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リーマンの破綻と wall street crisis

リーマンが破綻した。何か突然のようだが、業績は悪化していたし株価も下がっており、韓国の銀行が買収を断念したところでこの流れは予想されていた。とはいえ本当にそうなるとびっくりだ。
リーマンというと、どうも今ひとつ良いイメージがない。個人プレーで、目立とうという乱暴な手法が目立つイメージ。消費者金融にけんかを売ったアナリストレポートとか、ライブドアのグレーな資金調達などなど。ゴールドマンが頭脳を駆使してチームプレーでえげつないことをする、モルガンは少し上品な組織プレー、といったイメージだけど、対照的かな。

1.これまで何が起きたのか?
サブプライムローンに関しては前にブログで書いたと思ったらもう昨年の11月のことだった。そのときは2007年の損失合計が7兆円になりそう、との予測だと書いてある。
FRBも、サブプライム問題の損失合計は10兆円、と確か予測していたはずで、すでに40兆円に到達した今となっては、予測が楽観的すぎた、といわざるをえない。
まず証券5位のベア・スターンズが危機になったときはFRBが救済の手を差し伸べた。
そして4位のリーマンは救済しないことにして、つぶしてしまった。でもほぼ同時に3位のメリルリンチは、当局のバックアップもあってリーマン買収を見送ったバンカメに救済させた。

2.今何が起きているのか?
(1)証券会社の顧客=保険会社への飛び火: 
今日のニュースはAIGだ。証券会社の商品を大きく組み込んでいる保険会社は、サブプライムの問題を最後にモロに受けてしまう。しかも、リーマンとは違って一般市民も保険を購入しているので、混乱は避けられない。
しかしAIGはもともとクリントンと非常に関係の深い企業で、海外のメディアはFRBは必ず救済されるだろう、と見ていたがその通りとなった。
(2)証券会社からの資金の引き上げ:
まず銀行。債権を買っていたのが飛んでしまう。日本の銀行ももちろん損失をこうむるが、損失はそれほど大きくないと言っている。しかし破綻がこれほど急だったので、直前までかなり取引をしていただろうから、これからどんどん損失は増えていくだろう。
次に銀行意外の資本家の資金。リスクのある資本市場からはひとまず引き揚げる流れだ。それを証明するのが原油価格の急落。価格が上がっていたのは別に生産量が減少したわけでもなく、投機的なものだった、ということだろう。
(3)米国のプレゼンス低下
ドルに投下されていたマネーは他の通貨へと移動している。円高はそのためだろう。一方で韓国のウォンは上がらずに逆に暴落している。これは不思議だ。

3.今起きていることを見ていて思うこと:
(1)まずは公的支援をするかしないかをどこで線引きするかの問題だ。リーマンはつぶしてAIGは救済するのは適切なのか?個別企業の問題なのか、金融市場全体の問題(システミックリスク)なのかをどう見極めるのか?ワシントンポストは「政府の公的救済が正当化されるのは、金融システム全体への利益が潜在的コストを上回るときだけだ」と言っているが、これは世論も考慮に入れる必要があってタイミングが難しい。
もちろんどの企業も救済するのでは、救済を当てにして無茶をする企業が出てくるだろうからよく考えなければならない。特に銀行や証券会社は好調なときの報酬も高いので「何で彼らの失敗に税金を投入する必要があるのか?」という議論になる。
しかし彼らが路頭に迷って終わりではなく、国全体のシステムが破綻しようとしているのであれば、何をおいてもそれを避けるために税金を投入するタイミングは逃してはいけないと思う。日本のように、政府が全力をあげてダイエーを救済するのとはわけが違う。
(しかしダイエーの破綻は何か国民生活に深刻な影響が予想されたのかなあ??)
(2)米国の当局の対応はやはり早い。関係者を集めて会議を開いたら、きちんと結論を出して即日実行に移す。対照的に日本では、首相が日銀総裁や関係者を集めて出した声明が、「状況をよく見極めて適切な手を・・・」という思考停止状態の結論だ。日米ともに誠治の最高責任者は機能してない状態であることには変わりはないので、いかに米国の金融当局がプロフェッショナルであるかの表れだろう。
プロ度の差はメディアにも明確に表れている。海外の新聞は非常に細かく分析して自社の見解を打ち出している。それに対して日経新聞は・・・・今日の朝刊では「AIGに対するFRBの打ち手は難しい」というようなことが書いてあったが、その直後には最大9兆円の融資を決めた・・・。今後の展開も悲観的な学者から楽観的な学者まで網羅的に並べるだけで、自社なりの見解、意見は見られなかった。
仕方ないので日経を読んだ後、Financial Timesをスタンドで買って読んでいるが、600円だからなあ・・・

4.これから何が起きるのか?
(1)これはリーマンの問題ではなくて、証券会社共通の問題だ。ということは当然ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーがどうなるのか、ということに焦点は移るだろう。特にゴールドマンは要注目だ。これに対する当局の対応は今後の展開の転換点になるだろう。
(2)サブプライム関連の損失は40兆円に上っているが、FRB予測の10兆円は問題外として、IMF予測は100兆円だ。それに向かってどんどん損失額は膨らんでいくだろう。なぜなら米国の住宅の価格はまだ下げ止まっていないので、サブプライムローンの損失額はまだ確定していない。住宅価格が下がれば損失額は増えていく。
(3)米国が世論をまとめるためにすることといえば・・・歴史的には戦争だろうか。イラク問題でさらに手を打つことも考えられる。
(4)この状況をチャンスと捉える人、企業、国はいるはずだ。そう、パラリンピックが今日で終わった中国が手を上げるのか、上げられないのか?

いずれにしても今回の問題はリーマンが破綻した、というだけの問題ではなく、いろいろな企業が同様の状況で、それに対する公的支援のあり方についてぎりぎりの選択を迫られている、という状況だろう。日本への影響も銀行、輸出企業など多岐に渡るだろうから、適切あ対応をしなければならないが、政治家は口をそろえて日本への影響は軽いと言っている。そうなれば良いんだけど、どうだろう。

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