のニュースで気になる記事が。昨日放送されたサザエさん40周年スペシャル番組の視聴率が20.9%を記録し、ここのところ10%台後半と低迷していたが長寿番組の貫禄をみせつけた、という記事だ。んー、株価の底はまだ先かな。(意味がわからない方は10月30日のエントリーをご参考に。)

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今年ノーベル賞を受賞した日本人は4人?

今年もノーベル賞が発表され、物理学賞で日本人が3人、化学賞で1人が受賞した。
テレビでも連日取り上げられ、「何かと暗いニュースが多い中、希望が持てる」とか、「お家芸の物理はやはり強い」とか、さらには「日本のサイエンスの底力を示した」などと、お祭り騒ぎの様相だ。まるでオリンピックのメダル争いのようだ。
2001年の第2期科学技術基本計画で、「ノーベル賞クラスの日本人受賞者を50年で30人つくる」という目標が掲げられ、有望な技術への集中的な援助や、ロビー活動などが行われているので、その成果が早くも現れた、と言っているコメンテーターもいる。

以前、仕事でお付き合いのあった米国人医師が、本気でノーベル賞を目指していると言っていた。彼の師匠はノーベル賞を取っていて、「取り方は知っている」と言っていた。テーマ、発表の仕方、ロビー活動の仕方などだ。実際その後すぐに候補として名前があがり、最終候補3人によるプレゼンテーション(選考するカロリンスカ研究所で行われるらしい)まで行ったが、残念ながら選ばれることはなかった。多分この賞もいろいろな力学が働いているのかな。

さて本題。今までの文章に誤りがあります。
答えは1行目。物理学賞は日本人が3人じゃない。ええええ??と思ったが、海外のメディアはそう報じていない。
スエーデン王立アカデミーの発表は「米国人1人と日本人2人」なのだ。
そう、日本の施設に在籍する益川・小林両氏はもちろん日本人。もう1人のシカゴ大名誉教授の南部氏は米国人だそうだ。彼は研究のために米国に帰化し、米国籍を持っている。シカゴ大での研究も50年以上にわたる。
こうなると「日本の底力」でもないし、「日本人の底力」でもない。

ちなみに化学賞の下村氏は日本籍だが、プリンストン題、ウッズホール海洋生物学研究所、ボストン大名誉教授と米国での研究歴が長く、成果も米国でのものである。
これは「日本人の底力」ではあるが、「日本の底力」ではない。

つまり、今年のノーベル賞受賞者は、日本生まれが4人、日本人が3人、日本での研究者が2人というのが正確な表現になる。しかも日本での研究者2名はずいぶん昔の成果に対する賞なので、今年の成果をもって日本のサイエンスが安泰などとはとても言っていられないんじゃないだろうか。

1.大学教授の役割
大学の教員にはもちろん自分の研究というメインの役割の他にも、後進の育成・教育、さらには一般向けの啓蒙・教育といった役割があると思う。
海外の大学教授はこれらのバランスが非常にいい。アカデミックの世界で論文を出しながらも一般向けの本やコラムを書いている教授がたくさんいる。例えば今年のノーベル経済学賞のクルーグマンはそんな感じかな。
日本はというと、自分の研究と後進の育成を両立させている人はたくさんいると思うが(自分の恩師もそうだが)、そういう人は一般向けのメディアにはほとんど露出しない。メディアに出てくるのははきはきしゃべることができる一般受けのする学者ばかりだ。

2.一般向けのメディアへの貢献
今の特にテレビのニュースやまじめな番組はますますレベルが低下しているように思う。コメンテーターといってもその件の専門家というわけでもなく、ひどいときには視聴者とかわらないタレントだったりする。
某○○ステーションなどは専門家を呼んではいるものの、司会者が「難しい話はおいておいて、とにかくひどい話だ。国民を代表して私は怒っている。これは地球全体の破滅につながる。そうですよね?」みたいな振り方しかしないので、専門家を呼んでいる意味がほとんどない。
もっと現実で起きている問題を理論的に解説できる学者を出していかないと、どんどんレベルダウンしていくと思う。

3.頭脳の海外流出
もう1つ問題となるのは、有能な研究者の海外流出の問題だ。これは最近の日本のプロ野球とメジャーの抱える問題と似ている。
これはもう止めようがないし、止めるべきでもない。海外の大学との交流や研鑽をますます進めて(といっても海外の優秀な学生は交換留学先として日本を選ばないというのが実態だそうだが・・・)、海外で成果を出した日本人に、それを日本に還元してもらうようにするしかないだろう。

