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2008年8月

Google ストリートビューは問題なのか?

8月の上旬のこと。久しぶりにGoogle earthを開いてみると、今までにみたことのないカメラのマークがたくさんでていた。何とそこをクリックすると360度のアングルで画像が見られるようになっていた。しかもEarthだけでなく、Google mapにもこの機能は搭載されて、やはりあっというまにネット上で話題になった。「ストリートビュー」だ。
米国では昨年5月に既にリリースされていて、行ったことのない取引先の会社の住所を入れると会社の外観がわかったりして、「意外にでかいな」とか「大したことなさそうだな」とか、結構便利な機能だ。ただ、いろいろなものが映っていて、ネットでも面白(問題?)地点を紹介するサイトが既にできていたりする。ホテル街を歩く中年カップルとか、いちゃつく高校生とか。職務質問されている人とか。顔はぼかしてあるけど、知人が見たらわかる程度のぼかしだ。

米国では既に訴訟も起きている。例えばピッツバーグの夫妻が、自宅にいる画像が載ってしまい、精神的苦痛を受けたとのことで、250万円の損害賠償を訴えている。普段あまりカーテンをする習慣すらない自分には何が苦痛なのかわかんないけど。
この訴えに対するGoogleの主張は、申し出によって削除する機能があり、それを知らせる努力は十分にしている、ということ。そしてプライバシーに対する考え方として、「衛星技術の進歩により、現代では砂漠の真ん中にいても完全なプライバシーは存在しない」と法廷でコメントして話題になっている。
確かに都会には我々が気づかないように多数の監視カメラがあるし、それと何が違うのか、という人もいるけど、ストリートビューは皆が見られるからちょっと違う。プライバシーの侵害だ、という人もいるけど、普段歩いているのを見られるのはプライバシーの侵害なのか、と問われるとこれもちょっと違うかな。1つ問題は、断る権利のない完全な「隠し撮り」ということだ。プリウスにカメラを積んで春先に走り回ったようだが、もし「グーグル撮影中」って書いてあれば、TV中継で顔を隠す人がいるように、映されたくない人は顔を隠すことが可能である。その権利がない、というのは問題のポイントの1つだと思う。

1.プライバシー権の問題
プライバシー権とは何か。定義は難しいが、一般的に言われるのは「かまわれない=放置される」権利だ。しかしストリートビューに映っているのは普段の日常生活だ。それは見られて当然であり、壁の向こうを透撮したというならプライバシーの侵害だと思うけど、この場合は違うかな。ただし、このカメラの視点は高いので、プライバシーを守ろうとして2mくらいの塀を作ったのにその内側が映っていたりしたら問題だろう。

2.肖像権の問題
プライバシー権の中に「肖像権」という概念がある。人の姿、形、画像が持つ権利のことだ。しかしストリートビューは判別できない程度(とは思えない例もあるけど)にぼかしてあり、さらに依頼により削除が可能である。さらには盗撮が肖像権の侵害で刑事罰を受けることはなく、迷惑防止条例で罰せられるという事実もあり、ストリートビューの画像で肖像権を問うことはできないかもしれない。

3.人格権の問題
さらにもう1段階の下部概念として「人格権」というのがある。被写体の許可なく撮影されたり、公開されない権利のことで、みだりに自分の姿を公開されて困ることのないように、という権利だ。これはすこしひっかかるかな・・・
と思ったら、不特定多数に見られることを前提としているケースや、撮影内容から個人が特定できないようなケースは、明文化した法律はないが判例として認められていないそうだ。イベントとかデモとか。うーん、しかも米国では被写体の肖像権よりも、撮影者の「表現の自由」が優先されることが多い。日本はそこまではいかないだろうけど、Googleとしてはやはり人格権もクリアしていると判断してサービスを開始したのだろう。

ということで、やはり法的にはこのストリートビューは問題ない(あるとは言えない)ということなのだろう。そこはGoogleがぬかるわけないか。
Googleが「画期的、便利」と便益を主張する限りはストリートビューは存続するだろう。
ただし、「何をしている途中であれ、公衆の面前にいるということは、見られて当然と考えている日常生活の一部である」というロジックは、やはり「何となく」受け入れられないだろうから、議論は続くと思う。あとは、顔のぼかし具合もきちんと計算しているんだろうけど、やはり知っている人が見たらわかる場合も出てくると思う。もっとも見られて困るという人は訴訟にしてさらに傷口を広げることはせず、こっそりと削除依頼して終わらすんだろうなあ。
1つ、明らかに問題が起きる可能性は、犯罪に利用されたことが明らかになったときだろう。強盗や空き巣の下見など。実際に英国ではそういったケースもあったようだし。

