会社は誰のものか?
会社は誰のものか?日本では何年かに一度必ず議論になるテーマだ。M&Aが話題になると買収側は「会社は株主のものなので、企業価値を最大にすることこそ企業の使命だ」と言う。それに対して「いや、社員のものだ」「いやステークホルダーはたくさんいるじゃないか」という議論になり、あげくの果てに「誰のものでもなくみんなのものだ」となる。
この問題が議論の対象になるのは日本くらいなものらしい。海外では「誰のものか?株主のもの。以上」で終りだ。経済学的に言って、会社は株主の所有物である。おしまい。
じゃあ精神論的にはどうかというとそりゃー思い入れのある人はいっぱいいるわけで、誰のものだっていいじゃない、という話じゃないのかな。でも、M&Aの話の文脈の中でこの問いが出てきたときは、経済学的にみた所有者が誰か、で終りであって、別にこういう考え方がアメリカ的とか、ハゲタカだ、とかそういう議論自体がナンセンスだと思う。
例えば東京の不動産の話をしているときに、「東京タワーは誰のものか?」という問いが出たら答えは何でしょう?
あれは別に都の持ち物でもなく、TV局でもなく、所有者は「日本電波塔株式会社」なのです。それに対して「いや、あれは日本の高度成長のシンボルだから国民皆のものだ」とかいや、世界に誇る東京の名所だから東京都民皆のものだ、とか、ましてや「いや関係者皆の物だ」なんて議論すること自体に意味がない。「会社は誰のものか」という議論もこれと同じようなものだと思う。
話はかわって、「ワタミ」の渡邉社長。最近手帳は売るわ、介護、学校ビジネスに手を出すは、教育再生会議の「有識者」メンバーになっているわで、いったいいつ会社の仕事をしているんだろう、と不思議でならない。その彼が最近雑誌でこう言っていた。
「社員から人気があるか、お客様、株主から支持されているかどうかは気にしない。自分がやりたいことを明確にし、それに従う。これくらい自信がないとやりたいことはできない。株主には、もし自分の考えが間違っていたら社長を降ろしてくれ、と言っている。自分が会社に一番貢献している自信、自覚がある。」そのコメントのそばには誇らしげに安部前首相と一緒に写っている写真が何枚か。
これを見ている社員はともかく、株主はどう思っているんだろう、と。渡邉さん、ワタミはあなたのものじゃなくて株主のものだろう、と。そこでワタミの株主構成を見てみたら、筆頭株主が小さな損保代理業の会社「アレーテー」25.9%、2位が渡邉氏本人で5.3%、3位がサントリー4.8%となっている。アレーテーはもともと渡邉社長が株をそっくり譲渡して筆頭株主になっているので、ちょっときな臭いがいずれにしても株の半数近くは渡邉氏のコントロール下にあることがわかった。ワタミはほとんど渡邉社長の会社だ、ということだ。なーんだ、だったら彼の発言はもっともだ。とはいえ、2006年夏以降、居酒屋業界は既存店前年割れが続いており、ワタミも一時の業績悪化から回復はしたがまだまだ好調とは言えない。肩書きを増やすのも楽しそうだけど、もう少し真面目に本業の仕事をした方がいいんじゃないだろうか・・・・・
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