信越化学の社長交代:一気に12歳若返る!!

信越化学の金川社長の交代が発表された。新聞、雑誌でも名経営者としてあまりにも
有名で、信越化学の株価にはこの社長がいるからこその株価だという意味で
「金川プレミアム」が上乗せされているとも言われているほどだ。
それほどの経営者なので、後継問題も常に指摘されてきたけど、結局は副社長の承認
という順当な引き継ぎとなった。
これで一気に社長も12歳若返って会社も新たなスタートだ・・と思ったら、新社長は72歳。
84歳から72歳への引き継ぎだ。
以前と比べると日本の社長も、大企業でも若い人がなるようになったと思うけど、特に
ヨーロッパのグローバル企業なんかだと40代の社長が珍しくないので、70代の新社長
は驚きだろう。
別に年齢は関係ないとはいえ、40代と70代だと体力、スピードでどうしても差があると思う。
さらに驚いたのは、金川社長の会長就任。まだまだ経営にかかわっていくというのだ。
日本は社長を辞めると会長に、次は相談役、その次に顧問、さらには最高顧問に・・・と
社長を退任してもずっと経営に関わるケースが多い。これでは新社長も思い切った手を
打てないだろうなあ。

そう思っていたら同じ日に、ブーズ&カンパニーからCEOの交代に関する調査の
レポートが発表されていた。これを見ても日本がちょっと欧米、アジア各国と違って特殊な仕組みであることがわかる。
調査は2009年1月時点の株式時価総額で世界上位2500社に対して行われている。

まずは社長になる際、社内から昇任する形で社長になった割合から。
日本:96%  北米80%  欧州73%  アジア(日本除く)72%
日本はほとんど全てが社内からの登用だ。これは会社員の出世競争の
最後が社長、ということ。社長が「専門職」という認識があれば
外部から「プロ社長」の登用が海外のように増えるんだろう。

次に社長に就任した時の年齢について。
日本:66歳  北米、欧州、アジア:グラフしかないけど50歳位
これはだいぶ差がある。ちなみに世界の平均は53歳なので、日本はちょっと突出して
いる。
そうなると社長在任年数は逆の結果になるわけで、
日本:5.6年  北米:8年くらい  世界平均6.3年
高齢で社長になるので在任年数は当然短くなる。何となくイメージは日本は長期的な
視野での経営、北米は短期的視野での経営みたいな感じがあるけど、北米の社長の
方がじっくりと社長業に取り組めるようだ。

次に、社長就任時に、前社長が会長として留まる割合をみてみる。
日本:75%  北米:46%  欧州:22%
これも日本がちょっと異常値だ。60歳を超えてようやく社長にたどりついて、すぐに
辞めなければならないので、その穴埋めに会長に就任する、という感じだろうか。
それにしてもその後の相談役以降も含めると長すぎる。
逆にそのおかげで急には新しいことには取り組めないので長期的な視野での経営が
できているということか??

もう1つ面白いデータがあって、前社長が会長に留任している
ケースとそうでないケースで業績に差があるか、というデータだ。
ここで業績の指標としては各地域の株式インデックスと比較した「市場調整後株主
リターン」を使っている。まあその妥当性は別として、結果はこうだ。
会長留任CEO:1.8%  そうでないCEO:3.1%
やはり自分を引き上げてくれた人が会長にいると、彼がやった施策を否定して改革する
なんてことは難しいんだろうなあ。

この結果をみても、日本の社長の一番の経営課題は、いかに後継者を育てて、
引き継いだ後はきっぱりと退場できるかということだと思う。
日本の会長のみなさん、あまり頑張らないように!!

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スターバックスVIAのマーケティング

スターバックスで4月から販売を開始した「スティックコーヒー」
のVIA。ここのところスタバに行くことがものすごく多い
(ほぼ毎日?)んだけど、自分が見ている限りはVIAが売れている
のを見たことがない。
米国では昨年発売されてから、業績の傾いたスタバの救世主みたいに
言われていて、満を持しての日本投入だったけど、さてどうなるん
だろうか? 今日発表の決算でも、既存店売上高が前年比5%もダウン
している、スタバ・ジャパンの救世主になれるのか??

1.VIAとは
スティックに入っている粉末をお湯で溶かして飲むコーヒー。
ただ、製法はインスタントと違い、商品化まで20年をかけたとのこと
で「スティックコーヒー」という新しいジャンルの商品だ、と言って
いる。ちなみにVIAとはイタリア語でRoad。もう亡くなってしまった
開発者のDon Valencia氏のVと最後のiaをとった。
米国では昨年発売、この春から日本とUKで発売。
米国では、スタバのドリップコーヒーと飲み比べキャンペーンをやり、
大半は違いがわからなかった・・・というのが評判になった。
そういえば日本でも最初の数日間だけ無料飲み比べやっていたけど。

2.インスタントコーヒー市場
スタバはVIAの日本発売の時にもトップが来日したり、ずいぶん
日本への期待が大きいんだなーと思っていたら、日本は世界最大の
インスタントコーヒー市場があるそうだ。2009年の日本市場の規模
は2.3十億ドルで、米国の3倍の規模になる。
日本のコーヒー全体の63%がインスタントコーヒーで占めているん
だけど、我が家はインスタントを全く飲まないのでちょっとピンと
こない。日本のインスタント市場の70%はネスレがシェアを押さえて
おり、ほぼ独占市場。これはそうだろうなあ。逆にネスレしか思い
浮かばないくらい。
日本の少し前に発売されたUKもインスタント比率は高く、コーヒー
全体の81%にも及ぶ。米国が40%であるのと比べると、これは会社
としても期待をかけるだろう。

3.マーケティングの疑問
ところで不思議な点だらけなのがマーケティング面だ。

(製品のコンセプト)
根本的にこれがよくわからない。
つまり「安いスターバックスコーヒー」なのか?
それとも1杯分100円の高いインスタントコーヒーなのか??
普段スタバで飲む人に家でインスタントを飲んでほしいのか、
普段インスタントしか飲む習慣のない人にスタバのインスタントを
飲んでほしいのか?