さて、最初に書いた面白画像サイトに、UFO写真がいくつか報告されていた。
その中の1つに、北海道の小樽築港の東側海岸から海をみたところの写真があるが、これってよくみるとカモメだな・・・。UFO写真って多くはそういうものなのかもしれない。

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北京オリンピックの不思議10

先週は1週間の夏休み。普段はあまりTVを見ないんだけど、オリンピックは何となく気になって結構見てしまった。何だか今回のオリンピックは不思議というか、違和感を感じることが多い。10個あげてみよう。

1.TV中継で取り上げる競技が偏っている点
以前は、オリンピックでもなければ見られないような競技もTVでやっていたような気がする。水球とか、競歩とか。それが今回は非常に偏りが多い。日本の活躍が期待されている(というかTVが期待を作り上げている)競技しかTVでは流れていない。生放送の時間でなければ、その同じ競技の録画を流している。注意して画面の右上の「LIVE」の文字を確認しないと、いつの試合だかわからないほどだ。

2.日本での人気と結果とのギャップが大きい点
サッカーとバレーが特にそう。日本ではこれらの競技は広告代理店の「イベント」であり、サッカーであれば親善試合も含めて毎試合が「負けられない試合」。バレーは日本にとって都合のいい順番であたる。最初は微妙に勝てそうなチームで、盛り上げておいて、3試合目くらいに強いチームとあたる。その後弱いチームに確実に勝って、「お、強いのか?」と思っていたら後半ずるずる負けて世界の8位くらい。
でもオリンピックは日本だけがそういうわけにはいかない。やはりこれはスポーツであり、演出できないものなのだ。

3.ナショナリズムと根性論が突然台頭する点
オリンピックになると、突然「頑張れニッポン」になる。まるで国民の期待を一身に背負っているかのような選手もいる。マラソンの野口とか。でもどうせ終わったらすぐに忘れるんだから、真面目に受け取らなくても良いように思う。それでもメダルを取ると「日本のために頑張って取ったんですよね、すごいですね」みたいにインタビューをされてしまう。今日も男子レスリングの選手が、インタビュアーに「ニッポンのお家芸のメダルを守ったわけですよね?これは本当にすごいことですよ!」といわれて、「別に自分のためにやっただけで、それで結果が出たのはいいことです」と冷静に答えていた。
あと根性論。野球はプロの選手が揃って丸坊主だ。休養日に自主練習に出てきた選手を監督が褒めていた。プロなら休養の方が大切だと思うけどなあ。個人的には土下座と坊主はその気になれば簡単にできるポーズなので、全然信用していないけどなあ。

4.お金にまつわる話が出てこない点
オリンピックはスポーツの祭典だが、スポンサー契約で数十億稼ぎ、心理カウンセラーも含めた10人くらいの「チーム」を作っている選手もいれば、遠征費用も自腹で経済的に苦しい選手もいる。実績を出してスポンサーがついて、大きな期待を背負う選手が億単位の収入を得るのはいいんだけど、なんか同じスポーツ大会で競うのはどうかな、とも思う。TVはそうしたカネにまつわる話は一切取り上げない。
例えばあれだけ騒いだレーザーレーサーの件。見事にオリンピック中は無視だった。インタビューのときも顔をアップにして胸のマークがあまり映らないようにしているように見えた。北島選手は金メダルは立派だが、もし契約内容がミズノの排他的な独占使用権だったとしたら、明らかに社会人として契約違反だろう。排他的だからこその対価を得ているわけなので。あと例えば柔道の谷選手。選手団と一緒に北京入りすると、1人だけ別行動を取り、彼女のために用意された専用の道場で、6人の練習相手と最後の調整をしたそうだ。さすがトヨタだなあ。他には星野JAPAN。日本選手団で唯一選手村に宿泊してない。高級ホテルを占有し、顔を洗ったり歯を磨く水までも日本から持ち込んでいるとのこと。大会前には監督以下仲良しコーチ陣全員で、出場国を回って「情報収集」したとのこと。あまり采配には役に立っていないようだけど。

5.マスコミがすぐに「これで引退するのかどうか」を気にする点
これはどうしてだろう。「引退しない」というと「何でだ?」とバッシングするくらいの雰囲気がある。今回はベテラン勢の活躍が目立つからなおのこと目立つのかな。

