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2009年1月

日本経済は他のどの先進国よりも急速に縮小している

今日の麻生首相の演説の中に、「日本は他国と比較して金融危機による傷みは小さいので、バブルを乗り切った実績のある日本が、現在の経済危機を乗り切れないわけがない」という趣旨の発言をしていた。まあ今日が2008年10月だったらその通りかもしれない。がその後11月、12月、1月に日本に何が起きているのか、首相は知らないのかもしれない。

以前にも書いたことがあるが、日本のことを一番鋭く、正確に分析しているメディアは、英国のEconomist誌だと思う。1月24日号の記事「Early in, Early out」の見出しが、今日のブログのタイトルだ。つまり「金融危機の嵐に直撃されなかった日本経済が、今ほかの先進国よりも急速に縮小している」という内容だ。内容はこんな感じ。

11月の輸出は前月比27%ダウン、12月にはさらに悪化して35%ダウン。イメージは対米輸出の悪化だけど、対米は36.9%。一方で対中国も35.5%であるので、対米に限った話ではない。12月には景気の先行指標とされる工作機械受注率が前年比で何と72%ダウンしている。
2002年から長く続いた「成長」を支えた輸出が、自動車と消費者向けハイテク製品に偏っていたこともあり、この2領域の大きなダウンが輸出を直撃している。

そして予想外なのが、日本国民の心理的打撃の強さ。つまり消費者の需要が急速に冷え込んでいる。自動車の国内販売は前年比20%ダウンし、百貨店売上も10%ダウンしている。
もう1つ逆に予想外なのが、日本企業の柔軟性。今までの不況時には決して手をつけなかった余剰人員、生産能力の調整に非常に迅速に手をつけている。その意味での「柔軟性」だ。
戦後の日本が輸出に頼って成長してきた、その成長モデルはこれで崩壊したといえるが、今の日本経済にとって最大の問題は政治の機能不全だろう。
2兆円という相対的に小さな景気刺激策(交付金のこと)の是非について、与野党間、あげくのはてには与党内で議論をしているが、JPモルガンのアナリストいわく今の需要減に対抗する刺激策には4倍の規模の対策が必要だとしている。しかもこの2兆円の大部分は、使われることもなく消費者のポケットに入って終わりである。

政府が大胆な経済対策をうてない背景の1つには、バブル以降に積み重なった債務がある。でも金利は低いので利払いは少ないし、国債のほとんどは日本人が持っているのだから、債務のリスクは小さい。リスクは小さいのだから思い切った景気刺激策を打てるはずなのだが、今の日本の政治はそれを決定できない。

つまり日本以外の国が、必死になって日本のバブル後の経験を避けている時に、日本が粗末な政治のせいで重い足取りで他国の後ろをのろのろついていっているということだ。

とまあ、こんな内容だ。こんな日本を本気で何とかしようという人が政治に乗り込んでいくしか、日本を救う手はないように思う。以前のEconomist誌は、その役割を果たしうるのは「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」(せんたく)だ、と述べていたが、そういえば今頃北川さんはどこで何をしているのだろうか・・・。マスコミに取り上げられないと存在も忘れられてしまうので、ぜひ派手に活動してほしい。

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麻生首相の問題設定

新年も明けてはやくも3週間が過ぎてしまいました。
仕事がちょっと忙しくなったこともあり、実に1か月ぶりの更新になります。
またまじめに書きます。はい。

今CNNをつけるとずーっとオバマ。大統領が変わるというのはアメリカ人にとって全てが変わる(かもしれない)特別なイベントなんだろう。
一方、日本。麻生首相のインパクトもすっかり薄れてしまった。
オバマと麻生の一番の違いは「We」と「I」だろう。オバマの演説は、Weで始まる。我々はこうしなければならない、できる、のような感じ。一方の麻生首相は「私は」で始まる。首相になったときの演説も「わたくし麻生太郎は・・・・わたしは・・・」「解散権はわたしにあります・・・」のような感じ。この時点でもう視点が違うのが明らかになってしまっている。

