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コンビニ弁当の値下げ販売

先日、セブンイレブン・ジャパンが、フランチャイズ加盟店の「弁当、総菜の見切り販売・値下げ販売を不当に制限した」ということで、公正取引委員会から排除措置命令を出されたというニュースがあった。
セブンイレブンとしては、コンビニ=定価販売というポリシーを貫くため、フランチャイズ店に対して次回契約更新をしないことを示唆するなどして不当に圧力をかけた、ということだ。

コンビニ弁当はフランチャイズ加盟店の買い切りであり、その原価は全て加盟店が負担するしくみになっている。もちろん本部への返品はきかないので廃棄することになる。
それだったら値引きしてでも売ればいいし、どうせ捨てるなら安くしても売った方が、セブンイレブン全体としての売上も上がることになるから、お互いにとって得なんじゃないか?
普通に考えるとそうだ。
しかし、ずいぶん前のブログに書いたけど、セブンイレブンの売上は、加盟店の売上の合計ではない。セブンイレブンの売上は加盟店からのロイヤリティ収入。これがこの矛盾した状況を説明するカギになる。

(例)販売価格500円、原価300円の弁当があり、加盟店は本部に利益の50%をロイヤリティとして支払うケース。ここで加盟店は10個仕入れて、7個売れた。3個は廃棄した。

まず加盟店が本部に払うロイヤリティは・・・
(500×7-300×7)×50%=1400円×50%=700円
次に加盟店の利益は・・・
(500×7-300×10)=500円
ここからロイヤリティを取られるので、500円-700円=▲200円
つまり廃棄分の原価は全て加盟店が負担するので、赤字になってしまうのだ。

では廃棄する3個をもし半額の250円で売ったらどうなるか?
まず加盟店が本部に払うロイヤリティは・・・
(500×7+250×3-300×10)×50%=1250円×50%=625円
次に加盟店の利益は・・・
(500×7+250×3-300×10)=1250円
ここからロイヤリティを取られるので、1250円-625円=625円

そう、廃棄する弁当を原価割れで売った場合、加盟店の利益は当然増えるんだけど、逆に本部のロイヤリティ収入は減ってしまう、というのがトリックだ。
つまり本部としては廃棄してもらった方が利益が高くなる、というおかしな状況だった、というわけ。
そうなると本部としては、定価販売のイメージがどうのということではなく、利益に直結する話なのでなんとかしようとするだろうなあ。

そして今日、セブンイレブンが、廃棄する弁当の原価の15%を負担する、という対応策を打ち出した。この15%というのが微妙なところで、例えば上の例をとると、本部が手にするロイヤリティは700円-(300×3×15%)=565円に減少する。 一方加盟店は200円の赤字に「廃棄補助」が加わるので、-200+(300×3×15%)=▲65 まだ赤字だ。
つまりロイヤリティの計算は今までの仕組みのまま、補助金という形で少しだけ補填するという折衷案だ。
計算からもわかるとおり、これでは何の解決策にもならない。

このニュースを見て思い出すのは、そう新聞の「押し紙」。新聞社にとって売上は読者への販売数ではなく、販売店への出荷数というしくみ。ロイヤリティの仕組みは違うが、そのビジネスモデルに矛盾があるという点では共通しているように思う。
コンビニは加盟店の横のつながりが強くなり、ついに反逆した、という状況。新聞販売店はそのような動きになるんだろうか。今のところは補助が手厚いのでそんな話は聞かないのかな。

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受信: 2009年6月24日 (水) 04時01分

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