(価格)
コンセプトがはっきりしないと価格も妥当な感じがしない。
「安いスタバ」であれば、味がドリップコーヒーと本当に変わらないと
いうのに100円は安すぎるのでうそくさい気がするし、「高いインスタ
ント」であれば12杯分1000円はよほどネッスルのインスタントと味が
違わないと継続的に出さないだろう。
まして、今はマックでもけっこうおいしいドリップが低価格で売られて
いるのでなおさら100円というのが微妙すぎる。価格というのは高くて
も安くてもメッセージを持つということか。

(販売チャネル)
一方でVIAはスタバの店頭でしか買えない。サントリーから出ている
スタバマークのついた紙容器コーヒーはコンビニでも売っているのに。
もし日本の巨大なインスタント市場を狙っての参入だったら、インス
タントコーヒーが売られている場所にVIAがないと、かわりに買うと
いうことにはならないんじゃないかな。

4.スタバの考え
疑問に対するヒントは、発売時に記者発表の席で説明した、スタバ
ジャパンの説明にある。
担当者いわく、ターゲットと想定しているのは年配ではなく、若い層。
職場の近くにはスタバがあるのでそこで飲めるが、だいたいは自宅は
郊外にあり、近所にスタバがない。時間に余裕のある年配層は時間を
かけておいしいコーヒーを入れるが、彼ら若い層には時間がない。
なので、おいしいインスタントは若い層の「ホームユースコーヒー」
になる、というような説明だ。
うーん、そんな人は本当にいるかなあ・・・?
まず会社の近くでスタバに行く若い層は、スタバに何をしに行くのか?
コーヒーの味を味わいに行くのか?
答えはスタバの店舗で客を観察すれば答えは分かると思うんだけど、
ゆっくりしたり、気分を変えたり、勉強をしたりといった「場」を
求めてるんじゃないだろうか。スタバの最初のコンセプトが、自宅でも
職場でもない第3の場所「The third place」だったはずだし。
あ、今日発表の決算短信にも依然として書いてある。
スタバをそういう使い方で使う人が、家でインスタントは飲まない
だろう。彼らが家で手軽に飲めるおいしいコーヒー・・・といえば、
思いつくのはネスプレッソ。
最近ネスプレッソや同じようなカプセル型のエスプレッソメーカーの
売り場がすごく混んでいる。彼らこそ、自宅で手軽においしいコーヒー
を求めていた人だろう。
という自分も、実は最近買ってしまいました。手軽は手軽だけど味は
そこそこ・・・と思っていたら、驚いたことに味もおいしかったので。
スタバで下手な人が入れるラテよりも、ネスプレッソで作るラテの方が
おいしいくらいです。これが。

5.ではVIAはどうするのがいい?
このままではあまり売れないで店頭にただ並んでいる状態になるんじゃ
ないだろうか?
当初心配されたような、店頭で飲むドリップとのカニバリはなさそう
だけど、逆に相乗効果もない。立ち上がりでぱっとしないイメージがつく
と挽回するのは難しいだろうから、早急に立て直した方がいいだろう。
実際飲んでみての第一印象は、入れたてのときはまさにこれぞ
「インスタント」という香りがする。これを米国のように「ドリップと
かわらない」とスタバ愛好者に言っても、「いやー、やっぱりインスタ
ントでしょ」となるだろう。
一方、少し時間がたつと、最初のインスタント臭は消えて、確かにドリ
ップとかわらない気がしてくる。温度のせいか、香りが飛ぶせいか
わからない。
なのでインスタントのかわりとしては、1杯分100円払ってでもこっち
の方がいい。となると、やはり「高いけどおいしいインスタント」と
して売るべきだろう。
そのためにはチャネルは店頭ではなく、インスタントコーヒーを売って
いる
場所だろう。店頭では店員が手書きで書いた「私のVIAストーリー」
みたいなのが貼られているけど、その内容はバラバラでピンとこない。
もっとCMで明確なメッセージを決め打ちした方がいいんじゃないかな。
旅行に、出張に、キャンプに、もしくは毎日の自宅でのゆったりした
時間に、みたいに。(インスタントにスタバのブランドが効かないと
したら、別ブランド展開をした方がむしろ良かったのかも)
それにしてもどうしてこんなにアーケティングに違和感があるのかな、
と考えてみたが、ひょっとすると今の展開は米国の本社の意見が色濃く
反映されているんじゃないだろうか。
米国で成功したものをそのまま市場の大きな日本でやっているんだと
したら、米国と日本ではスタバの使われ方も、自宅でのコーヒーの飲ま
れ方も、インスタントコーヒーの浸透度も違うので日本のマーケ部隊に
もっと頑張ってほしいなあ。

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王将の新人研修は自己啓発セミナーか?

