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2008年9月

野村がリーマンの一部を買収

前回書いたリーマン破産以後、次はモルガンか、ゴールドマンか?と見られていた連鎖反応は、ひとまずFRBと連邦政府、それから各国財務省のすばやい対応でひとまずの決着がついた感じだ。
「すばやい」と書いたけど、今回の一連の問題は前からわかっていたことで、本当にぎりぎりまで手を打たなかったが、問題が噴出したら「すばやく」対応した、と言う意味だ。
リーマン、モルガンスタンレーは日本の資本も受け入れたが、最大の注目だったゴールドマンは、やはり日本の資本など入れさせずに乗り切った。やはりそこは米国としても譲れなかったのかな?

そして野村がアジア・パシフィックの一部買収に続いて、欧州・中東の株式と投資銀行部門を買収することが決まった。その買収金額は・・・なんと2ドル。
最終的に競り勝った要因は受け入れを約束した従業員の数で、2500人を確約した野村がバークレイズを抑えて勝ち取った。

1.人件費はいくらかかるのか?
日本のニュースではあまり詳しく書かれていないが、フィナンシャルタイムズによると、野村は、リーマンの優秀な社員に対して、来年の秋まで在籍してくれれば昨年と同額のボーナスをキャッシュで支払い、さらに2009年のボーナスも2008年並みを原資として確保する、と提案しているとのこと。今は転職先もないだろうし、これは条件として申し分ないのではないか。1年間待って、とりあえず最悪の状況が収まるまでは、実績を出さなくてもボーナスはもらえるんだし、「NOMURA」という日本のローカル企業でもいいか、という感じだろうか。

2.ところで優秀な人材は残っているのか?
問題はこちらだろう。銀行を買収するなら担保とか債権とか実質的なものがあるけど、証券会社は優れたスキームを生み出す人在が資産のほとんどだと思う。もうこのタイミングだと優秀な人は引き抜かれているだろうし、別に稼がなくても暮らせるだけの財産は持っているんだろうから1年くらいバカンスを取る人も多いんじゃないかな。
そもそもリーマンは、ゴールドマン、モルスタ、メリルと比べると、やはりその次というイメージがあるので、人材も平均的には落ちるだろうし。実際、野村の社員は「リーマン日本法人の社員は1人もいらない」と言っているというコメントも報道されている。

野村は2ドルで何を買ったのだろうか。名前?ブランド?まあそれは破産したから2ドルだろう。
ひょっとすると雇用の確保と手厚いボーナスという条件で、空っぽの大きな箱を買ってしまったのではないだろうか?

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リーマンの破綻と wall street crisis

リーマンが破綻した。何か突然のようだが、業績は悪化していたし株価も下がっており、韓国の銀行が買収を断念したところでこの流れは予想されていた。とはいえ本当にそうなるとびっくりだ。
リーマンというと、どうも今ひとつ良いイメージがない。個人プレーで、目立とうという乱暴な手法が目立つイメージ。消費者金融にけんかを売ったアナリストレポートとか、ライブドアのグレーな資金調達などなど。ゴールドマンが頭脳を駆使してチームプレーでえげつないことをする、モルガンは少し上品な組織プレー、といったイメージだけど、対照的かな。

1.これまで何が起きたのか?
サブプライムローンに関しては前にブログで書いたと思ったらもう昨年の11月のことだった。そのときは2007年の損失合計が7兆円になりそう、との予測だと書いてある。
FRBも、サブプライム問題の損失合計は10兆円、と確か予測していたはずで、すでに40兆円に到達した今となっては、予測が楽観的すぎた、といわざるをえない。
まず証券5位のベア・スターンズが危機になったときはFRBが救済の手を差し伸べた。
そして4位のリーマンは救済しないことにして、つぶしてしまった。でもほぼ同時に3位のメリルリンチは、当局のバックアップもあってリーマン買収を見送ったバンカメに救済させた。

