タバコ:タスポと値上げの問題
明日から首都圏でも自動販売機でタバコを買う時にカードが必要になる。「タスポ」というそうだ。何の略かな、と思ったら「タバコ・アクセス・パスポート」の頭文字らしい。
自分はタバコを吸わないのでどうでもいいんだけど、最近タスポに値上げ議論にと何かとタバコが話題になるので、ちょっと考えてみた。
日本の成人の喫煙率はどれくらいかというと、2007年5月で男性40.2%、女性12.7%。世界的にみると、2002年のデータで全世界平均が男性39.4%、女性16.0%なので、男性は高く、女性は低い。面白いのは他の先進国。男性は日本人よりかなり低く、女性は逆にかなり高いのだ。米国が男女それぞれ25.7%、21.5%。英国は27.0%、26.0%。ノルウエーだと31.0%、32.0%で男女が逆転する。男女の差が小さいのが先進国の特徴だとすると、発展途上国の特徴は男高女低。まさに日本は喫煙率の傾向は発展途上国と同じだということができる。これはどうしてだろう?歴史的な背景か、遺伝上の特徴でもあるのだろうか?
県別にみて面白いのは北海道。女性の喫煙率が22.5%と、全国平均の12.7%をはるかに超えていて、しかも30年以上首位を守っている。男性も高く、2006年までは20年以上トップだったらしい。これはどうしてだろう?確かに多い気はするなあ。ちなみに2000年12月に、エアドゥが道民は喫煙率が高いことを理由にあげて喫煙席を設定したくらいだ。反対にあって翌年3月1日に廃止されてしまったけど。
1.タスポの問題
既に導入されている地域ではやはり問題が出ているようだ。例えば種子島での実験結果は、導入直後は未成年者の喫煙補導数が減ったものの、その後は逆に増加している。これはカードの売買や先輩・後輩での貸し借りなどが増えたせいである。それはそうだ。タスポは「タスポを発行してもらった人が成人である」ことの証明であり、「タスポを持って自動販売機でタバコを買おうとしている人が成人である」ことの証明には全くなっていない。こうしたICカードシステムは海外だとドイツで導入されているそうだが、どうして免許書ではダメだったのだろうか?免許書を持っていない人だけ、証明カードを発行する、という方が費用もかからずに済み、かつ未成年者に対する抑止力になったのではないだろうか。
それでも全員を対象にカードを発行したとなると、そこで誰かが得をしているとしか思えない。やはり搭載された電子マネー”ピデル”関連だろうか。
2.値上げの問題
タイミングを同じくして、財源確保と健康増進のため、1本1000円程度まで値上げすべきとの議論が始まっている。元は日本財団会長の笹川陽平氏が言い始めたもので、今では国会の超党派議連が発足している。
理屈は単純。日本のタバコは安い→だから喫煙率高い→値上げすればいい→税収はあがり、喫煙率も下がる、というわけだ。
ちなみに海外でのタバコ(20本1箱)の価格は米国817円、英国1160円に対し、日本は273円と確かに差は大きい。あれ、フランスは340円。これは例外かな?
これらの国にならい、日本もタバコを1箱1000円にすると、税収は9兆5000億円増える。ただ値上げすると吸わない人の増えるが(ファイザーのアンケートだと1箱500円になったら54%が、1000円で79%の人が禁煙するという結果が出ている)、仮に3分の1の消費量になっても3兆円以上の増収になるので、健康にもいいし、いいじゃないか、というわけだ。
ここに出てくる登場人物は喫煙者と国(税収の問題)だが、欠落しているプレーヤーが1人いる。JTだ。JTとしては消費量は売上げに響くし、税収がどうなるかは利益に響いてくる。つまり値段と喫煙率と税収をシミュレーションするためには、JTにとっての利益を考慮に入れなければならないが、その点に触れた議論は少ないように思う。
この点を考慮したレポートは某証券会社のJTに関するアナリストレポートで触れられていた。ここでは1989年から2006年の成年人口数とたばこの平均価格をベースに回帰分析を行っている。結論は1箱1000円にしてしまうと、需要は大きく減り、税収もJTの手取り分も大幅に減少してしまう。価格ごとに計算すると、1箱500円で1本あたりの税金を5円増税したときに、税収もJTの取り分も最大化している。従って今後の議論の後、1箱500円程度まで値上がりする可能性はあると思う。
どうしてJTの利益を考える必要があるか。それはJTの最大株主はだれか?を考えると明らかだ。それは「財務大臣」。先週発表された有価証券報告書を見ても50.02%の大株主だ。国が禁煙策を打ち出す一方で、タバコ会社の株主利益を追求しなければならない立場にいる、ということになる。一体どうする気だ!?!?
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