そして意見がぶれるとかいろいろ言われるが、自分が感じる1番の違和感は、「問題設定のずれ」と言ったら良いだろうか。ポイントがずれたところを一生懸命議論している感じだ。
もっとも、麻生首相を突っ込むマスコミ、民主党の問題設定がずれているのが大きな原因かもしれないが、麻生首相もそれに乗ってはだめだろう。

1.ホテルのバーの問題
最近あまり言われなくなったが、毎日帰る前にバーに寄るが、庶民感覚とずれているとかいないとか。これに対してバーはセキュリティを考えると高くないと説明したり、若者と飲みに居酒屋に行ってみたりしているが、問題はそこではない。
首相は日本で一番の「公人」であって、オフはないと思う。酔っているときに一大事が起きたらどうするのだろうか?帰ってからこっそりリラックスするのはわからないからいいが、公人であるべき時間帯に正々堂々と飲みに行く、そのこと自体が問題だと思う。

2.公邸への引っ越しの問題
公邸への引っ越しの時期が遅れて、国会の忙しい期間になってしまったが、夫人と子供の同意が得られなかったことが原因とかで、そんなことも自分で決められないのか?という指摘があったが、これも問題は1番と一緒。夜に部下の家などから海外の要人に緊急の電話をかけることもあったようだが、これも24時間公人であるべき首相には許されないことだろう。国家機密が盗聴されたらどうするのだろうか。その辺のセキュリティ意識がないことこそが問題だ。

3.漢字を読み間違える問題
今日も民主党の議員が、難しい漢字をいくつかパネルに書いて読めるかどうか、みたいな質問をしたようだ。そこを突っ込むよりももっと国際情勢や金融問題に関する知識を問う方がいいだろう。何せ「ゴルゴ13で国際情勢を学んでいる」と公言する首相なのだから、底は浅いだろう。麻生首相も今日は「みぞうう」と一呼吸おいて発言し、議場がどよめいたとのことだが、そこがポイントじゃないのだが・・・。

4.交付金を受け取るかどうかの問題
議員が交付金を受けとるべきか、受け取らないべきかが話題になったが、国民は全く関心はないだろう。そもそも交付金はどうなんだ、という点の議論が十分でないからだ。
「国民はお金をもらえるなら何だって喜ぶはずだ」という前提条件がどうも違うようなんだけどなあ。

5.消費税を増税することを明記するかどうかの問題
最もわからないのがこれだ。消費税を増税するかどうかを「明記するか」を議論しているのだ。2011年の増税を、この「緊急経済対策」を打たなければならない今、なぜ一生懸命明記しようとするのかがわからない。役に立たない、と普段いわれるマクロ経済の教科書にだって、将来増税されることがわかっている状態での経済対策は全く意味を持たない(将来増税されるのに消費などするわけがない)ことは書かれているし、現に以前の地域振興券で同様の失敗をしているにもかかわらず、だ。
彼は誰のために「2011年の増税」を明記しようとしているのか??
あるとすると、2007年に経団連がまとめた「今後10年の長期ビジョン:希望の国、日本」いわゆる「御手洗ビジョン」だ。ここで2011年までに消費税を+2%増税することが提言されており、これを守ろうとしているくらいしか理由は思いつかない。
もっともこの御手洗ビジョンは、消費税を上げる一方で法人税を10%減税するよう提言しており、その他にも経営者に有利な提言ばかりの悪評高い提言だったんだけど、それを守ろうとするのに、まるで政治家生命をかけているようにも見えてしまう。

私の恩師は企業のケースをやるときに「設問」を出さなかった。彼曰く、問題は何かを自分なりに考えるという「問題設定」こそが大切だ、と。これがずれたものだと、その解決策もずれたものになってしまう。
麻生首相を見ていて思うのは、この「問題設定力」の欠如だ。
「首相になること」こそが問題だったから、もうそこで終わっているのかな??

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