2.今何が起きているのか?
(1)証券会社の顧客=保険会社への飛び火: 
今日のニュースはAIGだ。証券会社の商品を大きく組み込んでいる保険会社は、サブプライムの問題を最後にモロに受けてしまう。しかも、リーマンとは違って一般市民も保険を購入しているので、混乱は避けられない。
しかしAIGはもともとクリントンと非常に関係の深い企業で、海外のメディアはFRBは必ず救済されるだろう、と見ていたがその通りとなった。
(2)証券会社からの資金の引き上げ:
まず銀行。債権を買っていたのが飛んでしまう。日本の銀行ももちろん損失をこうむるが、損失はそれほど大きくないと言っている。しかし破綻がこれほど急だったので、直前までかなり取引をしていただろうから、これからどんどん損失は増えていくだろう。
次に銀行意外の資本家の資金。リスクのある資本市場からはひとまず引き揚げる流れだ。それを証明するのが原油価格の急落。価格が上がっていたのは別に生産量が減少したわけでもなく、投機的なものだった、ということだろう。
(3)米国のプレゼンス低下
ドルに投下されていたマネーは他の通貨へと移動している。円高はそのためだろう。一方で韓国のウォンは上がらずに逆に暴落している。これは不思議だ。

3.今起きていることを見ていて思うこと:
(1)まずは公的支援をするかしないかをどこで線引きするかの問題だ。リーマンはつぶしてAIGは救済するのは適切なのか?個別企業の問題なのか、金融市場全体の問題(システミックリスク)なのかをどう見極めるのか?ワシントンポストは「政府の公的救済が正当化されるのは、金融システム全体への利益が潜在的コストを上回るときだけだ」と言っているが、これは世論も考慮に入れる必要があってタイミングが難しい。
もちろんどの企業も救済するのでは、救済を当てにして無茶をする企業が出てくるだろうからよく考えなければならない。特に銀行や証券会社は好調なときの報酬も高いので「何で彼らの失敗に税金を投入する必要があるのか?」という議論になる。
しかし彼らが路頭に迷って終わりではなく、国全体のシステムが破綻しようとしているのであれば、何をおいてもそれを避けるために税金を投入するタイミングは逃してはいけないと思う。日本のように、政府が全力をあげてダイエーを救済するのとはわけが違う。
(しかしダイエーの破綻は何か国民生活に深刻な影響が予想されたのかなあ??)
(2)米国の当局の対応はやはり早い。関係者を集めて会議を開いたら、きちんと結論を出して即日実行に移す。対照的に日本では、首相が日銀総裁や関係者を集めて出した声明が、「状況をよく見極めて適切な手を・・・」という思考停止状態の結論だ。日米ともに誠治の最高責任者は機能してない状態であることには変わりはないので、いかに米国の金融当局がプロフェッショナルであるかの表れだろう。
プロ度の差はメディアにも明確に表れている。海外の新聞は非常に細かく分析して自社の見解を打ち出している。それに対して日経新聞は・・・・今日の朝刊では「AIGに対するFRBの打ち手は難しい」というようなことが書いてあったが、その直後には最大9兆円の融資を決めた・・・。今後の展開も悲観的な学者から楽観的な学者まで網羅的に並べるだけで、自社なりの見解、意見は見られなかった。
仕方ないので日経を読んだ後、Financial Timesをスタンドで買って読んでいるが、600円だからなあ・・・

4.これから何が起きるのか?
(1)これはリーマンの問題ではなくて、証券会社共通の問題だ。ということは当然ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーがどうなるのか、ということに焦点は移るだろう。特にゴールドマンは要注目だ。これに対する当局の対応は今後の展開の転換点になるだろう。
(2)サブプライム関連の損失は40兆円に上っているが、FRB予測の10兆円は問題外として、IMF予測は100兆円だ。それに向かってどんどん損失額は膨らんでいくだろう。なぜなら米国の住宅の価格はまだ下げ止まっていないので、サブプライムローンの損失額はまだ確定していない。住宅価格が下がれば損失額は増えていく。
(3)米国が世論をまとめるためにすることといえば・・・歴史的には戦争だろうか。イラク問題でさらに手を打つことも考えられる。
(4)この状況をチャンスと捉える人、企業、国はいるはずだ。そう、パラリンピックが今日で終わった中国が手を上げるのか、上げられないのか?

