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2008年6月

タバコ:タスポと値上げの問題

明日から首都圏でも自動販売機でタバコを買う時にカードが必要になる。「タスポ」というそうだ。何の略かな、と思ったら「タバコ・アクセス・パスポート」の頭文字らしい。
自分はタバコを吸わないのでどうでもいいんだけど、最近タスポに値上げ議論にと何かとタバコが話題になるので、ちょっと考えてみた。
日本の成人の喫煙率はどれくらいかというと、2007年5月で男性40.2%、女性12.7%。世界的にみると、2002年のデータで全世界平均が男性39.4%、女性16.0%なので、男性は高く、女性は低い。面白いのは他の先進国。男性は日本人よりかなり低く、女性は逆にかなり高いのだ。米国が男女それぞれ25.7%、21.5%。英国は27.0%、26.0%。ノルウエーだと31.0%、32.0%で男女が逆転する。男女の差が小さいのが先進国の特徴だとすると、発展途上国の特徴は男高女低。まさに日本は喫煙率の傾向は発展途上国と同じだということができる。これはどうしてだろう?歴史的な背景か、遺伝上の特徴でもあるのだろうか?
県別にみて面白いのは北海道。女性の喫煙率が22.5%と、全国平均の12.7%をはるかに超えていて、しかも30年以上首位を守っている。男性も高く、2006年までは20年以上トップだったらしい。これはどうしてだろう?確かに多い気はするなあ。ちなみに2000年12月に、エアドゥが道民は喫煙率が高いことを理由にあげて喫煙席を設定したくらいだ。反対にあって翌年3月1日に廃止されてしまったけど。

1.タスポの問題
既に導入されている地域ではやはり問題が出ているようだ。例えば種子島での実験結果は、導入直後は未成年者の喫煙補導数が減ったものの、その後は逆に増加している。これはカードの売買や先輩・後輩での貸し借りなどが増えたせいである。それはそうだ。タスポは「タスポを発行してもらった人が成人である」ことの証明であり、「タスポを持って自動販売機でタバコを買おうとしている人が成人である」ことの証明には全くなっていない。こうしたICカードシステムは海外だとドイツで導入されているそうだが、どうして免許書ではダメだったのだろうか?免許書を持っていない人だけ、証明カードを発行する、という方が費用もかからずに済み、かつ未成年者に対する抑止力になったのではないだろうか。
それでも全員を対象にカードを発行したとなると、そこで誰かが得をしているとしか思えない。やはり搭載された電子マネー”ピデル”関連だろうか。

2.値上げの問題
タイミングを同じくして、財源確保と健康増進のため、1本1000円程度まで値上げすべきとの議論が始まっている。元は日本財団会長の笹川陽平氏が言い始めたもので、今では国会の超党派議連が発足している。
理屈は単純。日本のタバコは安い→だから喫煙率高い→値上げすればいい→税収はあがり、喫煙率も下がる、というわけだ。
ちなみに海外でのタバコ(20本1箱)の価格は米国817円、英国1160円に対し、日本は273円と確かに差は大きい。あれ、フランスは340円。これは例外かな?
これらの国にならい、日本もタバコを1箱1000円にすると、税収は9兆5000億円増える。ただ値上げすると吸わない人の増えるが(ファイザーのアンケートだと1箱500円になったら54%が、1000円で79%の人が禁煙するという結果が出ている)、仮に3分の1の消費量になっても3兆円以上の増収になるので、健康にもいいし、いいじゃないか、というわけだ。
ここに出てくる登場人物は喫煙者と国(税収の問題)だが、欠落しているプレーヤーが1人いる。JTだ。JTとしては消費量は売上げに響くし、税収がどうなるかは利益に響いてくる。つまり値段と喫煙率と税収をシミュレーションするためには、JTにとっての利益を考慮に入れなければならないが、その点に触れた議論は少ないように思う。
この点を考慮したレポートは某証券会社のJTに関するアナリストレポートで触れられていた。ここでは1989年から2006年の成年人口数とたばこの平均価格をベースに回帰分析を行っている。結論は1箱1000円にしてしまうと、需要は大きく減り、税収もJTの手取り分も大幅に減少してしまう。価格ごとに計算すると、1箱500円で1本あたりの税金を5円増税したときに、税収もJTの取り分も最大化している。従って今後の議論の後、1箱500円程度まで値上がりする可能性はあると思う。
どうしてJTの利益を考える必要があるか。それはJTの最大株主はだれか?を考えると明らかだ。それは「財務大臣」。先週発表された有価証券報告書を見ても50.02%の大株主だ。国が禁煙策を打ち出す一方で、タバコ会社の株主利益を追求しなければならない立場にいる、ということになる。一体どうする気だ!?!?

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公務員は安定なのか?