6.「自分にとっては金メダルです」というコメントが目立つ点
これも何だ??銀メダルや銅メダルに終わった選手や、応援団がしきりにこのせりふを口にしている。銀は銀だし、銅は銅。金以外は負けているのは事実だ。でも銀だってすごいし銅だってすごい。出ていることだけでもすごい。そういった納得の仕方ではなく、「この銀メダルは自分にとっては金メダル」という納得のさせ方をするのは、ちょっと違うように思う。
あとは期待に沿えずに失敗に終わった選手を、報道が取り上げずにスルーするのも今回の特徴だ。以前は「税金の無駄遣い」くらい言われたのに。負けた人、失敗した人を批判するのが良いわけではないが、美化する必要もあえて無視する必要もないように思う。

7.中国はいったいいくらお金を使っているのか想像がつかない点
開会式も派手だったが、運営も徹底している。会場の応援席をよく見ると、応援指導をしている係員がいる。マイナー種目に対しては、当局が応援者を動員までしているとのこと。前日に「明日はこの競技に」と連絡がくるらしい。あとはマラソンを見ていてもまるでセットを走っているかのようにごみひとつ落ちていない絵が流れていた。有名な貧困地域であるフートンは高い塀が作られて、完全に目隠しされていた。これだけ国自体を「演出」しているオリンピックで、開会式の女の子が口パクで腹立たしいとか、そんなことは本当に小さなどうでもいい話だなあ。
ちなみに今回の北京オリンピックの予算は142億ドル。実際にかかっているお金は公表ベースで400億ドル。それ以外のものも含めると600億ドルとの声もある。シドニーで使ったお金が11億ドル、アテネが160億なので、今回のオリンピックの空前絶後さがわかると思う。さすが外貨準備高世界一の中国だ。

8.種目によって妙な時間に決勝がある点
前の話と関係があるが、これはTV放映権料の問題だ。今回のオリンピックの放映権料の8割は米国が支払っている。中心はNBC。NBCといえばGEの子会社であり、中国ビジネスを本格的に展開しているGEの意気込みがわかる。この元を取るためにも、人気競技はゴールデンタイムに取りたい。水泳の決勝が午前、陸上の決勝が深夜なのは、米国の東海外でいい時間だからだ。日本はNHKと民法がコンソーシアムを作って200億円の放映権料を支払っている。マラソン、体操などの決勝時間は日本の意向で決められたという報道があった。もっとも日本時間だと自然な時間だったけど。

9.不振競技で協会やコーチの責任が追及されない点
男子柔道は、明らかに「一本を取るニッポンの柔道」にこだわり、対策を先延ばしにしてきた協会の責任は大きいと思う。その意味でも、協会に歯向かう石井選手が金メダルを取ったのは痛快だった。一本を取れ、でもポイント制の試合で負けるな、というのでは何の戦略も戦術もない。男子サッカーでは、オーバーエイジの大久保の参加をチームが拒否したのは、協会がチームに事前に通知をしていなかったことにチームが激怒したためだ、とのこと。またこれをきっかけに監督とチームが分裂し、大会前に既に3戦全敗を予想した雑誌もあった。もっとも監督は全敗しても「悔いはない」みたいに言っていたけど。
女子マラソンだって、やはり大会直前にフォームをいじるのはリスクが大きいのではないか。これらの不振の背景には、60代、70代の人が幅を利かせている協会の古い体質、新しい変化に対応できない体質があるのではないだろうか。

10.何はさておき、オリンピックがらみで批判が聞こえてこない点
批判といえば開会式の演出くらいなものだ。あとは選手個人、協会、コーチ、全てに関して、批判することはタブーのようだ。まるで報道統制がされているように。もし何か批判的な報道をすると、その後の取材に影響するのだろう。
オリンピックが終わると、待ってましたとばかりに「実はこうだったから失敗して当然だった」みたいな暴露話が出てくるのだろう。

さてオリンピックも残りわずか。柔道、水泳、女子レスリングが終わって一気に盛り下がっている感もあるが、頑張れ!ニッポン!!(笑)

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居酒屋タクシーというネーミング

ネーミングというの不思議なもので、名前ひとつで人の思考を左右することができるものだ。よくあるのは、会社が「本当はこう考えている」という意味を当て字で表現するもの。
例えば社員のことを「人材」ではなく「人財」という文字を使う会社がある。ちょっと一世代前の印象を受けるが、ネットで検索すると今でもけっこう使っているようだ。最近では人財とは逆に会社に損失をもたらす人を「人罪」、言われたことだけやってただいるだけの人を「人在」というそうで、ほとんどダジャレの世界だ。「転職」のことを、展望を持ったキャリア展開と言う意味で「展職」と呼ぶ人材(財?」エージェントもあったなあ。