最後にこの文章にもう1つ、誤りではないが不正確な表現があります。
これは有名か。「ノーベル経済学賞」。これは正確にはノーベル賞ではなく、「アルフレッド・ノーベル記念経済学スエーデン銀行賞」という賞で、選考者がノーベル賞と同じなこともあって通称「ノーベル賞」といわれているだけです。
今年の受賞者、クルーグマンは受賞理由が今ひとつわからないなあ。しかもこの世界恐慌のタイミングだし。面白いのは、彼は「イグノーベル賞」も取っているということ。そんな人はかつていただろうか・・・??

あと、化学賞の下村氏の息子は、その道では名の知られる世界的なハッカーだそうだ。といっても悪いことをするわけではなく、悪いハッカーを捕まえたことで有名だとのこと。親としては複雑だろうなあ。

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タバコ:タスポと値上げの問題

明日から首都圏でも自動販売機でタバコを買う時にカードが必要になる。「タスポ」というそうだ。何の略かな、と思ったら「タバコ・アクセス・パスポート」の頭文字らしい。
自分はタバコを吸わないのでどうでもいいんだけど、最近タスポに値上げ議論にと何かとタバコが話題になるので、ちょっと考えてみた。
日本の成人の喫煙率はどれくらいかというと、2007年5月で男性40.2%、女性12.7%。世界的にみると、2002年のデータで全世界平均が男性39.4%、女性16.0%なので、男性は高く、女性は低い。面白いのは他の先進国。男性は日本人よりかなり低く、女性は逆にかなり高いのだ。米国が男女それぞれ25.7%、21.5%。英国は27.0%、26.0%。ノルウエーだと31.0%、32.0%で男女が逆転する。男女の差が小さいのが先進国の特徴だとすると、発展途上国の特徴は男高女低。まさに日本は喫煙率の傾向は発展途上国と同じだということができる。これはどうしてだろう?歴史的な背景か、遺伝上の特徴でもあるのだろうか?
県別にみて面白いのは北海道。女性の喫煙率が22.5%と、全国平均の12.7%をはるかに超えていて、しかも30年以上首位を守っている。男性も高く、2006年までは20年以上トップだったらしい。これはどうしてだろう?確かに多い気はするなあ。ちなみに2000年12月に、エアドゥが道民は喫煙率が高いことを理由にあげて喫煙席を設定したくらいだ。反対にあって翌年3月1日に廃止されてしまったけど。

1.タスポの問題
既に導入されている地域ではやはり問題が出ているようだ。例えば種子島での実験結果は、導入直後は未成年者の喫煙補導数が減ったものの、その後は逆に増加している。これはカードの売買や先輩・後輩での貸し借りなどが増えたせいである。それはそうだ。タスポは「タスポを発行してもらった人が成人である」ことの証明であり、「タスポを持って自動販売機でタバコを買おうとしている人が成人である」ことの証明には全くなっていない。こうしたICカードシステムは海外だとドイツで導入されているそうだが、どうして免許書ではダメだったのだろうか?免許書を持っていない人だけ、証明カードを発行する、という方が費用もかからずに済み、かつ未成年者に対する抑止力になったのではないだろうか。
それでも全員を対象にカードを発行したとなると、そこで誰かが得をしているとしか思えない。やはり搭載された電子マネー”ピデル”関連だろうか。

