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2009年2月

格差社会と子供の貧困

日本は総中流社会だと思っている人はいまだに多いと思う。
しかし、データ上では世界の中でも格差が大きい国だ。
もう少し正確に言うと、低所得者の比率が高いということ。
所得が分布の中央値の半分に満たない人の比率は15%で、OECD30カ国の中ではメキシコ、トルコ、米国に次いで3番目。
ということは親の収入に頼る子供も、格差が大きいということになる。これが「子供の貧困」の問題だ。

国立社会保障・人口問題研究所の阿部さんが岩波新書「子供の貧困」や、日経新聞の経済教室で書いていたが、子供が置かれる経済環境は、学力や大人になってからの所得に大きく影響を与えているとのこと。
例えば子供の学力は親の学歴、所得が高いほど高くなっている。親の所得が低いほど、子供は学校が居心地が悪いと感じ、勉強に対する意欲は低い。
子供期の貧困経験が大人になってどのように影響するかは欧米で研究が進んでいて、特に0歳から6歳の乳幼児期の貧困は、成長してからの学歴、雇用、収入、犯罪率などに大きな影響を与えているそうだ。

相対的貧困率が高い一因として、若い時は給与が低く、40歳くらいから急上昇する、という賃金体系はあるだろう。合計すると平均は一緒でも、若い層は極端に所得が低いので。
それを差し引いても、政府の取り組みは不足している。

例えばイギリスは1999年にブレア前首相が2020年までに子供の貧困を僕滅すると宣言し、手当の拡充や税制面での優遇などの手が打たれている。
一方で日本はというと、子供の問題=少子化という感じだ。子供の貧困の問題がある以上、仮に数を増やしても社会は豊かにならないように思う。
1972年に発足した児童手当は、当初は養育費の半分をカバーする設計だったそうだが、今では何の足しにもならない額だ。
教育費も、先進諸国に比べるとかけられている額が低い。国からの給付も学校に対するものがメインで、子供に直接払われてはいない。
政府は子供の貧困対策として、広く薄くばらまくのではなく、問題を抱える低所得者層に手厚く金をかける必要があると思う。格差があること自体が問題なのではなく、低い層がたくさんいることが問題なはずだからだ。

1つ、阿部さんの調査で面白いものがある。「最低限の生活水準」とはどのレベルかという意識を、海外と日本で比較したものだ。
これによると、日本人が考える「最低限の生活水準」は欧米と比較すると非常に低いレベルとのこと。つまり生きるのに必要な食べ物や衣服があるのならば、それは貧困ではないという意識が強い。英国では84%の市民が「希望するすべての子供に与えられるべき」と答えた「おもちゃ」は、日本で与えられるべきと答えた市民はなんと12%。子ども用の本は英国が89%、日本が51%。
これはなかなか根が深い問題だ。海外と比較すると子供の貧困は問題なのだが、当の日本人は貧困だと思っていないのだ。むしろ子供にはぜいたくはさせべきでない、という意識の方が良しとされているように思う。

先日、日本の学生が中国や韓国の学生よりも勉強時間が短く、逆に勉強がきついと思っているとのデータが発表されていた。これらはゆとり教育の弊害とされていて、最近は逆に学校の勉強時間も増やす傾向にあるようだが、子供の貧困の問題が関連しているとすると学校のカリキュラムを厳しくしても学力はそれほど向上しないだろうし、大人になって貧困に苦しむことには変わりないのかもしれない。
阿部さんも述べているとおり、「子供の数を増やす」のではなく、「幸せな子供の数を増やす」ことをまずは目標にするべきだろう。

どうして子供の話題かというと、先週2人目の子供が生まれたから。
今までは夫婦+1という感覚だったのが、何となく「家族」という感じになり、こういう話題にも敏感になっているのかもしれないなあ・・・。

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餃子の王将

最近、テレビ東京のカンブリア宮殿で餃子の王将が取り上げられていた。この不況の中、直営店全店で黒字を達成しているらしい。

12月末までの四半期決算をみると、売上高が407億円で前年比+9%、営業利益が47億円で+15%、純利益が26億円で+20%だ。
例えば同じ定食チェーンの大戸屋は、売上高が132億円で前年比+2%だが、営業利益は2億円で-51%、純利益は3千万円で-87%だ。これをみても好業績が際立っている。

