サッポロが買収提案に反対を表明
先日も書いたサッポロ・ホールディングス vs. スティール・パートナーズの買収の件で、今日ニュースがあった。サッポロの取締役会が買収提案に対して「株主全体の利益を著しく損なう恐れがある」として、反対することを表明した。
村上社長は記者会見で「スティールはひたすら自らの利益を追求する存在としてふるまう可能性が十分にある」と述べたとのこと。十分にあるのではなく、100%そうだ。ただ自らの利益と言うよりは出資者の利益だろうけど。それの何に問題があるのだろうか?
また、真摯に経営に参加する意思がなく、支配株主としての責任ある行動を取ろうとしない、とも言っている。スティールが果たしてそういう存在かどうかがここでは問題視されているが、それよりも問題なのは、サッポロはどのようなファンドが相手であれこのような反応をしただろう、ということだ。仮に真摯に経営する意思を持ったファンドが来たとしたら、支配株主としての責任ある行動というのはひょっとしたら経営権を奪って株主資本価値を最大化させることかもしれない。スティールが「建前上」意見しているように。それともサッポロは、支配株主は経営に波風を立てずに現経営陣に任せておけばいい、と言いたいのだろうか。
村上社長は、スティールが買収後の経営方針としてあげた「高級ビールや不動産など特定分野に絞った事業計画」を、買収後の経営方針として認めていない旨の発言をした。ではサッポロが2月15日に発表した2008~2009年の経営方針&2016年に向けた(創業140周年:この設定自体が自意識過剰というか、株主には関係ないと思うが・・・)中期経営方針を読んでみよう。
これからの2年間の施策は「持続的成長へ向けた取り組み」と、「強みを生かした事業展開と収益基盤の強化」というのが大テーマ。内容を読んでみると、「高付加価値の創造」とか「グループシナジーの拡大」といった、どこの会社の中期計画にも書いてあるような抽象的な言葉が並んでいる。その中に「国内酒類事業での高付加価値化への転換」「不動産事業でのグループ資産を中心とした価値向上」と書いてある。あれ、どこかで読んだような気が・・・そう、スティールが言っていることと同じなのだ。
サッポロは文書の中でも「当社の経営には幅広いノウハウと豊富な経験、そしてステークホルダーとの関係への理解が不可欠」としているが、この経営計画を見る限り現経営陣の幅広いノウハウを垣間見ることはできない。仮にそれを持っているとしても、株主に対してそれを伝えられない限りは持っていないとの同じだ。
そんなサッポロは、とりあえずスティールの出方を見るようだ。考えられる打ち手はこんな感じだろうか。
1.どこかに助けてもらう: スティール vs. 明星のときの日清のような感じ。ただサッポロは文書の中でスティールからホワイトナイトを探すよう示唆されたことに非常に不快感を持っているようなので、これはないかもしれない。
2.自分達の方が、スティールの示すプレミアムよりも企業価値を向上させることができる、と株主を説得する: これが本来の筋だろう。サッポロは今月中期計画を発表しているところを見ても、こうしようとしているのかもしれない。あまり説得力は感じられないが。
3.MBOして経営陣で買収してしまい、非上場化する: 本当に会社を守ろうというならこれも筋だ。でもそこまでする意思決定も今の経営陣には難しいだろう。
4.スティールがTOBをかけてきたら買収防衛策を発動して、株主の資金でスティールに儲けさせ、お引取り願う: ブルドックのケースと同じ。
もう4しか考えられないだろう。また海外投資家から呆れられることになりそうだ。
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