H&Mといえばスエーデン。スエーデンといえばIKEA、の話
先日、銀座にH&M日本第1号店がオープンした。手頃な価格だけどちょっとおしゃれ、って報道のままだけどそんな感じなんだろうか。たまたま開店2日目に銀座の博品館の横を通ったら、ものすごい行列ができていて、まさかとは思ったがH&M行列だった。いくらTVでパブをたくさんやっていたとはいえ、並ぶか!?!?あふれた客はZARAに並んでいるらしい。ZARAに並ぶか!?!?
ということでH&Mはスエーデンのブランドだが、スエーデンといえば同じようなコンセプトのIKEAがある。ここも開店当時は行列だったが、先日買い物に行ったらまあ落ち着いていた。このIKEA、けっこう面白い会社なのでまとめておきたい。ネタ元は2006年5月11日のEconomistに掲載された「Flat-pack accounting」と言う記事。見出しには「IKEAの家具の組み立ては面倒だが、この会社の会計を連結することに比べるとはるかに簡単だ」というようなことが書いてある。
1.どこの会社か?
まず最初におことわり。IKEAはスエーデンの企業ではありません。えー!?という感じだが、何と会計上はオランダの会社です。
世界235店舗のうち、そのほとんどの運営をしているのは「インカ・ホールディング」という会社で、オランダで登記されている非公開企業だ。
非公開ということはその親会社はどこか。これが企業ではなくてオランダ籍の非営利法人である、「スティヒティング・インカ財団」だ。この財団がインカ・ホールディングを100%所有している。この財団はIKEAの創業者、カンプラート氏の資本提供で設立された財団で、目的は「建築とインテリアデザイン分野におけるイノベーション」ということだ。どうみてもIKEAの研究開発そのものだが、非営利でこれに取り組むかわりに税金が大幅に免除される。
他にも「スティヒティング・IKEA財団」という財団も持っているようだ。
これら財団の市場価値は少なく見積もっても4兆円で、ビルゲイツの財団をも上回る規模だ。
その一方、オランダの非営利財団には情報公開の義務はない。ゲイツ財団は寄付の詳細まで公表しているが、インカ財団はインカホールディング(IKEAの運営会社)から受け取った「配当」をどう使ったか(誰に渡ったか)を一切公表していない。彼らは「慈善目的で使った」と言っているだけだ。
おまけに「将来の資金需要に備えて、IKEAグループを保護するための内部留保に向けた投資を行った」とも言っている。どこが財団なんだろう、単なるホールディングカンパニーじゃないのか??
オランダ籍財団のメリットは税金以外にもあって、この財団は5人からなる理事会で合意がなければ何も外部からの干渉を受けないで済む。もちろん中心はIKEA創業者のカンプラートだ。このしくみのおかげでIKEAは買収の脅威にさらされることはない。
2.もう1つのカネの流れ
もう1つのポイント。IKEAの商標とコンセプトはインター・IKEA・システムズというオランダ籍非公開企業が持っている。この親会社はルクセンブルグ籍のインター・IKEA・ホールディングスという会社。その親会社はオランダ領アンチル諸島のインター・IKEA・ホールディングス等会社で、その親会社はアンチル諸島のキュラソーにある信託企業だ。この信託企業に対し、誰が受益所有者となっているのかは不明だが、カンプラード一族であることは確かだろう。
そしてインター・IKEA・システムズは、IKEA全店舗から売上げの3%を集めている。
このインター・IKEA・システムズ関連の企業は880億円の利益を上げながら、税金は30億円の税金しか払っていない。税率3%なので消費税より安い。このしくみはEconomisitをもってしても解明できなかったようだ。
3.では何が問題か?
(1)この節税システムは法的に問題ないのか
別にこういった財団を使った形態はIKEAだけではなく、オランダではハイネケン、フィリプスなども同様らしい。それにしても法の抜け道を世界規模でつなぎ合わせたのはすごいが、いくらなんでもこの税率はおかしいだろう。でも誰にも指摘できないようだ。
別にこのシステムで高収益をあげているわけじゃくて、高収益企業が税金をうまく払っていないだけなのだが、北欧企業というとクリーンなイメージがあるだけにやはり解明する必要があると思う。
(2)資金調達に問題はないのか
外圧にさらすことなく企業を守っていて、資金調達に問題はないのだろうか。財務諸表なんてもちろん存在しないので(何と売上げだけしかわからない)、何ともいえないがまあいらないのだろう。創業者のカンプラートは今年のフォーブズ世界長者番付でも例年通りトップ10入り(7位)なので、たっぷり資金はあるんだろうけど。
(3)とはいえ成長にブレーキがかかったら問題だろう
これだけのしくみを作ってまわすのは、非常に維持コストがかかっていると思う。それ以上にメリットがあるからいいけど、企業の成長がとまったらこの高コスト体質が問題になってくるだろう。
ということで、IKEAというとサプライチェーン・マネジメントとかマーケティングの題材として取り上げられることが多いが、一番面白いのは会計だ。何せまだ誰も解明していないのだから・・・
カンプラートは既に30年前にはIKEA自体の経営から身を引いているが、これだけの集金システムを作り上げて悠々自適の生活をオランダで・・・
いえ、スイス在住だそうです。これにも意味がありそうな・・・
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