2.値上げの問題
タイミングを同じくして、財源確保と健康増進のため、1本1000円程度まで値上げすべきとの議論が始まっている。元は日本財団会長の笹川陽平氏が言い始めたもので、今では国会の超党派議連が発足している。
理屈は単純。日本のタバコは安い→だから喫煙率高い→値上げすればいい→税収はあがり、喫煙率も下がる、というわけだ。
ちなみに海外でのタバコ(20本1箱)の価格は米国817円、英国1160円に対し、日本は273円と確かに差は大きい。あれ、フランスは340円。これは例外かな?
これらの国にならい、日本もタバコを1箱1000円にすると、税収は9兆5000億円増える。ただ値上げすると吸わない人の増えるが(ファイザーのアンケートだと1箱500円になったら54%が、1000円で79%の人が禁煙するという結果が出ている)、仮に3分の1の消費量になっても3兆円以上の増収になるので、健康にもいいし、いいじゃないか、というわけだ。
ここに出てくる登場人物は喫煙者と国(税収の問題)だが、欠落しているプレーヤーが1人いる。JTだ。JTとしては消費量は売上げに響くし、税収がどうなるかは利益に響いてくる。つまり値段と喫煙率と税収をシミュレーションするためには、JTにとっての利益を考慮に入れなければならないが、その点に触れた議論は少ないように思う。
この点を考慮したレポートは某証券会社のJTに関するアナリストレポートで触れられていた。ここでは1989年から2006年の成年人口数とたばこの平均価格をベースに回帰分析を行っている。結論は1箱1000円にしてしまうと、需要は大きく減り、税収もJTの手取り分も大幅に減少してしまう。価格ごとに計算すると、1箱500円で1本あたりの税金を5円増税したときに、税収もJTの取り分も最大化している。従って今後の議論の後、1箱500円程度まで値上がりする可能性はあると思う。
どうしてJTの利益を考える必要があるか。それはJTの最大株主はだれか?を考えると明らかだ。それは「財務大臣」。先週発表された有価証券報告書を見ても50.02%の大株主だ。国が禁煙策を打ち出す一方で、タバコ会社の株主利益を追求しなければならない立場にいる、ということになる。一体どうする気だ!?!?

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事件、事故と報道

秋葉原で恐ろしい事件が起こった。心からご冥福をお祈りします。

そしてまたいつもの通り、連日報道が続いている。職場での行動、携帯サイトでのやりとり、親による謝罪、学生時代の友人の証言、文集に書かれているおかしな表現・・・そんなに皆興味があるんだろうか。少なくともマス・コミュニケーションで広く報道する意義があるんだろうかといつも思う。

特に最近少し減ったものの「硫化水素ガス」による自殺。続いて起こる背景には、報道を見ての連鎖反応もあると思う。ある朝のワイドショーではガスが家庭用品の組み合わせで簡単にできることまでばらしてしまっていた。ネットを見れば出てくることだが、報道してどうする?

自殺の報道に関しては、WHOがガイドラインを出している。遺書を公開しない、手段を詳細に報道しない、自殺の理由を単純化して報道しない、センセーショナルな報道を避ける、などだ。しかし日本のTVは全くこのガイドラインを無視しているようだ。やはり見ている側に「予備軍」がいることを前提として報道する、という点をしっかり意識しなければならないと思う。凶悪犯罪もそう。この一連の報道が、「予備軍」を刺激する可能性があることについて、マスコミは責任を持たなければならない。

犯行に使われたナイフがどうとか、携帯サイトへの書き込みがどうとか・・・そうなるとそのタイプのナイフを販売中止にして、携帯サイトへの書き込みは通報を義務付けて・・・という流れになっているが、再発を防ぐには他にやるべきことがあるはずだ。例えば、秋葉原には路上でのパフォーマンスを取り締まるためにたくさんの警官がいたはずだ。彼らがもっとできることはなかったのか?そいういったあたりを追求してもいいのではないだろうか。

TVに対する文句といえば、先日のW杯予選オマーン戦。アナウンサーはしきりに気温が高くて過酷な環境、まさに中東とのアウェーゲームなどとコメントしていたが、現地時間の夕方スタートなどという試合はあり得ないのだ。つまりオマーンチームにとっても経験したことのない暑さの中の試合だったことだろう。どうして夕方スタートなのか?それは日本時間では22時スタートがぎりぎりだったということだろう。そう、今回の試合開始時間は日本での放映権の関係で決まっていたということだ。つまり過酷なアウェーゲームを作り出したのは他でもない、マスコミということ。何やってるんだか・・・

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日本人は集団主義でない?

ちょっと前になるが、東京大学と京都光華女子大のグループが、心理学の実験の結果「日本人は集団主義」という見方は誤りで、周りへの同調しやすさは米国人並み(に低い)、という研究結果を発表した。近々「ジャーナル・オブ・クロスカルチュラル・サイコロジー」という専門誌に発表されるということだ。

実験は学生に一本の線を書いた紙と、長さの違う3本の線を書いた紙を同じサークルの学生5-9人に同時に見せ、サクラの中に1人だけ混ぜられた学生が、サクラたちの間違いに同調するかを調べる、というやり方で行われ、同調した結果は日米ほぼ変わらず25%だった。これをもって東大の高野教授は「日本人は和を乱すことを嫌い、近しい人の言葉には同調しやすいという通説は誤りで、米国が異なる文化を持つ国に投影したイメージを日本人自らが信じたと考えられる」とコメントしている。

