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キリンとサントリーが破談に

昨年7月28日にもブログで取り上げたキリンとサントリーの経営統合の話。
昨年末から1月にかけても交渉がうまくいっていないことが度々伝えられてきたが、とうとう今日付けで交渉終了となった。

キリンの言うところの理由は、新会社の独立性、透明性を担保できないという点。サントリーの言うところの理由はズバリ統合比率に納得がいかないという点だ。

7月のブログで書いたのは、サントリーにとっては上場になるので、内部統制の点でそれに耐えることができるのか?という点。あとは対等合併を目指すと言っているがファイナンス上はキリンによるサントリー買収であり、一方で大株主はサントリーの創業者になるという状況で、統合比率はどう算定するのか、という点だった。みごとにこれらが解決されることなく破断になったということだ。
今日のニュースでは「最後の詰めの部分で破談になった」という表現をしていた報道があったが、最後の詰めどころか、最初の一歩でもうずれていたということだろう。

しかし今日の両社の記者会見はみごとに2つの会社の差が表れている。
キリンはすっかりグローバル基準のパブリックカンパニーという感じ。さすがにEVAを導入して緻密な利益管理をする会社だ。質疑応答も十分に練られている感じだし、本当に教科書的なIRだ。
一方のサントリー。「守秘義務があるのであまり答えられない」と前置きしつつこちらは言いたい放題だ。
「統合比率は50:50の対等合併が基本だが、50:50ではなく具体的な数字をあげて交渉した。その数字に自信があったので固執した。」と言っている。昨年末の報道で、キリン側のファイナンシャルアドバイザーが算定した合併比率はキリン1:サントリー0.5、一方のサントリー側が1:0.9と報道されていたが、それに近い話のようだ。
固執した数字がいくらなのかはわからないが、佐治社長は「サントリーの大株主の寿不動産の持ち株は最低3分の1超となって当然で、それがなければ最初から交渉していない」とまで言っている。
こんなことは最初からわかっていたことで、キリンは3分の1超は寿不動産が持つことは基本的に承諾した上での話ではなかったんだろうか?
また佐治社長は、キリン社長が経営の透明性を担保できないとコメントしたことに対し、「経営は透明に決まっている。サイレントマジョリティか、いざとなれば意見を言うかの差だけだ」「オーナー会社の良さとパブリックカンパニーの良さを半分ずつ取るつもりだった」と述べている。
これは到底パブリックカンパニーになろうとしている経営者のコメントとは思えない。やはり外部の株主からのプレッシャーというのを全く理解できないんだろうし、上場することは100%パブリックになるということで、全てをさらけ出さなければならないことは理解できないんだろう。
ということで、今回のMAのポイントはやはり上場企業による非上場企業の買収が、企業価値算定と統合比率の算出の面、そして非上場企業の株主の持ち株比率のコントロールの面からいかに難しいかが、当初の予想通り明らかになった、というところだろう。

こんなに初歩的なところで頓挫したということは、当初この統合の話が報道されたときは日経新聞も十分に取材した記事を載せていたので、ある程度基本線の合意をうけて進んでいるものと思ったけど、実際はそんなに両社に戦略上の余裕はなく、トップ同士の意気投合レベルで発表したのかなあ、という気もしてくる。
あと、キリンは本当に自社の事業展開に危機感を持っていたんだろうけど、サントリーは自社に対する誇りというかプライドが、危機感よりも強かったんだろうなあ、と思う。

今後、キリンは相手を変えてやはり大きなMAを仕掛けてくるだろう。ひょっとするとアサヒかもしれないけど。もしくは海外の上場企業。もう非上場で内部統制の整っていない企業はごめんだろう。
一方でサントリーは、社長もコメントしているとおり、海外で提携先を探すことになるだろう。ただし、サントリーが買収する形で今の経営形態を維持できる先を探すだろうから、世界規模で統合が進む食品セクターでは中途半端なMAに終わってしまうかもしれない。
オーナー企業と上場企業の良さをミックスすることなんてもう考えない方がいいだろう。

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