ここのところ、大阪府の職員と橋下知事とのやりとりがよく取り上げられている。別に橋下知事を支持するわけではないが、大阪府の職員のコメントも一般常識から考えるとちょっと外れていて、まあどっちもどっちという感じかな。
例えば、大阪府職員は4時間あたり15分の「有給休憩」を与えられている。民間平均よりも勤務時間が45分長いということもあるようだが、こうした実質上の「タバコ休憩」を廃止する動きがある。それはそうだろう、というかそんな休憩がある方が驚きだ。それに対する職員の反対意見がさらに驚きで、「休憩が廃止されると昼休みを除いてずっと気を張り詰めて仕事を続けなければならず、気分転換をするのもはばかられる雰囲気になる。タバコを吸いながらの意見交換も重要な情報収集だ・・・」みたいな意見があった。
意見交換は仕事に関する話ならどうどうと勤務時間にすればいいだろうし、そもそもこの人は今まで1日何時間くらい「気を張って」仕事をしてきたのか、ぜひ聞いてみたいものだ。
あと、賃金一律カットに対する団体交渉でのコメント。「私が何か悪いことをしたとでも言うのですか?」
うーん、これが公務員の仕事に対する意識を端的に表しているのだと思う。「悪いことをしていなければ問題はない」と言いたいのだろうか。自分達1人1人が問題提起をせず、結果的に組織全体が傾いてしまったことに対し、心の中で「自分には関係ない」と思うならまだしも、カメラの前で本気でこういう発言をしてしまっているのだ。
彼らの意識の根底には、「公務員は安定している」という考えがあるのだろう。だからこそ公務員になったんだし、周囲には「公務員は安定していていいわね」などと言われるし。
しかしかつて安定していると思われていた伝統的大企業が、株主からの監視が強まるにつれ、ガバナンスが強まり、早期退職や解雇などのリストラを既に行う世の中だ。これまでやはりガバナンスの全く効かなかった公務員に対し、納税者による監視が強まり、その圧力に加え革新的な知事(企業で言うと社長)が送り込まれてリストラに取り組む。構図は同じであり、もはや公務員は安定とはいえないんじゃないだろうか。
そうはいっても「公務員は解雇できない」のかな、と思っていたら、法律上はそうではないらしい。

国家公務員法第78条(本人の意に反する降任及び免職の場合)
職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
第1号  勤務実績がよくない場合
第2号  心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
第3号  その他その官職に必要な適格性を欠く場合
第4号  官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

そう、勤務実績にかかわらず「予算の減少により過員を生じた場合」は「本人の意に反して」解雇することは可能なのである。
ただ、ここがおかしいのだが、実効上は1969年の国家公務員の人数を抑える総定員法制定の条件に「公務員の出血整理や本人の意に反する配置転換は行わない」というのがあり、これが今なお守られているとのことだ。法律に明らかに反する「慣習」であり、法律がある以上は運用上歪められることなく徹底されなければならないのではないか。
それがなぜできないのか?

答えは簡単。徹底するのは公務員本人だからだ。やはり株式会社で、取締役が自分たちを取り締まるわけがないのと同じだ。公務員の合理化は、ガバナンスの仕組みをきちんと作らないと、単なる短期的な賃金カットだけでは絶対に成功しないだろう。

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事件、事故と報道

秋葉原で恐ろしい事件が起こった。心からご冥福をお祈りします。

そしてまたいつもの通り、連日報道が続いている。職場での行動、携帯サイトでのやりとり、親による謝罪、学生時代の友人の証言、文集に書かれているおかしな表現・・・そんなに皆興味があるんだろうか。少なくともマス・コミュニケーションで広く報道する意義があるんだろうかといつも思う。

特に最近少し減ったものの「硫化水素ガス」による自殺。続いて起こる背景には、報道を見ての連鎖反応もあると思う。ある朝のワイドショーではガスが家庭用品の組み合わせで簡単にできることまでばらしてしまっていた。ネットを見れば出てくることだが、報道してどうする?

自殺の報道に関しては、WHOがガイドラインを出している。遺書を公開しない、手段を詳細に報道しない、自殺の理由を単純化して報道しない、センセーショナルな報道を避ける、などだ。しかし日本のTVは全くこのガイドラインを無視しているようだ。やはり見ている側に「予備軍」がいることを前提として報道する、という点をしっかり意識しなければならないと思う。凶悪犯罪もそう。この一連の報道が、「予備軍」を刺激する可能性があることについて、マスコミは責任を持たなければならない。

犯行に使われたナイフがどうとか、携帯サイトへの書き込みがどうとか・・・そうなるとそのタイプのナイフを販売中止にして、携帯サイトへの書き込みは通報を義務付けて・・・という流れになっているが、再発を防ぐには他にやるべきことがあるはずだ。例えば、秋葉原には路上でのパフォーマンスを取り締まるためにたくさんの警官がいたはずだ。彼らがもっとできることはなかったのか?そいういったあたりを追求してもいいのではないだろうか。