相変わらず売上前年比アップを続けている餃子の王将。
マスコミの好意的な報道もパブリシティとして大いに貢献しているように思う。

先日の日テレでは120人の新入社員を対象にした新人研修が取り上げられていた。
会場につくと携帯電話などは没収され、外界とは遮断される。
まずは大声で挨拶させたり、
社訓を時間内に言えるかどうかのテストなど。
要するに今の自分は何もできない、ということのすりこみみたいな感じかな。
研修中はひたすら大声で怒鳴られる。納得できず切れそうになると
「これはお前のためなんだ」と
やさしく声をかける。缶詰め状態の研修会場でひたすらこれが繰り返される。

研修担当者が何度も繰り返していたのは、「お前は自分のためにやってるんだよな、
そうだよな」というセリフだった。恐怖の下での単純作業で、判断力が鈍っている状態で
こう言われると、そんな気がしてくるんだろうか。

研修の最後には大声で泣きながら今後の抱負を絶叫する。参加者全員で拍手喝采だ。
そして研修担当者は「70点、合格」と言って抱きしめる。
缶詰め→現状レベルの否定→基礎訓練→最後にほめる→達成感 と書くと普通の熱い研修だけど、
外界と遮断→劣等感・自己否定→恐怖感→単純作業→判断力の低下→新たな価値基準のすりこみ→無条件肯定
というふうにしか見えなかった。
洗脳とは違って夜もたっぷり睡眠をとらせている。(23時消灯!)一番近いイメージは
「自己啓発セミナー」だろうか。
VTR後、驚いたのは徳光さんの称賛コメント。いくらなんでも今回のVTRはちょっと引くだろうと思ったけどなあ。
コメンテーターのワタミの社長はさすがに「自分の会社ではこのような
研修はやりませんが・・・」とチクリと否定した。
ネガティブなコメントは禁止だったと思うので、精一杯の否定だったことだろう。

1.すべては自分でやりたくてやっているのか?
一番大きく感じる問題点はこれだろう。王将は店長にメニューの裁量権など大きく権限が任されていると強調しているが、
それはこのような研修ですりこまれた感情であり、本当の意味での判断力はゼロなのではないか。

2.すりこみの効果はいつまで持続するのか?
いったんすりこまれた服従精神はどれくらい持続するものだろうか?
ちなみに彼らはこれからチーフ、店長(平均6-7年後)を目指して、現場で熱い店長から怒鳴られ続けるんだろう。
王将の店長の研修はちょうど1年くらい前に同じ日テレの徳光さんの番組で取り上げられていたが、
基本的に同じ感じ。
研修担当から罵倒→店長としてまだ甘いと自己否定→単純訓練のくり返し→最後は合格→抱きしめられる
このサイクルだ。店長から先はFCとして独立の道か、エリアマネージャーなどの本部スタッフの道になる。
FCとして独立する際も比較的期間の長い研修がある。王将のサイトを見ると、他にもチーフ研修、指導力研修、
調理研修、接客研修、海外研修、フォローアップ研修など、「研修」が目白押しだ。
こうしてすりこみ効果を持続するのだろう。
そこから覚めた人間は退職するのだろうが、退職率のデータは見つからなかった。

3.これはどこまで仕掛けなのか?
こうなると、この会社ではどこまでの人が確信犯である「仕掛け人」なのか?
役員以上か、社長1人か??
そしてマスコミが取り上げるのは純粋に興味からか、何か他の力があるのか。
今回の取り上げ方や、同じ番組で繰り返し取り上げているのをみても、何かあるんだろう。
でも今回の報道はとても効果的とは思えないけどなあ。

4.会社とのかかわり方
王将の採用は、どこか負い目を持った人間を積極的に採用しているように思う。
この日の新人でも、就職活動で50-60社落ちて唯一の内定が王将という新人がいた。
会社は「助けてくれた」ので「恩を返さなければならない」と彼は言う。
自分は会社とは常に対等でいるつもりだし、明日辞めろと言われても困らないだけの
「覚悟」を持って仕事をしようと日々思っているんだけど、王将の社員は自分のために働いている
ようで、100%会社依存な感じがする。
ずっと王将で働いていく覚悟なんだろうから本人はそれでいいんだろうけど、
この日のTVを見た社員の家族はどう思ったんだろう。
お父さん、頑張ってるな!!って思ってもらえただろうか。


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1000円カットの危機

街でよく見かける1000円でカットできるQB ハウス。
一時はどこにでもできていたような気がするけど、デフレのこの時代にあまり新規出店が見られないような気がしていた。
と思ったら、新規出店に規制がかかっていたのだ。

QB ハウスができたのは意外にも最近のことで、第1号店は1996年11月の開店だ。
今では店舗数が395店(前年比+4%)、来店客数が年間1200万人(+6%)で、成長は鈍化しているもののまだ堅実に伸びている。海外ではシンガポールと香港に進出していて、44店舗がオープンしている。

さてこの業態のどこに規制がかかっているのか?
それは理容師法・美容師法で、店舗に温水を供給できる洗髪設備の設置を義務付ける動きがあり、すでに21の県で施行されているのだ。
これは既存設備には適用にならないので、今後は洗髪設備のないQBハウスのような業態は新規店舗を開店できない、というわけ。
なぜこのような動きがあるかというと、理容師75000人からなる「全国理容生活衛生同業組合連合会」(全理連)が、洗髪をしないせいでその後立ち寄った飲食店で髪の毛が落ちるといった苦情があった、という理由で法改正を訴えているということだ。

ではいったい何件そのような苦情があったのかはどこにも述べられていない。
群馬県で法改正の是非を議論しているときに消費者のアンケートが取られ、不衛生かという問いに対し「特に問題ない」+「快適ではないが不衛生とは思えない」をたすと60%以上にのぼったとのことだが、決議には反映されず結局群馬県でも規制が改定された。

洗髪をしないでバキュームで吸い取るQBハウスと、場末のさえない床屋のどちらが衛生的なのか、きちんと議論されたのだろうか?くしやはさみの衛生状態の方がポイントではないだろうか?

