格差社会と子供の貧困
日本は総中流社会だと思っている人はいまだに多いと思う。
しかし、データ上では世界の中でも格差が大きい国だ。
もう少し正確に言うと、低所得者の比率が高いということ。
所得が分布の中央値の半分に満たない人の比率は15%で、OECD30カ国の中ではメキシコ、トルコ、米国に次いで3番目。
ということは親の収入に頼る子供も、格差が大きいということになる。これが「子供の貧困」の問題だ。
国立社会保障・人口問題研究所の阿部さんが岩波新書「子供の貧困」や、日経新聞の経済教室で書いていたが、子供が置かれる経済環境は、学力や大人になってからの所得に大きく影響を与えているとのこと。
例えば子供の学力は親の学歴、所得が高いほど高くなっている。親の所得が低いほど、子供は学校が居心地が悪いと感じ、勉強に対する意欲は低い。
子供期の貧困経験が大人になってどのように影響するかは欧米で研究が進んでいて、特に0歳から6歳の乳幼児期の貧困は、成長してからの学歴、雇用、収入、犯罪率などに大きな影響を与えているそうだ。
相対的貧困率が高い一因として、若い時は給与が低く、40歳くらいから急上昇する、という賃金体系はあるだろう。合計すると平均は一緒でも、若い層は極端に所得が低いので。
それを差し引いても、政府の取り組みは不足している。
例えばイギリスは1999年にブレア前首相が2020年までに子供の貧困を僕滅すると宣言し、手当の拡充や税制面での優遇などの手が打たれている。
一方で日本はというと、子供の問題=少子化という感じだ。子供の貧困の問題がある以上、仮に数を増やしても社会は豊かにならないように思う。
1972年に発足した児童手当は、当初は養育費の半分をカバーする設計だったそうだが、今では何の足しにもならない額だ。
教育費も、先進諸国に比べるとかけられている額が低い。国からの給付も学校に対するものがメインで、子供に直接払われてはいない。
政府は子供の貧困対策として、広く薄くばらまくのではなく、問題を抱える低所得者層に手厚く金をかける必要があると思う。格差があること自体が問題なのではなく、低い層がたくさんいることが問題なはずだからだ。
1つ、阿部さんの調査で面白いものがある。「最低限の生活水準」とはどのレベルかという意識を、海外と日本で比較したものだ。
これによると、日本人が考える「最低限の生活水準」は欧米と比較すると非常に低いレベルとのこと。つまり生きるのに必要な食べ物や衣服があるのならば、それは貧困ではないという意識が強い。英国では84%の市民が「希望するすべての子供に与えられるべき」と答えた「おもちゃ」は、日本で与えられるべきと答えた市民はなんと12%。子ども用の本は英国が89%、日本が51%。
これはなかなか根が深い問題だ。海外と比較すると子供の貧困は問題なのだが、当の日本人は貧困だと思っていないのだ。むしろ子供にはぜいたくはさせべきでない、という意識の方が良しとされているように思う。
先日、日本の学生が中国や韓国の学生よりも勉強時間が短く、逆に勉強がきついと思っているとのデータが発表されていた。これらはゆとり教育の弊害とされていて、最近は逆に学校の勉強時間も増やす傾向にあるようだが、子供の貧困の問題が関連しているとすると学校のカリキュラムを厳しくしても学力はそれほど向上しないだろうし、大人になって貧困に苦しむことには変わりないのかもしれない。
阿部さんも述べているとおり、「子供の数を増やす」のではなく、「幸せな子供の数を増やす」ことをまずは目標にするべきだろう。
どうして子供の話題かというと、先週2人目の子供が生まれたから。
今までは夫婦+1という感覚だったのが、何となく「家族」という感じになり、こういう話題にも敏感になっているのかもしれないなあ・・・。
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