1.収益性が高いのはなぜか?
上に書いたとおり、大戸屋と比べると収益性が高い。
番組中では国産豚肉、国産キャベツを使い、毎朝工場から店舗に皮と具が届けられ、店舗で包んで焼く、というように味にこだわっていることが強調されていたが、そうはいっても使う材料の品目数は少ないし、そんなに高い食材でもない。P/Lを見ると原価率は31%。大戸屋の38%と比較しても安価だ。
そして販管費の対売上高比率も大戸屋の61%に対し、王将は57%。ローコストのオペレーションが徹底されているのだろう。そういえばそんなに場所代が高そうな駅には王将はないかな。渋谷は別だけど。
そしてもう1つ、価格ではないだろうか。そう、意外に高いという意味で。
周囲の人に王将の話をふってみると「安い」という人が多かったんだけど、王将の客平均単価はこの1月の実績が860円。意外にも金を使っている。餃子定食だって700円以上するし。大戸屋は明記していないが、情報をあわせると700円台。
昨年は餃子も値上げしているし、マクドナルドで話題になった価格の地域格差だって王将では依然から存在する。餃子1人前(6個)は東日本は231円で西日本は210円だ。

2.なぜ前年比プラスを続けられるのか?
王将は既存店売上高は1年以上プラスを続けている。直営店にいたっては65か月以上だ。王将はチェーン店でありながらマニュアルというものがなく、メニューや価格などは店長にかなりの裁量権がある。彼らを指導するエリアマネージャーもいて、彼らがまた店長にはっぱをかけている。
だが、1つ大きいポイントはインセンティブの存在だろう。各店舗では前年同月の売り上げをベースにして売上目標が設定され、それを超えた分の30%が各店舗に渡され、店舗の従業員全員で分け合うというインセンティブがある。これが前年比をずっと越えようとするパワーの正体だろう。

3.王将のライバルはどの業態か?
やはりこの目で見てみなくては、ということで今夜食べに行ってみた。
渋谷店に行ってみたのだが、20時ころ、10人以上の行列ができていた。やはり好調のようだ。客は男女もばらばら。年齢もばらばら。たくさん食べそうな学生、若いサラリーマンもいれば、若い男女のグループ、女性どうし、飲み中心のおじさんグループ、若いファミリーと、いった具合で、実にバラエティに富んでいた。
先ほど「同じ定食チェーン」と書いたが、全然違う。ライバルは大戸屋であり、吉野家であり、和民であり、街の中華食堂であり・・・
肝心の味はというと、あれこんなもんか、という感じ。ごはんはべちゃっとしているし、餃子も皮はうすくて具の味が濃いーし。並んでいる人が「たまに食べたくなるんだよな」と言っていたが、若いころ食べた味だから、ということか。
王将というと、そんなにCMを見たことはないが定期的にテレビでいろいろな形で取り上げられる。カンブリア宮殿もそうだけど、ユニークな経営についてもちょくちょく出て、王将のウェブサイトではそれがまとめられている。宣伝というよりはパブリシティを上手に使って、「懐かしい味、おいしい味」というイメージをインプットすることに成功しているのかもしれない。
自分自身は若いころ王将に行ったという思い出もないので食べてもピンとこなかったし、餃子とごはんとスープとキムチで740円は別に安くもないし。餃子は12個でボリュームたっぷりではあったけど、自分には多すぎだったな。
まあそれはさておき、経営としては非常にユニークは外食店だと思う。

ところでどうして自分は若いころ王将に行くことがなかったのか?
答えは簡単。地元に王将がなかったから。(笑)
王将は今でも北海道、青森には1軒もないのだ。
というのも先に書いたとおり、王将の餃子は皮と具を工場で作り、夜に配送して全店舗に朝につくようにしている。現在工場があるのは京都、千葉、福岡。なので千葉から青森、北海道までは生の具材を配送することができないので、進出できないとのこと。
私の地元、北海道に店を出したら絶対流行りそうなのになあ・・・

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