一方で、社員ではなく顧客のことを言いかえるネーミングもある。例えば「顧客満足度」は失礼なので「お客様満足度」と呼ぶ会社がある。「患者さん」のことを「患者様」と呼ぶ病院、製薬会社がある。面白いのは「売り場」のことを「お買い場」と呼ぶデパートがある。これは伊勢丹だけど。
これらに共通するのは、意図とは逆に、何となく底が見えるというか、本当はそう考えていないけど、必要以上に良い格好をしようとしている印象を受けてしまう。まあ社員に対して意識を徹底させるわかりやすいツールということでは成功しているかもしれない。

さて、マスコミで「共通用語」として使われている言葉には、問題の本質をそらすようなネーミングのものが時々目につく。最近で一番気になる言葉は「居酒屋タクシー」だ。
1.居酒屋なら良いのか?
この問題は驚くべきことに「問題ないのではないか」というインタビューも流されている。ビール1本くらいサービスの一環だろう、と。日本は何て飲酒に関しては許容度の高い国民なんだろう、と驚いてしまうし、そこが狙いなのかもしれない。
ビールが良いか悪いか、というのが問題なのではなく、タクシー代金の水増しによる現金のキックバックや、チケットの買取りが常習化されている、というのが大きな問題だと思うが、「居酒屋タクシー」という呼び方が徹底されてからは、あまりこれらの「キャッシュバック」の問題は取り上げられなくなった。
2.タクシーを使うのが問題なのか?
あと国民の声として出るのが「サラリーマンは終電で疲れ果てて帰るのに官僚はタクシーか」というやっかみの声だ。早速タクシーは極力使わないようにという指示が出され、終電に走る官僚の姿がニュースで報道されたりした。
問題はタクシーに乗るか乗らないか、ではなく、深夜残業が常態化していないか、という点にある。以前官庁に出向していた職場の先輩から聞いたが、官庁は夕方からが仕事だそうだ。翌日の議員からの質問が出てくるのがその頃で、翌朝までに大臣の答弁と想定問答を作っておかなければならないので、国会期間中は毎日朝までの勤務となる。もっとも国会期間外でも、あと少しいればタクシー帰宅が認められる時間だ、ということでその時間まで待っていたりしたそうだ。大臣答弁のためにそこまでするのは「大臣に恥をかかせないように」という意識だそうだが、今どき一般企業で、上司のプレゼンで恥をかかせないように組織総出で夜通し準備する会社があるだろうか??
それだけならまだしも、議員からの質問まで作っていたりする。それは議員秘書の仕事ではないのか?そうした仕事をするために公費で秘書費用を支払っているのではないか?
つまり「居酒屋タクシー」と呼ばれている問題には、ひとつはタクシーチケットを使った横領の問題があるということ。そしてもうひとつ、大きな問題として公務員の無駄な労働時間にまで税金が使われているということがある。そうした問題が「居酒屋タクシー」というネーミングで、どこかほのぼのとした感じを与えているとしたら、マスコミに対する統制の成果だろう。
もうひとつ、教育委員会の汚職がちょっと前話題になっていたが(もう忘れかけられているけど・・・)、そこに「合否の事前通知」という妙な言葉が統一して使われていた。まるで携帯電話の代金を引き落とす前に通知する、みたいなノリの言葉だ。
でもよく考えてみると、これはものすごい「不正」であり、このような不正があるということは合否の判定に関しても不正があると考えるのが普通だろう。でも「事前通知を行っていた地方自治体の数がたくさんあった」という程度の扱いで終わっている。これもネーミングの妙といえるだろう。

表面的なネーミングに惑わされずに、本当の問題は何か?を考えるようにしなければ、テレビを見てそのまま受け取っていると、思考の枠組までコントロールされそうだ。

ところで、話はかわるがTBS「世界ウルルン滞在記」が打ち切りになるそうだ。この番組のネーミングのうち、「世界○○滞在記」という名前を作ったのは、実は私なのです。テレビ業界とは全く縁はないんだけど、番組開始当時にこの番組の企画を担当していた友人から番組名について相談されて、いろいろ考えて2,3個提案した中にありました。「ウルルン」は違うけど。当時のテレビ界では、「なるほど・ザ・ワールド」を超えるネーミングはなかなか出せずに皆が頭を悩ませている、と言ってたっけ。ちなみにその友人は当時の会社をすぐに辞めてしまったので、アイデア元が私だということを誰も証明してくれる人がいません・・・(涙)

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