美容室は組合に入っていない店も多いみたいだけど、理容室はいまだにみんな同じ定休日だし、組合の力は強いんだろうか?
組合に入っていないと理容用品の代理店から仕入れられないとか、噂にはあるようだけどいまどきそんなことがあるんだろうか・・・。

ちなみに全国で美容室の件数は22万軒、理容室は14万軒ある。
自分は今は美容室派。いつのころからかなあ。
男性はアンケートによると20代と30代では美容室派と床屋派の比率に大きな差がある。
20代は美容室が主流。となると今後理容室の経営はますます厳しくなるだろう。
それに対抗し、美容室のようなカットを提案する動きもあるようだけど、自分たちの既得権益を新規アイデアの参入阻止で守ろうとするのは、タクシーとかよくあるケースかな。
理容師と美容師で法律を分けて、同じようなことをしているのに(違うのは顔そりくらい)、今だに別物にしているのは、保育園と幼稚園の構図に似ているような気がする。

若い男性向けに、おしゃれな理容室をチェーン展開すれば、結構なニーズはあると思うんだけどなあ。
この話を昨日自分の行っている美容室の店長にしたら、男性にはそこまでのニーズはなくて、チェーン展開をしようとしてもスポンサーは付かないと思う、と言われてしなったけど。

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シーシェパード

シーシェパードの船長が逮捕された。調査捕鯨船に無断で侵入した罪とのことで、逮捕されニュースにする時点で彼らの宣伝活動をアシストする形になってしまうんだろうけど・・・

シーシェパードは、「世界の海洋における野生生物の棲息環境破壊と虐殺の終焉」をかかげるアメリカに本部を置く非営利組織だ。何年か前、アウトドアウエアのパタゴニアが支援していることで話題になったっけ。
行動はむちゃくちゃだが、欧米・オセアニアでは彼らの行動には同意的だそうだ。つまり捕鯨を止めさせるためには、彼らのやり方は仕方ないとみられているようだ。
何となく日本だけがターゲットになっていて、日本伝統の食文化を否定されているような気がしていたが、海外では鯨は本当に食べないんだろうか?

調べてみると、捕鯨推進国は日本以外にもけっこうあって、そのうち食糧にしているのはロシア、ノルウェー、アイスランド、フェロー諸島、カナダなどだ。アメリカの一部ネイティブインディアも鯨を食べるそうだ。(それなのに国としては反対しているイメージがあるが)
一方強く反対するのがオーストラリア、ニュージーランド、フランス、スペイン、インド、南米だ。 一方でただ一口に反対と言っても、シーシェパードのように海洋生態系保護+動物愛護といったものから、種の保護のために少数民族の伝統捕鯨は良いが大資本による捕鯨は反対とか、いろいろな論点があるらしい。
何となく日本たたきのようにこの問題をとらえていたが、ちょっと違うみたいだなあ。
日本人の反論としてよくあるものに、じゃあアメリカ人は牛を食べるが、それと何が違うんだ?鯨を助けても牛の数が減るだけだ、というものがある。これに対しては、単に鯨は知能が高いからかわいそうだということではなく、殺すのに時間がかかるので人道的に問題があるという議論があるようだ。

他に欧米では受け入れられなさそうな独特の食文化は何があるかなーと考えてみた。
例えば昆虫。これは今でもアジアでは広く食べられているし、日本でも長野などに行くとハチやカイコ、バッタが食べられている。中国では蛾も食べるし、南アフリカではカメムシを食べるそうだ。
あとは犬。韓国だけかと思ったら、中国でも食べられている。日本でも江戸時代までは食べられていたようだ。
もっと日本でも食べられているものでいうと馬。これはアメリカでは絶対に食べない。イギリス、フランスもそう。なぜか中国でも昔から食べられないそうだ。
こうしてみると、食文化でいうとどこか1つの国だけの独特の習慣というのはあまりないのかもしれない。やはり陸地を通じて地域から地域に広まっていくものだからだろうか。

ちなみに自分は結構その地ならではのものは食べるようにしてきた方かもしれない。
「ゲテモノ」に対する好奇心だけだけど。
韓国では、今はまた犬料理を出す店が増えて、ソウル市内でも500軒以上になったようだが、自分が食べたのは10年前くらい。ソウルオリンピックの時に市中心部から締め出されていて、ソウルの郊外にタクシーで食べに行った。たくさんのにんにくと煮込んであり、何とも高級スタミナ食といった印象だった。
日本でも年間5トン(2008年)輸入されていて、韓国料理店で食べられるけど、何となくタブー扱いだ。何年か前に犬の頭が大量に見つかり、殺害事件かと騒ぎになったが、料理用に仕入れた材料を韓国料理屋の従業員が捨てたものだとわかり、はからずも日本の李飲食店でも出していることが明るみに出たことがあった。

あとはケニアで、これは外国人向けの有名店なんだけど、象とかヌーとかが出てくるシュラスコを食べたこともある。焼いてあるから本当にその肉なのかどうかわかんなかったけど・・・唯一おいしかったのはヌー。水牛だからまあ牛肉か。
こういう観光客向けのものはあまり良くない気がするけど、文化として昔から存在する食文化は、無理して残すことはないが食べる人が今でもいるなら尊重すべきだと思う。

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オリンピック: 上村愛子と浅田真央

2週間のバンクーバー・オリンピックがほぼ終了した。
全体を通してコンディションも悪いし、トラブルも多く、運営に関しては閉会式終了後にどっと不手際ぶりが報じされそうな感じだ。

日本選手の成績は、というとまあ事前の予想通りだろう。最後のスケート追い抜きも世界ランクは3位だったそうだし、だいたい今シーズンの力がそのまま出たというところだろう。

