餃子の王将
最近、テレビ東京のカンブリア宮殿で餃子の王将が取り上げられていた。この不況の中、直営店全店で黒字を達成しているらしい。
12月末までの四半期決算をみると、売上高が407億円で前年比+9%、営業利益が47億円で+15%、純利益が26億円で+20%だ。
例えば同じ定食チェーンの大戸屋は、売上高が132億円で前年比+2%だが、営業利益は2億円で-51%、純利益は3千万円で-87%だ。これをみても好業績が際立っている。
1.収益性が高いのはなぜか?
上に書いたとおり、大戸屋と比べると収益性が高い。
番組中では国産豚肉、国産キャベツを使い、毎朝工場から店舗に皮と具が届けられ、店舗で包んで焼く、というように味にこだわっていることが強調されていたが、そうはいっても使う材料の品目数は少ないし、そんなに高い食材でもない。P/Lを見ると原価率は31%。大戸屋の38%と比較しても安価だ。
そして販管費の対売上高比率も大戸屋の61%に対し、王将は57%。ローコストのオペレーションが徹底されているのだろう。そういえばそんなに場所代が高そうな駅には王将はないかな。渋谷は別だけど。
そしてもう1つ、価格ではないだろうか。そう、意外に高いという意味で。
周囲の人に王将の話をふってみると「安い」という人が多かったんだけど、王将の客平均単価はこの1月の実績が860円。意外にも金を使っている。餃子定食だって700円以上するし。大戸屋は明記していないが、情報をあわせると700円台。
昨年は餃子も値上げしているし、マクドナルドで話題になった価格の地域格差だって王将では依然から存在する。餃子1人前(6個)は東日本は231円で西日本は210円だ。
2.なぜ前年比プラスを続けられるのか?
王将は既存店売上高は1年以上プラスを続けている。直営店にいたっては65か月以上だ。王将はチェーン店でありながらマニュアルというものがなく、メニューや価格などは店長にかなりの裁量権がある。彼らを指導するエリアマネージャーもいて、彼らがまた店長にはっぱをかけている。
だが、1つ大きいポイントはインセンティブの存在だろう。各店舗では前年同月の売り上げをベースにして売上目標が設定され、それを超えた分の30%が各店舗に渡され、店舗の従業員全員で分け合うというインセンティブがある。これが前年比をずっと越えようとするパワーの正体だろう。
3.王将のライバルはどの業態か?
やはりこの目で見てみなくては、ということで今夜食べに行ってみた。
渋谷店に行ってみたのだが、20時ころ、10人以上の行列ができていた。やはり好調のようだ。客は男女もばらばら。年齢もばらばら。たくさん食べそうな学生、若いサラリーマンもいれば、若い男女のグループ、女性どうし、飲み中心のおじさんグループ、若いファミリーと、いった具合で、実にバラエティに富んでいた。
先ほど「同じ定食チェーン」と書いたが、全然違う。ライバルは大戸屋であり、吉野家であり、和民であり、街の中華食堂であり・・・
肝心の味はというと、あれこんなもんか、という感じ。ごはんはべちゃっとしているし、餃子も皮はうすくて具の味が濃いーし。並んでいる人が「たまに食べたくなるんだよな」と言っていたが、若いころ食べた味だから、ということか。
王将というと、そんなにCMを見たことはないが定期的にテレビでいろいろな形で取り上げられる。カンブリア宮殿もそうだけど、ユニークな経営についてもちょくちょく出て、王将のウェブサイトではそれがまとめられている。宣伝というよりはパブリシティを上手に使って、「懐かしい味、おいしい味」というイメージをインプットすることに成功しているのかもしれない。
自分自身は若いころ王将に行ったという思い出もないので食べてもピンとこなかったし、餃子とごはんとスープとキムチで740円は別に安くもないし。餃子は12個でボリュームたっぷりではあったけど、自分には多すぎだったな。
まあそれはさておき、経営としては非常にユニークは外食店だと思う。
ところでどうして自分は若いころ王将に行くことがなかったのか?
答えは簡単。地元に王将がなかったから。(笑)
王将は今でも北海道、青森には1軒もないのだ。
というのも先に書いたとおり、王将の餃子は皮と具を工場で作り、夜に配送して全店舗に朝につくようにしている。現在工場があるのは京都、千葉、福岡。なので千葉から青森、北海道までは生の具材を配送することができないので、進出できないとのこと。
私の地元、北海道に店を出したら絶対流行りそうなのになあ・・・
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