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3年で辞めた若者はどこへ行ったのか

書店で、城繁幸著「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」を見かけて、特に関心もなかったけど試しに読んでみた。著者は富士通の人事を退職して「内側から見た富士通・成果主義の崩壊」を出版し、話題になった人。こんな内部告発を本にしてしまっては、もうこれで食べていくしかないだろうな、と思っていたらその後は「人事コンサル」として本を書いたり、講演をしているようだ。そして近年、「若者はなぜ3年で辞めるのか」が再度ベストセラーになった。

富士通の本を出すときも「知ってしまった以上、言わないとだめだと思った」と言っていたが、何というか子供っぽいことばかり言う人だなーという印象がある。そういう意味で、最近どんな本を書いているんだろう、と思って買ったわけだ。新書だから1時間あれば読めるし。

内容は会社をすぐに辞めた若者のその後のインタビューを脚色して並べている感じ。言っていることは・・・

1.会社員は皆、1度就職したら給料が安くても、拘束時間が長くても、文句を言わずに退職まで会社にぶらさがる。=これを「昭和的価値観」と名づける。

2.そんな人たちを見て、自分の将来の姿に絶望感をいだいた若者は、「昭和的価値観」にとらわれず、3年以内に会社に見切りをつける。

3.その後彼らは「やはり辞めてよかった」と言っている。

4.ということで「昭和的価値観」の人達は最悪だ。

まあ、こんなところだろう。別に目新しいことが書いてあるわけでもなく、全く反論はないのだが、どうも彼の主張には同意できない。新卒で入社した会社を3年で辞めることが成功の人もいるだろうが、そうではない人もたくさんいると思う。

■ 新卒3年で辞めることに対する反論

3年で仕事の適性が本当にわかるのだろうか?自分のことを思い返しても、3年というのは自分の欠点、問題点に気づくか気づかないか微妙なタイミングだろう。つまり3年で辞める人の中には、最初の壁にぶちあたる(もしくは壁があると気づく)前に辞めてしまう人もいるだろう。

彼らは「この仕事は、自分が全力を出す価値のない仕事だ」と考えるのだろう。しかし本当にそうなのか。全力を出すこと自体、自分にはできると思っているのだろうか?もちろん全力を出すことができる人もいる。そういう人は場所を変えて、成功することもあるだろう。しかし、全力を出すことができない人もいる。そういう人は、場所を変えてもまた場所のせいにするだけだ。

仕事をするにあたって、個人の能力差(いわゆる地頭)の差は確かにあると思う。極端な例だと、覚えたくなくても1度見た数字を忘れないという人は確かにいる。まあそんな人は世界に一握りであって、大多数は小さな差の中に収まっている。その能力の差よりも大きいのは「全力を出し切れるかどうか」の差だと思う。それに気づかず、全力を出す前に「全力を出す価値がない」と判断して仕事を変えるのは、ちょっともったいないかな、と思う。もちろん、全力を出せる人が結果的に早めに決断する、ということであれば賛成だ。

■ この本に対する感想

1.どうも論理的に抜けがありすぎる。また言葉も「絶対に」「完全に」「~だけ」というような口調だが、根拠がわからない。なので、やはり子供っぽい印象が残る。自分にその点を批評するだけの論理力もないから、この点はこれくらいにしておきます。

2.昭和的価値観の人はどこにいっていもいる。そうした人をいかにのせて動かし、組織を動かしていくのか、がマネジメントだと思う。つまり一担当者という役割を超えて、「会社をどう動かすのか」という視点を、社会人は常に持っていなければならない。たとえ一担当者としても。著者の視点からこの点は欠けているのではないか。

3.そして最大の違和感。「昭和的価値観」は自分はもちろん同意できない。そして著者の主張は反「昭和的価値観」。でもこれにも同意できない。つまり「昭和的価値観」vs「反・昭和的価値観」のどちらにも自分の価値観はあてはまらない。

この本のベースにあるのは昭和的価値観の人達に対する批判というか、「文句」のような気がする。彼らはもう成長できないんだから、彼らに対処するためには自分が成長するしかないだろう。でも著者は非常に「無邪気な」姿勢でこうした人達に真っ向から歯向かってみせている。著者自身のブログではあえてそう試みたようなことが書いてあるが、誰に対して何の効果を狙っているのか理解できない。

ということで、1時間もかからず読んでしまったが、平積みになっているということは売れている本なのだろう。誰が買っているのかな。昭和的価値観の人が目から鱗を落とすのか。入社直後に辞めたくなっている人が背中を押してもらっているのか。

この本を読んでいて、尾崎豊の「卒業」を連想したのは自分だけだろうか。

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