1.上村愛子はソチを目指すのか?
オリンピックの最初は上村選手でもちきりだった。どこのチャンネルも上村選手とお母さんの話ばかりだったなあ。結果もドラマチックで4位。この筋書きは、次はメダルだろうという無責任な期待もあるのかな。
上村選手の今回のオリンピックに向けての準備は適切だったと思う。エアよりもターン重視の採点傾向に適応し、得意のエアを捨ててターンを磨き、「チーム上村」で戦ってきた。今シーズンはW杯の成績も今一つだったので、今年のコンディションの持っていき方には問題はあったかもしれない。
ただ、オリンピックのモーグルを見るたびに思うのは、「自分の実力を100%発揮しよう」という姿勢では勝てないだろうということだ。皆自分の能力以上にガンガン突っ込んできている中で、実力+運でたまたまうまくいった者だけが上位3人に入れる、という印象だ。
いい例が里谷選手。W杯でぱっとしなくても、いつもオリンピックではつっこんできてメダルを取っていた。今回も見事なつっこみぶりだった。今回は無残な負け方で、しかも不自然なくらいマスコミも存在を抹殺していたけど・・・。でもあの姿勢でなければメダルには届かない。
上村選手の試合前の発言で気になったのは「後悔をしたくないので思いっきり行く」というコメントだ。全然関係ないけど、行動ファイナンスでいうと典型的な失敗パターンで、後悔したくないという心理は結局安全策を取ってしまうというパターンだ。やはり自分の100%以上には安全バーを外すことはできなかったんだろう。
多分そこに気がつかない限り、もう一度オリンピックに出ても結果は出ないんじゃないだろうか?オリンピックの一発勝負よりは、シーズンを通しての王者を決めるW杯の方が、実力を発揮できるだろう。ぜひ来シーズン、最後にもう一度W杯王者を取ってから引退してほしい。

2.浅田選手はソチで金メダルを取れるのか?
一方の浅田選手。上村選手とは対照的に、採点法の変化にも対応せず、トリプルアクセルにこだわりを見せる一方で、表現力をつけるということでロシアの一時代前のコーチについてしまった。もうここで戦略が矛盾している。
しかも普通はコーチのいる国に選手が行って指導を受けるのが一般的(キム選手がカナダに住んでいるように)なのに、浅田選手は日本から離れたくないとのことで実際にコーチの指導を受けたのは試合の合流時くらいだったとのこと。キム選手が「チーム・ヨナ」みたいな感じでまさにプロフェッショナル集団だったのに対し、浅田選手は自分ひとりで立ち向かったという感じがする。プロ対アマの勝負では話にならないだろう。
浅田選手のいつも口にする目標に、「ノーミスの演技をする」というのがある。これは以前であれば採点法にもぴったり合っていたのだろうが、今の採点はどうも完成度による加点がポイントのようだ。金選手のコーチは2週間に1度スケート連盟と採点法についてミーティングをし、点数の取れる演技を緻密に練り上げていたそうだ。
今回、フリーの演技が始まった後、ノーミスの演技をしても勝てないのではないかという現実と初めて向き合ったんじゃないだろうか??今まで、自分がたてた高いハードルをクリアすれば目標を実現することができてきたが、今回は仮にハードルをクリアしていたとしても金メダルは取れなかっただろう。その現実を認めて、プロフェッショナル集団を作り、彼らの意見を聞くことができるかどうかが、ソチで金メダルを取れるかどうかの第一歩だろう。
もちろん、人ができないことをやるのが目標ではなく、金メダルを取ることが目標だったら、の話だけど・・・。彼女の場合は今回まずそこがぶれていたんじゃないだろうか。
マスコミも、銀だけど感動をありがとう、次は絶対金メダル、と毎日言うばかりではなく、きちんと今回の反省と今後の進むべき方向を分析して報道してくれたら面白いのになあ。サッカーのようにスポンサーのしがらみがあるわけでもないだろうし。

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オリンピック選手に品格は求められるのか?

バンクーバーオリンピックが始まった。
前回と比べると日本選手の活躍の機会も多く、結構関心も高いのかな。
今回もマスコミはどんどんトピックスを作って報道をしている。上村選手とお母さんとか、もうそればっかりでもう少し競技自体とか、なぜ勝てなかったのかとか、そのあたりを報道してもらいたいけど、何か競技と離れたトピックスばかりだ。

そんな中でも一番ナンセンスだと思うのが、国母選手の問題。また若者への集団バッシングかよ・・・という感じ。マスコミの論点をまとめると次のような点だろうか。

1.国の代表としての自覚がない
やはりオリンピックはお国の代表なんだろうか?それとも個人の戦いなんだろうか?
だいたいは「国のためではなく自分のために戦っている」と言って、それを非難するパターンが多い。その根拠は税金で参加しているという点だ。
普段はナショナリズムなんてあまり感じないのに、オリンピックとかWBCとなると急に国民が一致団結することを強いられているような気がして変な感じだ。

2.オリンピックという自覚がない
マスコミとしてはやはりオリンピックは4年に1度なのでそれに向かって人生全てをかけてきて、たった一度の本番(数十秒で終わってしまう競技もあるし)で勝敗が決まるというところに価値を持たせたいんだろうか。国保選手は「オリンピックは数ある試合の1つ」というような発言をしていてずいぶん叩かれている。彼はプロ選手で賞金を稼いで生活しているわけで、本心からオリンピックを年間の試合の1つと思っているのかもしれないし、やはり勝ちたい試合なので強がっているだけかもしれない。

