JALと個人情報保護法
先月末、JALの客室乗務員190名と組合「キャビンクルーユニオン」が、最大労組の「JAL労組」に対し、本人の同意なく「個人情報」リストを作詞し、保有していたとして訴えを起こした。この件は2月にも問題になって処分もあったが、まだ解決していなかったようだ。(もっともこのニュースはこれまた不思議なことに翌日からマスコミはぱたりと報道を止めているが・・・)
JALが作成していた「個人情報」リストには、生年月日、住所から始まり、病歴、思想、性格、容姿など150項目!にわたるものだそうで、なかには「不妊」「バカ」「ブス」などのコメントも入っていたらしい。
あまり議論する点もないくらい低レベルの話だが、このニュースが流れるときに、「個人情報保護法」という言葉が安易に使われているのが気になった。
「個人情報」とは特定の個人が特定できる方法全て、つまり年齢、性別、生年月日、電話番号をはじめ、勤務先、クレジットカード番号、学歴、結婚暦などであり、さらには思想、医療情報、犯罪歴などの「センシティブ情報」までも含まれる。そして個人情報保護法とは、こうした個人情報を5000件以上扱う「事業者」が、個人情報を取得するときはその用途を明確に示して同意を取ること、その目的以外に使用しないこと、を定めた法律だ。ただし、ここで定義されている個人情報はリスト化されるなどして容易に検索ができる形態のものであり、ローデータは含まれない。(例えば会社員が取引先の名刺をごそっと紛失した場合、名刺入れに入っているものは問題にならないが、アイウエオ順に名刺保管ファイルに入れたものだと立派な「個人情報データベース」とみなされる。)
今回のJALのデータは、上司との評価の面接などでの話を蓄積したものであり、「ここでの話は評価にのみ使う」と合意がされていれば、個人情報保護法の観点からは問題がないと思う。ただし、もし本人から聞いた話だけではなくいろいろな噂や素行調査の結果などが入っているとすると、それを「検索できる形」で所有していたのは問題だろう。
しかし、「ブス」「バカ」といったことが書かれていた、というのは個人情報保護法とは何の関係もなく、「プライバシーの問題」か、それ以前の管理職のレベルの問題だ。
ここがよく誤解をされる点で、個人情報保護法とプライバシーの侵害は線引きが難しい。JR福知山線の事故のときに、病院がけが人情報を「個人情報保護のため」公開しなかったり(これはその後生命に関する場合や本人が判断できない場合は除くことになった)、身近な例だと学校で連絡網が作られなかったり同窓会名簿が廃止になったりといった「過剰反応」がまだ多い。
まずは「個人情報保護法」についてもう少しわかりやすく説明をすること。さらに、この法律は線引きが難しいので、セクハラの問題のように具体例をもっと示す必要があると思う。(内閣府は本法律にあてはまらないケースを例示しているが、まだ十分とはいえない)
さて、このJALの問題でもう1つ興味深いのは、これらのデータが評価に使われるとして、いったいどのような方法で査定が行われているのか、ということだ。人物評価のデータベースは日本の会社ならどこでも持っていると思うが、150項目というのは異常だろう。細かければ細かい程優れたデータベースということで増えていったんだろうか。いわゆる「人物評価」「能力評価」が行き過ぎて形骸化するとこうなるんだろう。このデータベースからは「仕事のアウトプット能力」は評価できないでしょう。
こういうニュースを見るたびにJALには「ポリシー」として乗らないようにしたい、と思うんだけど、プライベートの国内線で自分が乗るのはほとんどJALだ。プラス1000円のクラスJが快適なもので・・・。ファーストクラス導入を機会にクラスJを廃止してくれたらもう乗らないんだけどなあ。それは全然ポリシーじゃないなあ。
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