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居酒屋タクシーというネーミング

ネーミングというの不思議なもので、名前ひとつで人の思考を左右することができるものだ。よくあるのは、会社が「本当はこう考えている」という意味を当て字で表現するもの。
例えば社員のことを「人材」ではなく「人財」という文字を使う会社がある。ちょっと一世代前の印象を受けるが、ネットで検索すると今でもけっこう使っているようだ。最近では人財とは逆に会社に損失をもたらす人を「人罪」、言われたことだけやってただいるだけの人を「人在」というそうで、ほとんどダジャレの世界だ。「転職」のことを、展望を持ったキャリア展開と言う意味で「展職」と呼ぶ人材(財?」エージェントもあったなあ。

一方で、社員ではなく顧客のことを言いかえるネーミングもある。例えば「顧客満足度」は失礼なので「お客様満足度」と呼ぶ会社がある。「患者さん」のことを「患者様」と呼ぶ病院、製薬会社がある。面白いのは「売り場」のことを「お買い場」と呼ぶデパートがある。これは伊勢丹だけど。
これらに共通するのは、意図とは逆に、何となく底が見えるというか、本当はそう考えていないけど、必要以上に良い格好をしようとしている印象を受けてしまう。まあ社員に対して意識を徹底させるわかりやすいツールということでは成功しているかもしれない。

さて、マスコミで「共通用語」として使われている言葉には、問題の本質をそらすようなネーミングのものが時々目につく。最近で一番気になる言葉は「居酒屋タクシー」だ。
1.居酒屋なら良いのか?
この問題は驚くべきことに「問題ないのではないか」というインタビューも流されている。ビール1本くらいサービスの一環だろう、と。日本は何て飲酒に関しては許容度の高い国民なんだろう、と驚いてしまうし、そこが狙いなのかもしれない。
ビールが良いか悪いか、というのが問題なのではなく、タクシー代金の水増しによる現金のキックバックや、チケットの買取りが常習化されている、というのが大きな問題だと思うが、「居酒屋タクシー」という呼び方が徹底されてからは、あまりこれらの「キャッシュバック」の問題は取り上げられなくなった。
2.タクシーを使うのが問題なのか?
あと国民の声として出るのが「サラリーマンは終電で疲れ果てて帰るのに官僚はタクシーか」というやっかみの声だ。早速タクシーは極力使わないようにという指示が出され、終電に走る官僚の姿がニュースで報道されたりした。
問題はタクシーに乗るか乗らないか、ではなく、深夜残業が常態化していないか、という点にある。以前官庁に出向していた職場の先輩から聞いたが、官庁は夕方からが仕事だそうだ。翌日の議員からの質問が出てくるのがその頃で、翌朝までに大臣の答弁と想定問答を作っておかなければならないので、国会期間中は毎日朝までの勤務となる。もっとも国会期間外でも、あと少しいればタクシー帰宅が認められる時間だ、ということでその時間まで待っていたりしたそうだ。大臣答弁のためにそこまでするのは「大臣に恥をかかせないように」という意識だそうだが、今どき一般企業で、上司のプレゼンで恥をかかせないように組織総出で夜通し準備する会社があるだろうか??
それだけならまだしも、議員からの質問まで作っていたりする。それは議員秘書の仕事ではないのか?そうした仕事をするために公費で秘書費用を支払っているのではないか?
つまり「居酒屋タクシー」と呼ばれている問題には、ひとつはタクシーチケットを使った横領の問題があるということ。そしてもうひとつ、大きな問題として公務員の無駄な労働時間にまで税金が使われているということがある。そうした問題が「居酒屋タクシー」というネーミングで、どこかほのぼのとした感じを与えているとしたら、マスコミに対する統制の成果だろう。
もうひとつ、教育委員会の汚職がちょっと前話題になっていたが(もう忘れかけられているけど・・・)、そこに「合否の事前通知」という妙な言葉が統一して使われていた。まるで携帯電話の代金を引き落とす前に通知する、みたいなノリの言葉だ。
でもよく考えてみると、これはものすごい「不正」であり、このような不正があるということは合否の判定に関しても不正があると考えるのが普通だろう。でも「事前通知を行っていた地方自治体の数がたくさんあった」という程度の扱いで終わっている。これもネーミングの妙といえるだろう。

表面的なネーミングに惑わされずに、本当の問題は何か?を考えるようにしなければ、テレビを見てそのまま受け取っていると、思考の枠組までコントロールされそうだ。

ところで、話はかわるがTBS「世界ウルルン滞在記」が打ち切りになるそうだ。この番組のネーミングのうち、「世界○○滞在記」という名前を作ったのは、実は私なのです。テレビ業界とは全く縁はないんだけど、番組開始当時にこの番組の企画を担当していた友人から番組名について相談されて、いろいろ考えて2,3個提案した中にありました。「ウルルン」は違うけど。当時のテレビ界では、「なるほど・ザ・ワールド」を超えるネーミングはなかなか出せずに皆が頭を悩ませている、と言ってたっけ。ちなみにその友人は当時の会社をすぐに辞めてしまったので、アイデア元が私だということを誰も証明してくれる人がいません・・・(涙)

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