いずれにしても今回の問題はリーマンが破綻した、というだけの問題ではなく、いろいろな企業が同様の状況で、それに対する公的支援のあり方についてぎりぎりの選択を迫られている、という状況だろう。日本への影響も銀行、輸出企業など多岐に渡るだろうから、適切あ対応をしなければならないが、政治家は口をそろえて日本への影響は軽いと言っている。そうなれば良いんだけど、どうだろう。

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モチベーション

人間のモチベーションを説明する理論として有名なものに、マズローの5段階の
欲求がある。人間の欲求には低次元なものから高次元なものへと5段階に
分かれていて、これが満たされないと、充足しようとする行動を取る。
低次元な欲求が満たされると1段階上の欲求が生まれ、より高次元な欲求へと
段階的に移行する、という。
低次元な順にあげると・・・

1.生理的欲求
生命維持のための食欲・性欲・睡眠欲等の本能的・根源的な欲求
2.安全の欲求
衣類・住居など、安定・安全な状態を得ようとする欲求
3.親和(所属愛)の欲求
他人と関わりたい、他者と同じようにしたいなどの集団帰属の欲求
4.自我(自尊)の欲求
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求 
5.自己実現の欲求
自分の能力・可能性を発揮し、創作的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求

最後の自己実現の欲求だけは、一度満たされてもさらに強い充足を求めて
無限の繰り返しに入る、ということだ。

しかし、そういうものだろうか??
なぜそんなことを考えたかというと、昨日以前勤めていた会社の上司に会った
んだけど、ところで自分はどうしてその会社を辞めたんだっけ、とふと考えた。
十分に集団から認められていたし、能力を発揮できる場も、引き続き与えて
くれただろう、そんな会社だったのに。
マズローでいうと、自己実現欲求の無限ループに入ったということか!?
いや、そんな大げさな動機ではなく、もっと低次元の欲求のような気もする。

Harvard Business Review 10月号の、「新しい動機づけ理論」がちょっと
ヒントになると思う。
ここでは人間の欲求(本では欲動と訳されていた)は4種類に分類され、
これらは人間の頭脳に先天的に備わっているため、それらがどれくらい満足
させられたかによって、行動が直接左右される。モチベーションが最大化され
ている状態はこの4つの欲求全てが満たされている時、ということだ。

1.獲得の欲求 (Drive to acquire)
幸福感を高める、希少な何かを手に入れること。
金銭的なものはもちろんだが、役職への就任など社会的地位の獲得など無形
のものも含まれる。これは相対的で限界がない。いつも自分の持っているもの
と他人のものを比較して、「もっと欲しい」となる。確かにそうだ。給料とかいくら
もらったら満足、というのはないだろうなあ。

2.絆への欲求 (Drive to bond)
個人や集団との結びつきを形成すること。
組織、同盟、国などと結びつきたい、という欲求が満たされると前向きになり、
満たされないと孤独感やモラル低下を招く。その組織にいることを自慢に思え
ばモチベーションは向上し、組織に裏切られると低下する。
会社にいると部門、事業部などの縦割り組織の壁を破って行動することが
難しいのは、人間は一番身近な集団を大切に思うからだろう。
ただし、より大きな集団(会社全体など)に同じ気持ちを抱かせることができれば
自分の組織よりも会社全体の利益を考えるようになるだろう。

3.理解への欲求 (Drive to comprehend)
自分を取り巻く世界を理解しようとする好奇心のこと。
意味のないことをしていると感じれば不満になる。見えない答えを見つけようと
挑戦すればモチベーションがあがる。単調な仕事だとその逆である。
職場で有意義な貢献を果たせなく、閉塞感を覚えたときに、チャレンジングな
課題を他社に求めて退職していくのはこの欲求を満たすためだろう。

4.防御への欲求 (Drive to defend)
外部の脅威から自分の身を守ること。
自己、業績、家族、友人、新年などを外的から守ろうとする。さらには単なる防御
だけでなく、正しいことを求め、正しい組織を作りたいという欲求にもつながる。
改革をしなければならないことは理解できても、変化を避けたいのはことためだ。

これら4つの欲求には、重要度の順位はない。そしてつながりもなく、異質なもの
としている。社員同士の絆に無関心な会社が、いくら高い給料を払っても社員は
一生懸命働くことはない。まあ働くことは働くけど最高のパフォーマンスではない。
つまり4つの欲求を常に全て満たすことが必要だ。

うーん、この理論に照らし合わせて自分の転職のことを考えると、もう少し説明
がつく。全く満たされていない項目はないのだが、完全に満たされていたと
思える項目も1つもないような気がする。
つまりどれかが1つ満たされないのではなく、どれも少しずつ満たされない、
そんな時にその会社で働こうというモチベーションは下がるのかもしれない。