3.品格がない
そして一番ナンセンスだと思うのがこの批判。なんとなく朝青竜の問題を引きずっての批判なんだろうか。確かにインタビューで「チェッ」を繰り返していたのはちょっと幼稚すぎるけど、服装に関してはどうしてここまで議論されるんだろうか?
何か服装の乱れが精神の乱れだとか、ゆとり教育の弊害だとか、いろんな指摘があるけど、単にTPOの問題のように思う。レストランのドレスコードを理解していなかった、という程度じゃないんだろうか。
あと「勝ちさえすれば何でもありというのは正しいか、誤りか」みたいな議論もされているけど、別に国母選手は何でも好き勝手にやっているわけじゃないんじゃないかなあ。
少なくとも世界のトップレベルのアスリートなんだから、もっと敬意を持って扱ってあげてもいいのになあ。

これらに対してやらなければいけないのは次の点だろうか。

1.何が問題だったのかを明確にするべき
彼は何か問題なのか理解していないと思う。海外でもこの件はけっこう取り上げられているが、服装・髪型をいったい誰が気にするのか?という「世界の不思議ニュース」扱いだ。
ついでに日本人の多くが若者らしいと感じ、清潔感を持っている高校野球についても、坊主頭とか、入場行進とか、ぜひ海外メディアにはこの際紹介してほしい。(笑)
国母選手には、着崩した着こなしがどうとか、そういう点ではなく、パブリックとプライベートの区別ができなかったことが大きな問題だったことを、きちんと指導すべきだろう。

2.指導はその場その場でするべき
そもそものきっかけは「だらしない」姿で空港に降り立ったことから始まった。それが取り上げられて騒ぎになって、あわてて協会も対応した感じだ。でも飛行機を降りるところから報道陣のいるところまで一緒に歩いていたわけで、すぐにその場で直させる機会はあったと思う。協会はいったい何をしていたんだろうか。
話はそれるけど、先週の服装の乱れよりは開会式で明らかに協会役員と見える人ばかりが居眠りをしているのがアップで映ったことの方が、よほどだらしないと思うけど。

3.くだらない一時の盛り上がりでのバッシングはやめるべき
なんか国民全体がこの件に対して×だと思わなければおかしい、そんな雰囲気が数日前はあったと思う。バッシングするなら大会後でまとめてやればいいだろう。オリンピックは何より参加するアスリートのためのものなんだし。
この集団ヒステリーに乗せられて、学校応援を中止した東海大の判断はおかしいと思う。

ということで時々同じことが繰り返される、若者に対するバッシングだが、ぜひ日本選手にはメダルを連発してもらい、忘却の彼方に追いやるのが一番手っ取り早い対処法かな。



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キリンとサントリーが破談に その2

今日の報道でさらにキリンとサントリーの交渉の過程の話がいくつか報じられている。
昨日のブログではどちらかというとサントリー側の問題について書いたけど、今日の報道ではキリンの対応の問題点が気になったので、続編ということで。

1.統合比率の問題
ずいぶんと報道されたのでもう寿不動産もすっかり有名になってしまった。
サントリーが非上場で株価が存在しない以上、交渉の事前準備の段階で当然企業価値の算定と統合比率のすり合わせはやっているだろう、と思ったらやはり報道されている。
昨年1月の下交渉の段階では、両社の話し合いでは統合比率は0.78から0.88であり、寿不動産が3分の1超を取ることでコンセンサスがとられていたとのこと。これは重要なポイントだと思う。

サントリーの創業家としては新会社(サリンとかキントリーとかいろいろネタにされてたけど)の3分の1は最低取りたいだろうが、これを実現するには統合比率はどこまで妥協できるのか、計算してみた。
キリンの発行済み株式数は984,508,387。同じくサントリーは687,136,196。もし統合比率が1対1、つまりキリン1株にキントリー1株、サントリー1株にキントリー1株を与えるとして、サントリー分の89.3%は創業家なので、創業家の比率は687,136,196/(687,136,196+984,508,387)×0.893=41.11%となる。3分の1以上だ。
同様に計算して統合比率を下げていくと、1:0.9だと創業家比率が38.58%、1:0.8で35.83%、1:0.7で32.82%、1:0.6で29.52%、1:0.5で25.87%となる。 3分の1超となる33.4%を確保するには、統合比率は1:0.72となる。
1月の下交渉で0.78から0.88ということは0.72を超えているので、寿不動産が3分の1以上持つことを事前合意していたということは、統合比率は0.72以上でなければならない。
これに対して、11月にキリン側が最初に提示した統合比率は1:0.5。つまり最初の提示で約束に反していたということだ。
一方のサントリーは1:0.9を主張したとのこと。両社の規模と収益性を考えて、さらには非上場であるのでディスカウントされるとすると0.9はあり得ないが、まあ交渉の最初のボールとしては当然だろう。
しかしキリンの0.5については、新聞では「交渉上のテクニック」というコメントがあったが、あまりにお粗末だ。サントリーは1に近いだろうし、落とし所は0.72だからそこが中間になるように0.5とふっかける、これが「交渉のテクニック」というのだろうか?
まずはこの日本企業独特の論理的でない「ふっかけて中間に落とす」やり方が今回の決裂の第1原因だろう。

2.サイレントマジョリティ
もう1点、下交渉時に合意していたこととして、サントリーの大株主は経営に口出しをしないということが書かれている。つまりキリンとしては、サントリーの創業家には昔の持ち合い株主のように「物言わない株主」つまりサイレントマジョリティとしての役割を期待していたとのことだ。1月にサントリー側が大株主の権利を確認したところ意見が分かれたとのことなので、サントリーとしては「そうはいっても何かおかしければ物は言う」権利は確保したかったのだろう。
これは株主としては当然のことだ。完全に口出しをしない大株主を持とうと考える方がおかしいと思う。
下交渉上時に仮にキリンの考えるような合意があったにせよ、時系列からいうと統合比率の合意を最初に破ったのはキリンであり、サントリーが態度を硬化させたとしてもそれも当然のことだ。