TVに対する文句といえば、先日のW杯予選オマーン戦。アナウンサーはしきりに気温が高くて過酷な環境、まさに中東とのアウェーゲームなどとコメントしていたが、現地時間の夕方スタートなどという試合はあり得ないのだ。つまりオマーンチームにとっても経験したことのない暑さの中の試合だったことだろう。どうして夕方スタートなのか?それは日本時間では22時スタートがぎりぎりだったということだろう。そう、今回の試合開始時間は日本での放映権の関係で決まっていたということだ。つまり過酷なアウェーゲームを作り出したのは他でもない、マスコミということ。何やってるんだか・・・

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新ニッポン人

昨夜、TV東京で久米宏の「新ニッポン人」という名で現代の20代の若者に関する特集があった。今の20代は消費性向がそれ以上の日本人と大きく異なるらしい。

まず車。20代の車保有率はこの数年で20数%から10%代前半まで大幅に減少している。別にお金がなくて持てないのではなく、持つ必要性を感じないからだそうだ。

そしてお酒。とにかくビールを飲まない。苦いからだそうだ。1杯目にサワーを頼むとあとはおしゃべりに専念して、酒は飲まない。2杯目に牛乳+生クリームのせを頼んでいる男性も映っていた。20代の3人に1人は酒を飲まないらしい。

次に海外旅行。行きたいとも思わない。自分が若い頃は(いや、今も)海外に行きたくて仕方がなかったけどなあ・・・。かといって国内旅行をするわけでもない。

マージャン、パチンコなんてとんでもない。そんな彼らは、休日はひたすら家にこもってインターネットとゲームで過ぎていく。行動範囲が非常に狭く「1マイル圏内」から出ないそうだ。

これらの「消費しない」傾向は、お金がないからかというと、そうでもない。番組中では極端な例として200億円以上のデイトレーダー(BNFと呼ばれる若者で、ジェイコム誤発注事件のときに40億投入して20億もうけた人だ。確か千葉の実家に住んでいるはずだが、都内の高層マンションに引っ越していた・・・どうでもいいけど)が出ていたが、お金はあってもあまり使うことに興味はなく、昼はぺヤング、夜は立ち食いそば、みたいな感じだった。

消費をしない一方、「貯蓄」はどうか。これがしっかりと貯金をするそうだ。しかも老後に備えて・・・。そんなことでは多少のお金はたまっても、カネを自分の力で稼ぐスキルも身につかないだろう、なんて思ったけど、それは旧ニッポンジンの理屈なんだろう。

そして消費しない彼らも、社会貢献には関心があるようで、海外旅行には関心はないがボランティアツアーにはどんとお金を使うらしい。うーん、難しい奴らだなあ。

番組としての結論は、彼らは生まれた頃がバブル崩壊、そして高校生の頃が就職氷河期と、常に社会の厳しい側面を見て成長してきた。なので自分の、さらにはニッポンの将来に大きな不安を抱いているので、それに備えようとしているのではないか、という分析だった。一貫してそれに対して「理解できない」「かわいそう」「生命力が弱いので心配だ」みたいな批判的なトーンだったと思う。

1.彼らは頼りないのか?

ひょっとすると非常にまともでしっかりしているだけかもしれない。ゲストの年配者が「俺の若い頃は借金してでも金を使えといわれた」と言っていたが、若者と比較するとそっちのほうがよほど子供っぽい。今の20代の方が、よほど真剣に自分のことを考えているのかもしれない。

2.本当に皆考えているのか?

一方、本当にそうなのかなー、という疑問も残る。単に人と関わったり、自分で考えたり、そうしたこと全てが「面倒」なだけかもしれない。その延長戦上が低消費であり、貯蓄だとすると、旧ニッポン人の心配はそのとおりだろう。

3.ところでこの番組は何を言いたかったのか?

最後までこの疑問は解けなかった。いったい何をいいたいんだろう?単なる問題提起か?

車が売れない、お酒が売れない、というテーマを民放で取り上げるのは恐らくタブーなんだろう。TVでやらなければ気がつかないかもしれないのだから。そんな中、せっかく取り上げたのに、分析の切れ味がさっぱりなかった。ゲストは3人。まず小池百合子は自分の政治の話ばかりだった。ETCがどうとか、関係ない話をするし。次に岡野工業社長。年配の代表だが、ひたすら「今の若者はダメ。というかかわいそう」と言うだけで、彼らの性向を理解しようともしていなかった。最後に「新ニッポン人代表」のゆうこりん。それはないだろう。新ニッポン人の不思議さを強調しようとしたのか?

こんな感じなので、せっかく「民報のタブー」に挑戦しようとした興味深い番組が、ただ不思議な若者を映し出しただけで終わったのが大変残念だ。ぜひ続編で、「景気が悪い時代に育ったから」というだけではなく、彼らの心理を解き明かしてほしいと思う。

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