この記事を読んで、今ひとつピンと来るものがないので、どういうことなのか考えた。

まず実験方法が適切なのかどうか。集団主義=自分の利益よりも所属する集団の利益を優先させる、これを実証するのには適切ではないと思う。サンプリングとしてもおかしいし、サークルがどの程度密度の濃い集団かどうかもわからないし。

そこを議論しても本質的ではないので、実験の仕方はさておき、この記事の背景には、「米国=個人主義、日本=集団主義」という前提条件がある。

自分は日本企業、外資系企業の両方に勤務した経験があるが、どうもこの前提条件はピンと来ない。米国人は確かに個人の利益を日本人よりも重視するが、会社全体の利益に貢献する意識も日本人以上に強い。有事の際の団結力(一種の思考停止状態だけど)は日本人より上ではないだろうか。

一方で日本人は集団主義というのはちょっと違うと思う。「自分ひとりくらい誤ったことをしてもいいだろう」と考える人は米国人よりもむしろ多いと思うし。

この点について、北大の山岸俊男教授は面白い見解を示している。まとめるとこんな感じ。

1.日本人は自分たち日本人のことを集団主義的な傾向があると考えているが、自分だけは例外と考えている集団である。

2.内心では「個人主義でいい」と思いながら、「周囲は集団主義的に考えているに違いない」と思い込んで行動する結果、社会全体としては集団主義的な傾向を示す。

3.この背景には「ムラ社会」という歴史がある。つまりメンバーが相互に監視し、何かあったときに制裁を与える仕組みが古くから存在するが、その反面監視するシステムがないと「自分1人くらいいいだろう」と考える。

これはいわゆる伝統的な日本企業のことを考えると理解しやすいのではないだろうか。つまり皆で遅くまで残業し、さらにはその後に飲みに行って「苦労」を共有し、そこから外れる人は「協調性、団結心がない」として非難してきた。ただ近年は残業も減らせと言われ、会社と個人の「公私のけじめ」が明確になるにつれ、相互監視システムがなくなり、組織システムを欧米化したわりにはうまく機能していない、ということが起こっているのだろう。

もちろんこれは古い世代にばかり当てはまるのではない。例えば自分より若い世代でいうと、最近就職活動の学生の服装が以前よりも画一化されていることにお気づきだろうか?以前であれば紺とかグレーのスーツもあったと思うが、今は皆濃紺から黒である。男子は白ワイシャツにストライプのネクタイに布かばん、女子は髪をとめ、白の大きな襟のブラウスを着て襟を出し、黒い靴を履く。これだけ同じ格好をして「自分は人とは違う」ことをアピールするのだから、何かブラックジョークみたいな感じだ。

この記事の何がおかしいか。それは日本人は集団主義か、個人主義か、その問題設定自体がおかしいのだろう。日本人は恐らく個人レベルでは自分の利益を優先する個人主義であるが、集団の考え方には従って黙っているという点では「集団主義」でもある。つまりどちらかに分けようとすること自体がナンセンスであり、もう少し違った切り口で分析しないと説明ができないんだと思う。

まあそもそも米国人と日本人という、世界からみると「国際的でない」2カ国の比較自体が「クロスカルチュラル・サイコロジー」というジャーナル名から考えるとナンセンスかも。

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日銀総裁

日銀総裁人事がここにきてニュースになっている。福井総裁の期限が切れる19日がいよいよ迫ってきたためだ。

今日、参議院で武藤副総裁の総裁昇格と伊藤教授の副総裁就任が否決された。この人事がなぜこんなにもめて、ニュースになるのか。それは日銀総裁人事は衆議院と参議院の両院で可決されなければならないため、今のねじれ国会状態である限り、民主党が反対すれば絶対に通らないためだ。

この規定はねじれ国会になったときから話題になっていたので、調整の時間は十分にあったはずだ。

しかも今は世界経済(米国経済)の緊急事態だ。各国の中央銀行が連携をとり、世界全体の危機に対処しているその最中だ。

民主党の反対の理由は、武藤副総裁は元財務事務次官なので、財政・金融分離の原則に違反する、ということだ。まあ仮にそうだとして、伊藤教授の反対理由は、「経済財政諮問会議のメンバーで、格差社会を促進した人物だから」とのことだ。これで、民主党は何の主義・主張もなく、単にねじれ国会状態を利用して対自民党のパフォーマンスをやっているだけなのがわかってしまった。事実、民主党の某幹部が「武藤総裁に同意して日和見したとメディアに書かれたくない」とコメントしている。