ということで、交渉の経緯という点ではキリンが大きく戦術を誤ったということができるだろう。もしくは詳細に企業価値を計算してみるとどうやっても0.72の根拠が作れなかったとすると、下交渉時の企業価値評価が完全に間違っていたということかもしれない。

いずれにしても、タイミングの悪いことに昨年よりは今の方が両社とも業績は悪くない。両社とも海外にMA先を求めるというようなコメントをしているが、現在の状況は逆で、巨大化した海外大手がアジア市場にターゲットを定める時が来ると、キリンでもサントリーでも簡単に買収するだけの力を持っている。どこを買おうか考える前に、どこかに買われないように対策を打つ方が先かもしれないなあ。

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キリンとサントリーが破談に

昨年7月28日にもブログで取り上げたキリンとサントリーの経営統合の話。
昨年末から1月にかけても交渉がうまくいっていないことが度々伝えられてきたが、とうとう今日付けで交渉終了となった。

キリンの言うところの理由は、新会社の独立性、透明性を担保できないという点。サントリーの言うところの理由はズバリ統合比率に納得がいかないという点だ。

7月のブログで書いたのは、サントリーにとっては上場になるので、内部統制の点でそれに耐えることができるのか?という点。あとは対等合併を目指すと言っているがファイナンス上はキリンによるサントリー買収であり、一方で大株主はサントリーの創業者になるという状況で、統合比率はどう算定するのか、という点だった。みごとにこれらが解決されることなく破断になったということだ。
今日のニュースでは「最後の詰めの部分で破談になった」という表現をしていた報道があったが、最後の詰めどころか、最初の一歩でもうずれていたということだろう。

しかし今日の両社の記者会見はみごとに2つの会社の差が表れている。
キリンはすっかりグローバル基準のパブリックカンパニーという感じ。さすがにEVAを導入して緻密な利益管理をする会社だ。質疑応答も十分に練られている感じだし、本当に教科書的なIRだ。
一方のサントリー。「守秘義務があるのであまり答えられない」と前置きしつつこちらは言いたい放題だ。
「統合比率は50:50の対等合併が基本だが、50:50ではなく具体的な数字をあげて交渉した。その数字に自信があったので固執した。」と言っている。昨年末の報道で、キリン側のファイナンシャルアドバイザーが算定した合併比率はキリン1:サントリー0.5、一方のサントリー側が1:0.9と報道されていたが、それに近い話のようだ。
固執した数字がいくらなのかはわからないが、佐治社長は「サントリーの大株主の寿不動産の持ち株は最低3分の1超となって当然で、それがなければ最初から交渉していない」とまで言っている。
こんなことは最初からわかっていたことで、キリンは3分の1超は寿不動産が持つことは基本的に承諾した上での話ではなかったんだろうか?
また佐治社長は、キリン社長が経営の透明性を担保できないとコメントしたことに対し、「経営は透明に決まっている。サイレントマジョリティか、いざとなれば意見を言うかの差だけだ」「オーナー会社の良さとパブリックカンパニーの良さを半分ずつ取るつもりだった」と述べている。
これは到底パブリックカンパニーになろうとしている経営者のコメントとは思えない。やはり外部の株主からのプレッシャーというのを全く理解できないんだろうし、上場することは100%パブリックになるということで、全てをさらけ出さなければならないことは理解できないんだろう。
ということで、今回のMAのポイントはやはり上場企業による非上場企業の買収が、企業価値算定と統合比率の算出の面、そして非上場企業の株主の持ち株比率のコントロールの面からいかに難しいかが、当初の予想通り明らかになった、というところだろう。

こんなに初歩的なところで頓挫したということは、当初この統合の話が報道されたときは日経新聞も十分に取材した記事を載せていたので、ある程度基本線の合意をうけて進んでいるものと思ったけど、実際はそんなに両社に戦略上の余裕はなく、トップ同士の意気投合レベルで発表したのかなあ、という気もしてくる。
あと、キリンは本当に自社の事業展開に危機感を持っていたんだろうけど、サントリーは自社に対する誇りというかプライドが、危機感よりも強かったんだろうなあ、と思う。

今後、キリンは相手を変えてやはり大きなMAを仕掛けてくるだろう。ひょっとするとアサヒかもしれないけど。もしくは海外の上場企業。もう非上場で内部統制の整っていない企業はごめんだろう。
一方でサントリーは、社長もコメントしているとおり、海外で提携先を探すことになるだろう。ただし、サントリーが買収する形で今の経営形態を維持できる先を探すだろうから、世界規模で統合が進む食品セクターでは中途半端なMAに終わってしまうかもしれない。
オーナー企業と上場企業の良さをミックスすることなんてもう考えない方がいいだろう。

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JAL

JALがとうとう破綻した。
「とうとう」というのは、もうずいぶん前から事実上の債務超過だと言われ続けて、週刊誌にも告発記事なんかが書かれていたので、今さらなーという感じ。
日本ではマイルドな言葉を使って報道されているせいか、あまりショックはなくて今までの憧れというか妬みというか、そんな気持ちの裏返しの批評が多い感じがする。
海外のメディアでは、日本が経済的に大きな危機であることの象徴のような感じでけっこう大きく取り上げられていたけど、ハイチの大地震でかき消された感じだ。

もういろいろ批判の記事があるのでちょっと出遅れ感があるけど、まとめておきます。

疑問1: なぜ今になって破綻したのか?