ちなみにこの論文では、それぞれの欲求を満たすために、レバーとなるポイント
が記されている。
1.獲得→ 報奨制度の整備:優劣を明確にする、業績連動型にする、など
2.絆→ 企業文化の醸成:社員間に信頼を持たせる、チームワークを重視する
3.理解→ 職務設計:社内で重要な役割を与える、組織への貢献意識を高める
4.防御: 業績管理と資源配分プロセスの整備:公正、透明な評価と報酬

これらの手当てが組織的になされていることが重要なのはもちろんだが、もう1つ
強調されているのは、直属の上司の役割だ。部下は上司に対して、これら4つの
欲求全てに対応し、最善を尽くすことを期待しているということだ。
つまり会社がだめでも、これらの欲求を何とか部下に対して満たしてあげようと
努力する上司がいると、部下のモチベーションはあがる。
組織の業績を最大にするためには、組織面での仕組みの改善と、上司に対する
教育という、マクロとミクロというべきか、2つの側面から従業員の4つの欲求
全てに対し、何らかの解決策を提示してあげることが必要なのである。

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韓国

先週、仕事で韓国に行ってきた。通算3回目、かれこれ8年ぶりになるだろうか。
最近ウオンの急落で騒がれているが、そんなに景気が悪い感じはしなかったなー。もっとも韓国の仕事先の人は、政治(大統領への不信感)も経済状況も良くない、とは言っていたけど。街中で以前と異なったのは、外車が増えたこと。日本車は相変わらず走っていないけど、ベンツ、BMW、ボルボなど、特にハイソなソウル南部のエリアを走っているとやたらと目に付いた。あとは前回目立ったネットカフェがあまり見当たらなかったこと。これはどうしてだろう?1度PCがつながらないので入ってみたが、まあ若者がゲームをしている程度だった。
相変わらずだったのは、皆韓国料理を食べていること。若い女の子どうしでも、会社帰りの飲み会でも、皆キムチをつついている。日本だと「雑食」なので考えられない光景だ。
前回は禁断の犬鍋を食べたのだが、今回は仕事相手に連れて行ってもらった店で、韓国では毎朝食べると言っていた味噌汁を飲んだら、これが何ともいえずおいしかったな。豆の味が濃くて、最初はくどいけどくせになる。当然辛い。たった2泊だけどキムチの味のしないものが食べたくなるのは、韓国に来るといつものことだ。

今回、朝は毎日コンビ二でおにぎりやサンドイッチを買って食べた。時間もなかったし、あまり普段朝はがっつり食べないので。
韓国のコンビニは、セブンイレブン、ファミリーマート、ミニストップ、現地資本のG25といったあたりが多い。日本のコンビ二と違うのは以下の点だ。
1.買い食いコーナー
店の中に買ったものを食べるためのコーナーがある。机があるだけだけど。GS25の店の前には椅子とテーブルが置いてあって、毎朝おじさん3人くらいで何か食べていた。
2.雑誌コーナー
フイルムでパックされていることもあり、立ち読みは不可能。そもそもあまり本は置いていない。
3.インスタントラーメン
これがやたらと充実していて種類も多い。何かどれも赤くて辛そうだけど。
4.アイス
アイスは本当に少ない。ハーゲンダッツくらいかな。韓国の人はアイスはあまり食べないんだろうか?街中にはサーティワンも、コールドストーンもあったけどなあ。
5.レジ
そして一番の違いは、レジで袋をくれないこと。いくつ買うものがあろうがくれない。言ったらくれるというシステムなのかな。

といったあたりで、外見やレイアウトは日本とほぼ同じなんだけど、細かいところは随分と違う感じがした。
あと気になったのは、以前は韓国の若い人というと、皆英語ができるという印象があったんだけど、今回は通じない人が多かったのが気になった。コンビ二で韓国語で話しかけられて、俺は日本人だ、韓国語はわからん、と言ったのに、その後もずーっと韓国語で話しかけられて苦笑した。若者の英語水準は他に店で話したりしても下がった感じがする。それでも日本よりはまだましだろうけど・・・

しかし韓国は、町並みや人などが日本と変わらないのに、表記がハングルばかりなので、目の前の建物が何の店なのかすらわからない。欧米の方がよっぽど見当がつくくらい。これは毎回本当にストレスだ。近くて遠い国、今回もそんな印象だ。

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