ではいったい民主党は誰が適任だと考えるのか?まさに「反対するなら代案を出せ」だ。

自民党としてはこうなると別の候補を出すしかないだろう。榊原氏か?民主は財政・金融分離の原則を持ち出して反対するのだろうか。

ただ、次期総裁は間違いなく金利を上げるべきか下げるべきかという正解のない意思決定を迫られる局面がくるだろうから、このタイミングで引き受ける人はそういないだろう。となると、民主党にとっての着地点は、自民党が武藤総裁を再提案し、その決議を欠席する。そうして自民党が強行採決したことにして、何か問題があったときに自民党の任命責任を追及する。今の民主党にできるパフォーマンスはこの程度じゃないだろうか。

最悪のシナリオは日銀総裁不在だ。民主党幹部はそれでも仕方ない、と言っているが、それはありえない。世界経済の緊急事態の中、幼稚な政治パフォーマンスに終始していると本当に世界の笑いものになってしまう。事実、ついさっきのBBCニュースでも、総裁不在はありえない選択だ、と伝えられていた。となると福井総裁緊急留任というのも1つの選択肢だろう。

先週あたりから連日報道されてきた日銀総裁「チキンレース」も、いつのまにかマスコミは自民党の味方になってしまった。民主党の悪い癖は、世論の動向を左右する、ちょっとしたタイミングをいつも逸していることじゃないだろうか。さてこれから福井総裁の期限が切れる1週間、自民、民主のパフォーマンスと海外メディアの批評ぶりに注目だ。

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首相と女将の記者会見

昨日、興味深い記者会見のニュースが2件あった。

1.福田首相:世界同時株安に関し、日本の対応を問われて:

「現状を冷静に把握することが大切だ。他のアジアの国も大幅に下げている。気がかりだが大元は米国の問題。米国の対応についてどのように(マーケットが)受け止めているかの表れだろう。」

日本のことを聞かれているのに、全く答えになっていない。米国が株安に連鎖して(かどうかはわからないが)日本の株安について聞かれているのに・・・。「どう考えるか?」「冷静に考えるのが大切」では会話になっていない。後半部分も当たり前の話なので、何を聞かれてもこのように答えるように事務方から言われているのだろう。

昨日は日本のマーケットは3.9%ダウン、年初から2000円のダウンになるが、あくまでこれが日本の経済情勢と関係なく、米国の景気の影響を受けているのであれば、その旨を強いメッセージとして発信するのが政府の役割ではないだろうか?ニュースでは株価下支えのためにゆうちょ、かんぽのPKO(Price Keeping Operation)が行われているのではないか、とも伝えられている。つまり国民から集めた金で株を買い、株価を上げているということだ。もしそうだとすると、もうこの2社は民営化した1事業体なのだから、10年前のように政府の意思で自由に運用することはできないんじゃないだろうか。そのような小手先のオペレーションではなく、もう少し大きな視点、メッセージを政府には発信してほしい。

それにしても心配なのは福田首相のコメントだ。もうやけくそか?

2.船場吉兆の女将:新社長就任にあたって:

「船場吉兆の火を消したくなかった。頑張っているので応援してください、と父に手を合わせている」

以前問題になったときの記者会見で、長男の取締役に隣からごちゃごちゃ言っていたあの人だ。「父に申し訳ない」と涙を流していたが、この人の頭の中は父しかいないのだろう。謝るべきは信頼を裏切られたお客さんなのに。

そして昨日の記者会見。会見の冒頭には、もちろん一連の問題への謝罪があったが、やはり彼女が関心を持っているのは、船場吉兆の「火」。そして「父」。あいかわらずお客さんのことは2の次のようだ。こうした人がトップにいる以上、船場吉兆は何もかわらないだろう。

ということで記者会見2件。メッセージというのは本当に大切だし、記者会見は後から訂正が効かない分、よーく考えて対処しなければならない。

ところで余談だが、ここのところ自分の書いたブログの記事が、2件たてつづけに半分から後ろがなぜか消えてしまっている、ということが起きた。1件はまあいいか、と思って削除したけど、同じようなことが続いたので2件目は書き足して再アップしてみた。まあ何かの不具合なんだろうけど、2件とも某T社のことを書いたものだったのは、偶然の出来事なんだろう・・・

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