まずそもそもの疑問はこれだ。よくリーマンショック以降ビジネス需要がとか、原油高で旅行客がとか言うけどANAはつぶれない。なぜJALだけなのか。
燃料効率が悪い大型機が多いとか、人件費が高いといったPLの問題はよく取り上げられていて面白くないので、バランスシートを見比べてみた。
まず1つ目は、単純に短期の借金だ。
2009年3月期の決算時、短期借入金+1年以内返済の長期借入金+1年以内償還の社債を合計すると、ANAが1577億円であるのに対し、JALは4715億円もある。営業利益で509億円の赤字なのに、多少政府が債務保証をしても回せないだろう。
2つ目には週刊誌でも報道されていたように、航空機購入にまつわるリベート計上のからくりがある。
例えば飛行機を1台購入するとする。そして値引きがあったときに、普通だったら値引き後の価格を購入額として計上する。費用は耐久期間で償却する。
しかし日本の航空会社は過去、購入金額の定価を購入額として資産計上し、値引き分を「機材関連報奨額」として営業外利益に一括計上する、という「グレー」な処理をしていた。まあ昔は商社や流通でもよく見られた手法とのことだけど、航空会社のリベートは金額のケタが違う。例えばJALは2003年3月期に420億円を計上しているが、この年の純利益は116億円なので、これがなかったら赤字だ。その後も2004年に292億円、2005年に483億円とどんどんこの「営業外利益」を計上している。目先の赤字は逃れてもバランスシートの資産はふくれあがってしまっている。これが足かせになったんだろう。
3つ目には、デリバティブの損失。JALとANAの株主資本はそれぞれ3840億円と4032億円でそれほど違いはない。しかし純資産合計となると1968億円と3258億円というように大きな差がでる。この差がJALの「繰延ヘッジ損益」にある2018億円のマイナスだ。これは2009年3月3日の日経新聞で日本企業が、原油価格が高騰し、その後下がってきたときに再上昇を予想してヘッジを組んだところ、予想に反してさらに原油価格が下落し、大きな損失を出したと報道されている。その中で2008年12月現在でJALは約2400億円の損失を出したとされている。しかし一方でANAは約1000億円だとされている。この差は何か?やはりデリバティブの失敗、ということができるだろう。
ということで、JALの破たんは公表資料からみても時間の問題だったわけで、政権交代が予想されていたことから自民党が先送りにした、というのが理由ではないだろうか。

疑問2: なぜJALを国が助けるのか?
1つ目の疑問はJALがなくなって乗客の誰が困るのかということだ。ナショナル・フラッグ・キャリアだからつぶせない、とよく言うけど、いったい誰が困るのだろうか?JALしか就航していない路線がたくさんある、というが、本当に乗客がいる路線は売却できるだろう。ANAは引き継がない、なんて言っているけどじゃあスカイマークでもいいじゃないか。外資系だっていいし。そう考えるとJALという会社がなくなって困る人は乗客ではないんだろうな。
2つ目には上にも書いたとおり、今回の破たんは経済状況ではなく経営のまずさが原因であり、責任は取ってもらうべきではないか、という点だ。やはりJALの問題点は「絶対つぶれない」と自分で思っている点にあると思う。現に今日も報道されていたけど、こんな騒動のさなかでも、1月15日はJALフランスの従業員を対象に新年会としてセーヌ川クルージングが会社の経費で行われていたとか、台湾では毎月恒例のゴルフコンペ(懇親会はJALが費用負担)の案内が今月も1月28日に開催する旨の案内が送られたとか、この状況でも全く緊迫感はない。社員総出で手書きのメッセージを配ってもそんなパフォーマンスにはだまされないだろうなあ。
3つ目には、競争の観点からもやりすぎではないか、という点。海外では、政府が助けた企業には事業上の制限がかけられることが多いと思うけど、JALにはあまりそういう話は聞こえない。ANAは、借金が棒引きにされて無借金になり、国から超低金利の資金を借りている企業とガチンコ勝負することになる。これではあまりにも不公平だ。

疑問3: そもそもJALを救うことは可能なのか?

もっというとこれだ。
1つ目には稲盛会長にJALを救えるのか、という点。京セラを大きく成長させた、という経営手腕が買われたというが、それはJALには通用しないだろう。彼のマネジメントの手法は一種のカルト的な手法であり、最初から自分の色に染めた組織では通用するだろうが、別の色にしかも強烈に染まっている組織を3年で変えるのは難しいだろう。現に過去にJALの再建にカネボウのトップも送り込まれたが、玉砕しているし。さらにはウィルコムでも失敗しているし。(そのウィルコムも国が救うというのはいくら民主党でも許されるのか??)
そうなると手法としてはカルロス・ゴーンと同様、今のうちにできるだけ損失は多めに出しておいて、最初の1年にファイナンス面でV字回復を見せて、「アメーバ経営で社員の意識が変わったおかげだ」ということにして2年くらいで生え抜きにトップを譲る、というのが予想されるストーリーだろうか。
さらに2つ目には民主党にJALを救えるのか、という点。言い方を変えるとJALにドラスティックな改革をさせられるのか、ということだ。
何といっても民主党の支持母体は労働組合。そう、JALは社内に8つもの労働組合を持ち、絶大な権力を持っている会社だ。
その労組の出しているこの新聞を読めば、こりゃー難しいなと思うだろう。
http://www.ne.jp/asahi/nikkou/rouso/yoku/wing_184.pdf

さて、どうなる?




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