サブプライムローン
欧米大手金融機関の、サブプライムローン関連の損失が2007年内で7兆円を超える見通しとの記事があった。
「サブプライム」とはプライム(優良顧客)層以外という意味で、ここで言うサブプライムローンとは、米国で所得水準がそれ程高くない人たちに貸し付けられた住宅ローンのことだ。もちろん金利は通常の住宅ローンよりも高い。
1. なぜそんなローンが組めるのか?
米国は住宅価格がずっと上昇してきた。おかしな話だが、住宅価格が上がるということは住宅ローンの担保の価値(つまり借金して買った自宅の売値)も上がるということで、借金者は担保能力が上がることになる。それを前提にして、貸し手は多少信用力に劣る人達にもローンを組ませてきた。例えば最初の数年は低金利、あるいは金利分の返済だけでいいという形で。まあいざとなれば自宅を売れば、差額でローンを返済し、利益も出たくらいなので、貸し手も借り手も問題はなかったのだろう。むしろこのような状況なので、住宅ローンで家を買い、値上がりしたところでそれを担保にして生活資金を借りる、という人もいたくらいだ。
2. 何を騒いでいるのか?
日本の消費者金融と同じで、米国の金融機関はどんどん低所得者層に貸し込んだ。またヘッジファンドはそれを証券化して、ハイリスク・ハイリターンの商品として世界中の金融機関に売り込んだわけだ。
日本で地価上昇を前提としたバブル経済がはじけたように、2006年に米国の住宅価格上昇にブレーキがかかった。
とたんにローン支払いの延滞者が急増して、サブプライムローン自体が焦げ付き、同時にそれを組み込んだサブプライムローン証券も焦げ付いた、と。さらに証券化して売り出したヘッジファンドは、損失を最小化するために持っている株式を売りに出して、米国の株式市場全体にも影響が波及し、それが日本の株式市場にも影響している。そういう状況だろうか。
3. 何が問題なのか?
この問題はまた「マネーゲーム」とか「錬金術」とかいう心情的な批判を浴びているが、金融商品としてはハイリスク・ハイリターンの証券であり、特に問題はないと思う。問題はそのリスクを低く見誤った点にある。この仕組みで経済は潤うが、別にお金が降ってくるわけではないので、誰かがそのお金を負担していたのだ。その誰かとはこの仕組みでリスクを負担する人全員、つまりローンの借り手と貸し手、証券化したヘッジファンド、証券を買った世界中の金融機関などだ。つまりたくさんの登場人物で作り上げたバブルであり、その分影響は根深いものがあるんだと思う。
4. 日本経済への影響は?
日銀は日本経済への直接的影響は小さいとコメントしている。ただし、これは日本の株式市場への「波及効果」の部分だけに対するコメントであり、日本の金融機関がどれくらいこの証券を自社商品に組み込んでいるかは今ひとつはっきりしない。想像だけど結構な金額を買っているんじゃないだろうか。だとすると、今後決算期ごとに損失額が膨らみ、日本の金融機関への「直接的影響」はむしろ今予測されているよりも大きくなるんじゃないだろうか。そう考えると、日本経済への「直接的影響」はまだまだこれから明るみになるだろう。株式市場への影響を考えて多分小出しにされるだろうけど。
| 固定リンク
「ファイナンス」カテゴリの記事
- キリンとサントリーが破談に その2(2010.02.10)
- キリンとサントリーが破談に(2010.02.08)
- キリン・サントリーの合併(2009.07.28)
- 日本経済は他のどの先進国よりも急速に縮小している(2009.01.28)
- 株価は底なのか?アンパンマンは?ドリカムは?(2008.10.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント